「ふんふ〜ん♪」
その日キッチンではご機嫌な快斗によって不思議な物体が作り出されていた。
〜ある日の快斗くん9〜
「快斗何作って………お前何なんだよこれ…ι」
真っ白い皿の上に乗っている朝食と思われる物体。
その材料はまったくもって問題ないのだが…
「ん〜? こっちが『ウサギさんオニギリ』で『こっちがタコさんウインナー』だよ♪」
形が大問題だった(爆)
「………馬鹿だろお前…」
『タコさんウインナー』はまだいいとして、『ウサギさんオニギリ』って何だよι
「だって〜可愛いでしょ?」
「………」
朝っぱらから繰り出される快斗の不思議ワールド(…)について行けず、暫く新一はフリーズする。
「あとは『ウサギさんゆでタマゴ』に…あ、『鳩さんサラダ』も付けよっか♪」
「………想像がつかねえι」
何だその『ウサギさんゆでタマゴ』と『鳩さんサラダ』って…ι
「ん〜? そのままだよ♪」
「いや…だから…ι」
(そのままが一番想像つかねえんだよ…。)
推理好きの名探偵でもどうやらこれは首尾範囲外らしい。
推理する気も失せたらしく、そのままリビングのソファーへと身体を埋める。
「ふんふんふ〜ん♪」
キッチンからは更にご機嫌な鼻歌が聞こえてくる。
「………あいつって馬鹿なんだか何なんだか…」
先程のダイニングテーブルに乗った皿の上に並べてあったオニギリを思い出して新一は溜息をつく。
『ウサギさんオニギリ』と言うだけあって、形は見事にウサギ型。
強いて言えば、雪ウサギの形に近いがきっとあんなもの器用な彼でなければ出来ない。
「ったく…もうちょっと他の事にあの器用さ使えないのかよ…ι」
マジシャンを目指すだけあって快斗の手先の器用さは半端ではない。
それは非常に解っているのだが、流石に朝からあんな物体を見せ付けられると溜息も出てこなくなる。
「新一〜♪ 出来たよ〜♪」
いつになくハイテンションな調子で呼ばれ、新一は投げ出していた身体を嫌々ながら起こすと仕方なくダイニングテーブルへと向かう。
「ねえねえ♪ これ可愛いでしょvv」
「………」
工藤新一、本日二度目のフリーズ(爆)
新一がそこで目撃したのは…
『全ての野菜を見事に鳩さん型にカットしたサラダ』であった(しかも平面じゃなく立体・爆)
「ん? どうしたの新一?」
「食欲失せた…」
見事なまでの『鳩さんサラダ』を見せ付けられて普段からない新一君の食欲が更に減退。
「え〜!! 何で〜!?」
俺が一生懸命作ったっていうのにぃ〜!!
「………一生懸命作り過ぎだ…」
頼むから普通の物体を食わせてくれ…。
名探偵の切実な願いも普通の人間からすればもっともな意見である。
「だって新一の為だし!」
胸を張ってそう言われて新一は「なんで俺朝からこんなに疲れてんだろ…。」などと半ば泣きたい気持ちになっていた。
「だから食べて食べて〜♪」
ルンルンと弾むような口調でそう言われて、新一は取り合えず箸を持ったのだが…
「これ…どこから食えばいいんだ?」
流石の名探偵もこれだけ可愛らしい物体を頭から食べられる程無神経でもないらしい(爆)
「え………ってこれじゃ可愛過ぎて食べられないじゃん!」
「………お前作る前に考えろよι」
流石に疲れていてもそこら辺は突っ込まない訳にはいかず、新一は的確な突込みを入れる。
「だって作るときは可愛くていいかなぁ♪って思ったんだもん!」
「…頼むから食う時の事考えて料理してくれ…ι」
ご尤もである…ι
「ん〜…どうしよっか?」
「いや…俺に聞くなってι」
「………」
「………」
「………………今オムライス作ってくるからちょっと待ってて♪」
「…解った」
どうやら快斗の中で結論は纏まったらしい(笑)
そのまま再びキッチンへと向かっていった快斗に新一は一人疲れた声で当然の疑問を口にしてみる。
「これ…どうする気だ?」
その疑問に答えるものはその時誰一人として工藤邸には存在していなかった…。
その後朝食を済ませた快斗とによってその物体はお隣に進呈されることになった。
それを隣の住人がどう処分したのかは誰も知らないお話…。
ウサギさんゆでタマゴぐらいしか作ったことないな…。
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