『愛してる』
それは嘘偽りない真実で
だからこそ思う
お前を幸せに出来たら良かったのにと
〜籠から出た蒼い鳥[6]〜
「ありがとう」
新一の言葉にそう言った快斗の声は今まで聞いたどんな声よりも優しくて。
けれどその優し過ぎる声は今の新一には素直に喜べるものではなかった。
この優しさを裏切らなければならないから。
「別に礼言われることじゃねえし…」
「ううん。俺にとっては言う事なんだよ」
本当に嬉しかったから。だからありがとう。
言葉の通りそれはそれは嬉しそうに抱き締められて、その腕の中で新一はぎゅっと強く目を瞑る。
まるで現実から逃げ出すかのように。
ただこの甘い一時に浸れるように。
「……俺もありがと…」
「…え?」
「俺も快斗にそう言って貰えて嬉しいから」
だからありがとう。
これからの短い時間でどれだけそれを示せるの解らない。
それでもこれからの短い時間で不振に思われない程の、けれど精一杯の愛情表現をしたいから。
幸せだから。
今こうして快斗と居られることが何よりも幸せだから。
だから一言一言に有りっ丈の思いを籠めて。
『愛してる』『ありがとう』
「……幸せだな」
ぎゅっと快斗が自分を抱く腕に力が籠もる。
そしてしみじみと言われた言葉。
『幸せ』
それは新一の望み。 快斗に幸せになって欲しい
それは快斗の望み。 新一に幸せになって欲しい
「新一が傍に居て、新一を抱き締めることが出来て、新一に愛してるって言って貰えて…俺ってほんと幸せ者だね」
ずっとずっと離れていたからその幸せをより実感出来る。
「新一…顔上げて?」
「…?」
少し腕の力を緩められて、不意に言われた言葉に素直に新一は従って顔を上げる。
そこに居るのは今まで見た事も無い程、本当に幸せそうに微笑んでいる快斗の姿。
「ずっと一緒に居ようね」
「……ん」
快斗の言葉に新一は何とかこくんと小さく頷いて。
けれど堪え切れずに瞳からは涙が零れ出す。
――愛してる。だけどずっと一緒には居られない…。
to be continue….
………予定より急いてます(何)
予定外に短くなるかもしれない…。 (どうやらラストが当初予定と変わってきてるらしい)
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