永遠の命かどうかなんて知らない
本当に永年に一緒に居られるのかも分からない
でもそれより
今ずっと一緒に居られる事が大切
〜籠から出た蒼い鳥[26]〜
「快、斗……。その歯……」
「ん?」
新一に指摘され、快斗は自分の口元に手を当ててみる。
そして気付く、いつもとは違う感覚。
「へぇ…便利だね。こんな所まで変わるんだ。ホント吸血鬼になっちゃったかな?」
「おい…。お前は勝手に納得してるみたいだけどコレ…」
「ああ、きっとパンドラのせいだろうね」
いや、パンドラというか、きっとさっきの血のせいだろうけど。
付け足してそう言った快斗に新一は眩暈を覚えた。
「そんな伝説上の生き物なんて…」
「居る訳ない? さっきまで人の血熱心に舐め取ってくれてた癖にv」
快斗君ちょっとゾクゾクしちゃったv
なんて、かるーく言ってくれる快斗に新一は余計に眩暈がしてくるのを感じていた。
「あのな…。確かにそれはそれとして…もしも、百歩譲って俺らが吸血鬼になったとして、だ。
何でお前はそんな明る……バカなんだ……?普通もうちょっとこう……絶望とか、するだろ?」
人として。
人間として。
自分が他のモノになってしまった事を普通は嘆くのではないのだろうか?
それともIQが400もある人間はそういう思考ではないのか……。
呆れ果てたように溜息を吐いた新一に快斗は笑って見せる。
「だってこれで……新一は死なずに済むんだよ?
ずっと一緒に居られるなら、吸血鬼だって、魔女だって、俺は何だっていいよ。
ずっとずっと新一を見詰めていられて、一緒に居られるなら俺は何になったって嬉しいんだ」
迷いのない瞳。
人でないモノになってしまった迷いとか。
永遠の命を手にしてしまったかもしれない戸惑いとか。
そんな物どこかにまとめて捨ててきてしまったかの様に、真っ直ぐで透き通った瞳。
それが新一には嬉しくて、どこかくすぐったかった。
「ばーろぉ…。んな事大真面目な顔して言うんじゃねえよ…///」
「だってしょうがないじゃん。本当にそう思ってるんだから」
大切な人が居て。
大切な人と居られて。
それ以上望むものなど何もなかった。
例え―――人でなくなったとしても…。
to be continue….