もしかしたら彼に殺されるかもしれない

 殺されるまでいかなくてもきっと彼に怨まれるのは必死


 でも、それでも―――私は彼に伝えなければならない


 全ては私のせいなのだと








籠から出た蒼い鳥[13]〜








 ここに来るのはいつ振りだろう。
 それすら思い出せない程久し振りに歩く道。

 そして見上げたのは彼が今彼と過ごしているであろう家。

 懐かしい、そう思えてしまうこの場所。
 今は訪ねるのが恐いけれど…。


 ――ピーンポーン


 軽やかに鳴るチャイム。
 それとは反対に冷え切っていく心。

 手が震える。
 冷や汗すら出てくる。

 でも、それでも此処から逃げる事は出来ない。
 それが私のせめてもの償い。


「はーい♪どちらさ………哀、ちゃん…?」

「久し振りね。黒羽君」






























「ほんとに久し振りだね」


 久し振りに訪れた工藤邸のリビング。
 そして差し出されたのは――嘗て自分用にと彼が用意してくれたマグカップ。


「これ…」
「コレは哀ちゃん用だからねv」


 軽くウィンクをされて。
 哀はこれまで張り詰めていたものが零れ落ちていくのを感じた。


「ごめんなさい…」
「哀、ちゃん?」


 いきなり泣き出した哀に流石の快斗もどうしていいか分からずワタワタとしてしまう。


「ごめんなさい…。ごめんなさい……」


 壊れた機械の様に謝り続ける哀を快斗は優しく抱き寄せた。


「哀ちゃん。もういいから…」
「ごめんなさい…」


 それでも哀は謝り続ける。
 それしか出来ないのだと、そう言う様に。




















「貴方に伝えなければいけない事があるの…」


 ひとしきり泣いた後、哀は決意したかの様に顔を上げてそう快斗に告げる。
 まっすぐに快斗の顔を見詰めて。


「………」


 その瞳の真っ直ぐさに。
 そして、その真っ直ぐさに籠められた辛さに。

 快斗はそれを聞いていいものなのか考えてしまう。

 それは哀にも分かっていた。


「工藤君は……」


 それでも、と哀は思う。
 それでも、彼には知っていて貰わなければいけない。

 これをきっと本人は彼には言わないだろうから。

 それを知る権利は彼にはある。
 それを知らせる義務が自分にはある。

 例えそれで――彼に自分が何を言われるとしても。

 罵られるのなんか当たり前だ。
 寧ろ自分はそれを望んでいるのかもしれない。

 自分を責めない彼の変わりに、目の前にいる彼が自分を責めてくれる事を。

 だから告げる。
 彼と彼にとって一番残酷な一言を。





「工藤君は―――もって後……半年よ」





to be continue….



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