彼を傷付ける結果に終わるのが解っていても
『もう一度逢いたい』そう願ってしまった
何よりも誰よりも大切なのに
彼を幸せにする事は出来ない
〜籠から出た蒼い鳥[2]〜
「か…いと」
「あれ?新一起きちゃったの?」
まだ1時間ぐらいしか経ってないのに。
「…ん」
視線を声の方に向ければ、未だ眠そうに目を擦りながらぽてぽてとリビングに入ってきた新一の可愛らしさに快斗の顔は綻ぶ。
「まだ寝てても良かったのに」
鍋を火にかけている間に次の獲物の情報を集める為、リビングのソファーに座ってテーブルに置いてあったノートパソコンを開いていた快斗の隣に新一はちょこんと腰を降ろした。
「目、覚めたから」
「そっか」
「……まだ見付からないんだな」
快斗の横に腰を降ろした新一はそう言ってディスプレイを覗き込む。
そこに映し出されていたのは近々日本にやってくるビッグジュエルの情報。
「うん…」
新一の言葉に快斗は少し複雑そうな表情をした快斗の顔は昔より少し大人びて見えて。
それだけは確実に時間の流れを感じさせた。
「早く見付かるといいな」
「うん。でも俺は新一が傍に居てくれるなら見付からなくてもいいんだ」
真っ直ぐに新一に向けられるのは昔と変わらない屈託のない笑顔。
闇を抱えている者がこれ程の笑顔を浮かべられるのかと嘗て新一が驚愕した程の純粋な笑み。
しかしその笑顔に、その言葉に、今の新一の心は悲鳴を上げる。
痛い。
苦しい。
今すぐ全てを話して楽になってしまいたい。
けれど自分は彼に嘘を吐き続けなければならない。
毒を食らわば皿までと言う様に、嘘を吐くなら最後まで。
嘘も最後まで吐き通せば嘘ではなくなるから。
それが彼を苦しめると解っていながら自分の幸せを願ってしまった新一がうけなければならない罰。
「新一?」
快斗の言葉に少しだけ俯いてしまった新一を心配して快斗は新一の顔を覗き込む。
「何かあった?」
「…何でもない」
「本当に?」
けれど流石は快斗であって、新一の様子から何かを察した様で。
新一は慌てて嘘を隠すための嘘を重ねる。
「お前の戦いはまだ終わってないんだな、と思って…」
確かにそれは咄嗟に嘘を隠す為の言葉であって。
けれどそう思っていたのも事実だから何とか上手く誤魔化せた様で。
その言葉を聞いた快斗は柔らかく微笑むと、新一の顎にそっと手をかけて俯いていた顔を上げさせた。
「確かに終わってないけど、追っ手は大分減ったから大丈夫」
この二年という月日が経つ間に、ボレー彗星が地球に最も接近する日は無事過ぎてしまって。
それからは自分を追っていた組織も追っ手の数を減らしてきたのだと快斗は新一に語った。
「だからね、俺は大丈夫だから新一がそんな顔する事ないんだよ」
快斗は優しく優しくそう言い聞かせて、新一の額に軽く口付ける。
その余りにも優しい快斗に新一の心は余計に締め付けられて。
新一は快斗から表情を隠す為に快斗の胸へと顔を埋めてしまう。
それは新一の表情を快斗から隠すのと同時に快斗の表情を新一から隠す結果となった。
だから新一は知らない。
この時の快斗がどんな表情を浮かべていたのかを…。
to be continue….
短い…(爆)
この先も結構細切れに出してくかも(ぇ)
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