重ねられた唇


 片方はその味に違和感を覚え

 片方はその味に完全な絶望を覚えた








籠から出た蒼い鳥[24]〜









「ちょっ…快斗!」


 唇を合わせた後、新一は慌てて快斗を引き離した。


「お前…口怪我してねえ?」


 快斗と唇を重ねて気付いたのは独特のあの味。
 紛れもない血の味。

 そして気付く。

 もう、味を感じない筈だった自分の身体が間違える事なく、その味を感じ取っている事に。

 一体何故…。


「してないよ…」


 新一の、戸惑いなど知る筈もない快斗は、何故かどうしようもない暗さを湛えて答える。
 それに尚更新一は首を傾げる。


「快斗…? どうした…」
「怪我なんかしてない。だから問題なんだ…」
「どういう事だよ、それ」


 苦々しげに、吐き捨てた快斗を新一が訝しげに見詰める。
 そんな何も知らない新一に快斗は小さく溜息を吐く。


「もう、何を言っても遅いんだけどね…」
「何だよ。一体何があったっていうんだよ!」


 何もかも悟りきって、諦めきったようにそう呟く快斗に新一は訳が分からずに苛立つ。
 しかし、それにも快斗は諦めに似た笑みを浮かべる。


「新一…。いいんだよ。もう全部遅いんだから…」
「だから、何が…」
「ねえ、新一。あの紅なんだと思う?」


 先程一緒に見つけた紅。

 あの色をどこかで見なかっただろうか?
 しかもついさっき。

 枕下に零れ落ちている紅。
 そしてさっき合わせた唇から広がった味。

 先程まであそこに寝ていたのは誰だったか。
 そして、その口元に広がっていたのは紅い池。


「まさか…」
「そう、そのまさかだよ…。あの紅は―――」















「―――アレはきっと…血だよ」









to be continue….



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