その生き物は
人の血を啜って生きていくのだという
そして
その生き物に血を吸われた人間も
それなら人は
どの瞬間から人でなくなるのだろう
〜籠から出た蒼い鳥[22]〜
「……大丈夫?」
泣き声の聞こえなくなった新一に、快斗はそっと声を掛ける。
腕の中、新一は小さく頷いた。
「顔上げられる?」
けれど、その問いに新一は首を横に振る。
「そっか…」
それなら、ずっと抱き締めていればいい。
そう思って快斗は自分の存在を伝える様に、新一を抱き締める腕に少しだけ力を入れた。
「大丈夫。ずっとここに居るからね」
こくん、とまた小さく頷いた新一に安堵して、快斗はふと視界の端に入った白い物体に目を向けた。
そこにあったのは紅の付着した白。
禍々しいまでの紅はそこだけまるで血の付いた様だった。
「何で…」
あんな色がここに存在するのか。
そう不思議に思って、原因を求める様に、その色を他に探せば―――。
「なっ……」
ベットの枕元。
転がっていたのは透明な石。
そしてその石から滴り落ちた様に白いシーツの上に零れ落ちていたのは――――紅。
「新一!!」
新一を落ち着かせる事を最優先だと思っていた。
けれど、それを見つけた瞬間、それが違うことを悟ってしまった。
「かい…」
「何したの!? 一体何をした!!」
慌てて新一の顔をあげさせて、思わず叫んでしまう。
「何って…」
「アレは何!?」
新一にもその光景を見せるべく、そちらを向かせる。
その瞬間、新一が息を飲んだのが空気を伝わって快斗にも聞こえた。
「一体何をした?」
「俺は何も…」
「じゃあ、アレは何なんだよ!」
今はもう月の光に照らされていても透明な石の下には、血溜まりの様な小さな紅い池が出来ていた。
「俺は…知らない」
「知らないって…」
「本当に何も知らないんだ!!」
悲鳴の様に響いた声。
泣きそうな顔を浮かべながら、快斗の方を向いた新一の口元には――――同じ紅が付着していた…。
to be continue….