全てを話したい
全てを話してずっとずっと彼と一緒に…
けれどそれは所詮夢物語に過ぎないと知っていた
〜籠から出た蒼い鳥[9]〜
次から次へ溢れ出てくる涙。
止めどなく零れ落ちる雫を拭う気力もなくて、透明な雫は枕を濡らしていくばかり。
こんな時どうしたらいいのか。
こんな時彼に何て言ったらいいのか。
全てを話すことは出来ない。
彼を苦しめたくないから。
全てを隠す事は出来ない。
彼の傍に居るのが辛くて辛くて仕方ないから。
幸せ。
その幸せと引き換えに味わい続ける辛さ。
相反するものなのに、自分にとってはそれが一つのものとして襲い掛かる。
怨まない筈がなかった。
悔やまない筈がなかった。
それでももう過ぎてしまった事はどうしようもないと知っていた。
それでもそれが無ければきっと彼とこういう関係にもなっていなかっただろう。
そう思うから耐えられる。
そう思うからまだ生きていられる。
気が狂う程に彼が好きなのだと。
彼の傍に居る事が何よりの望みなのだと。
皮肉にも今この時――それが一番実感できた。
それが幸せなのか。
それとも不幸なのか。
今の新一にはきっと解らないのだけれど。
涙を拭いてベットからゆっくりと起き上がる。
そしてゆっくりと立ち上がった所で、視界がぐらりと揺れた。
「…っ」
痛む胸。
足に力が入らなくてベットに逆戻りする。
「頼むから…」
頼むからもう少し待ってくれと。
願うように胸を押さえる。
何よりも彼の傍に居たい。
まだ帰って来て少ししか経っていないのだ。
まだ伝えたい事はある。
まだ伝えなければいけない事がある。
だからもう少し…もう少しだけ。
「まだ…俺はここに居たいんだ」
ふらふらする身体をどうにか起こして。
壁に寄りかかる様にして少し休む。
徐々に引いていく胸の痛み。
徐々に戻ってくる安定した視界。
大きく一つ深呼吸して、新一は部屋を後にした。
to be continue….
激しくお久し振りな籠鳥(いつの間にそんな略称に…)です。
オーメンの日にちなんで(…)解凍。
お久し振りすぎて、書き方忘れてました(爆)
二桁は確定…。
まあ、最後まで(いくのか怪しいけど)お付き合い頂ければ幸いです。
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