それは暗号にしては単純だった
けれど知らない人間には絶対に解けない暗号
その本当の意味を知る事の出来る人間は…この世に3人しか存在しない
バロック3:推理
資料を持ったまま新一はとある場所へと急いだ。
電車を乗り継いで4時間。
都市部からは大分離れ、そして更に人里離れた森の奥にその屋敷は存在していた。
――ピーンポーン
森の中では不自然なチャイム音。
しかし気にする事無く新一はボタンを2度押し、そしてゆっくり10数えてからもう3度、そして最後に3回ドアをノックした。
するとがちゃっと言う音と共に扉がゆっくりと開かれた。
「工藤君…」
「よ。元気してるか?」
「ええ。さあ、入って?」
「ああ。邪魔するぜ?」
勧められるまま中へと入り、直ぐに扉を閉める。
こんな場所に居るのも、こんな小細工をするのも、全ては彼女の安全の為。
けれどこれでも足りないと俺は思うのに…、
『そこまでして貰わなくても、私は大丈夫。私が昔あそこに居た事を貴方は忘れたの?』
そう言ったのは他ならぬ彼女自身だ。
「一体何なの?連絡もなしにいきなり来るなんて…」
新一を家へと招き入れ、コーヒーを出した所で志保は溜息混じりにそう尋ねた。
「これ、お前なら解るだろ?」
新一がテーブルへと投げ出したのは書類の束。
それはあの事件の関係書類。
「一体何なのよこれ」
「いいから見てみろよ」
「…解ったわ」
もう一度溜息を吐いて、志保はその中から一つを摘み上げると軽く流す様に目を通し始めた。
が、その表情は直ぐに一変した。
「工藤君…これ……」
「ああ、間違いない。奴等だ」
書類に貼り付けてある写真に写っているのは無残な姿にされた子供達の姿。
けれどその服装は明らかに子供のものではなく、そして子供のサイズでもなかった。
そして書類に書かれている被害者の特徴、被害者の所持品から割り出された身元は…、
「どうしてあの薬が今も使われてるの!?」
「………」
どれも…子供ではなく、大人のモノ。
それから導き出されるのは、被害者が何らかの要因によって『幼児化』した後殺された、という現実には信じられない事。
「一体どうして…」
その書類の束を貪る様に読み漁りながら、志保が呟く。
その言葉に新一は確信を籠めて、血を吐く様に苦しそうに一言だけ呟いた。
「こんな事が出来るのは…もうこの世にはアイツしか存在しない…」
to be continue….
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