告げられた残酷な事実
考えていたよりも
予想していたよりも
余りにも残酷な現実に
目の前が真っ暗になった
〜籠から出た蒼い鳥[14]〜
「後半年って…それどういう事?」
いきなり告げられた言葉。
頭では理解は出来ても心は分る事を拒否した。
「そのままよ…。工藤君の身体はもうボロボロなの。私の…私のせいで……」
零れ落ちる哀の涙も。
辛そうな表情も。
思いやる事が出来ない程に何かが崩れ去っていった。
「何か、何か方法は? 薬のせいならその解毒ざ…」
「もう彼の身体はどんな薬にも耐えられないわ」
何かに縋りたくて。
何か方法がある筈だと信じて。
言葉を紡いだ。
そして返ってきた無常とも言える言葉。
「何度も大きくなったり小さくなったりしたせいで彼の細胞はもうボロボロなの。
元の身体がボロボロなのよ? これ以上どうにも出来ないわ…」
実感の籠もった答え。
ああ、きっと彼女も同じ事を考えそして―――残酷なまでの現実を見たのだろう。
「じゃあ…どうしようもないの?」
「一つだけ…一つだけ方法はあったの…」
俯き加減で口を開いた彼女。
「私の研究室でなら彼はもう少し長く生きる事が出来た。
でも、彼は其処を出る事を望んだの…。最期に、貴方に会うために…」
告げられた言葉は何よりも残酷だった。
どんな言葉よりも。
自分に逢う為に彼は選び取った。
籠の中で永らえる事を選ぶより、自分の所へ来る事を。
「だったら…だったら、新一をもう一度連れて行けば……」
「いいえ。それでももう…無理なのよ」
最後の希望に縋ろうとした快斗を哀はばっさりと切り捨てる。
それは残酷な優しさ。
ありもしない希望にしがみ付くのは辛い事を哀は誰より知っていたから。
「もう、戻っても無理なの…」
一度出てしまった鳥はもう一度籠に入れたとしても、その傷は癒せない。
それは哀と、そして新一が一番良く分っていた。
それでも新一は選び取った。
籠の中で永らえるよりも、一番大切な人の傍で少しの思い出を作る事を…。
「じゃあ俺は…新一を看取ることしか出来ないって言うのかよ!」
ガンッ!
叩きつけられた拳は机の上にあったカップを揺らす。
中身が零れるには至らなかったが。
「ごめんなさい…」
そんな快斗に哀はそれしか言う言葉を見つけられなかった。
だって、この話しにはもう何の希望も用意されていなかったから。
「ごめんなさい…。本当にごめんなさい……」
静かに響いた音だけがその場の空気を揺らしていた…。
to be continue….