「新一v 見て見て〜♪」


 見せられた物の意味が最初は解らなかった








〜ある日の快斗くん10〜









「………?」
「しんいち?」


 新一は画面を見て首を傾げて、もう一度画面を見て、そしてもう一度首を傾げた。


「これが…どうしたんだ?」
「え!? ほ、本気で解んないの…?!」
「………」


 こくんっと無言で頷いた新一に、快斗はガクッと肩を落とした。


「ほんと新一君って自分の事に興味ないよね…;」


 はぁ…っと思いっきり溜息を吐いた快斗に新一はもう一度首を傾げる。


「一体何なんだ?」
「……誕生日……」
「え?」
「…新一の誕生日は?」
「は…?」


 何で突然そんな事を聞かれなければならないのかと、顔にハテナマークを浮かべた新一に快斗は再度尋ねる。


「だから、新一君の誕生日は?」
「5月4日だけど…」


 だから如何したと言うのか。
 言わなくても快斗には新一がそう思っているのが手に取るように解る。

 だから、この自分の事には無自覚で鈍感な名探偵殿にはきちんと説明して差し上げなければならない。


「で、この番号の下四桁は?」
「下四桁?」


 新一が快斗に見せられた携帯の電話番号は『XXX-XXXX-0504』
 そこまで言われて漸く気がついた。


「ああ、そういう事か」
「そういう事かって…しんいちぃ……;」


 何とも無関心にそう宣って下さった新一に快斗は再度がくっと肩を落とした。


「折角の俺の愛の証なのにぃ!」
「愛の証…」
「そう。愛の証vv」
「………」


 快斗がきぱっと嬉しそうにそう言い切ったのを聞いて、新一はふむっ…と何時もの推理ポーズで何かを考え込んでしまった。
 一体何事!?と快斗が横でワタワタしても、まったくもってお構いなし。(だって推理モードだから)


「し、しんいち…?」
「………」
「しんいちくーん?」
「………」
「しんいちぃ…;」
「…だとすると……」


 ふむっ、と一人納得して、漸く推理モードから戻ってきた新一の顔を快斗は不思議そうに覗き込んだ。


「何考えてたの?」
「ん? その番号、お前の意見としては下四桁は俺に対する愛情表現なんだろ?」
「う、うん」
「だったら、この世界中にその『俺に対する愛情表現』を持ってる奴は何人いるのかと思って」
「!?」


 そんな事考えもしなかった。
 流石は名探偵。
 良く解らない事にまで推理を働かせて下さる。


「ち、違うの! 俺にとっては意味のある番号だけど違う人にとっては…」
「この世に5月4日生まれの奴なんて幾らでもいるし…」
「それは…」
「それに、同じ様な事をやってる5月4日生まれの恋人をもってる奴なんて結構いるだろうし」
「………」


 そこまで考えていなかった。
 自分がその番号を持っているだけで満足だったのに、そう言われてしまうと下四桁が『0504』の番号を持っている人間が自分以外にいる事が酷く理不尽なことの様に感じられる。


「………」
「快斗?」


 綺麗な弧を描いている眉をきゅっと寄せ、眉間に皺を浮かべた恋人の顔を今度は新一が覗き込んだ。


「……買い占める」
「は?」


 何とも不穏な言葉が聞こえた気がする。
 新一としては聞き違えであって欲しいと願ったのだが…。


「下四桁が『0504』の番号全部買い占める!」
「………」


 どうやら聞き違いではなかったらしい(爆)


「お前なぁ…そんな番号どれだけあると思って…」
「買い占めるったら買い占めるの!!」
「………」


 二の句が告げないとはこのことか。
 何とも馬鹿としか思えない発言に新一も沈黙するしかなかった。


「天下の怪盗キッド様がその気になればやってやれない事はない!」
「………」


 そんな下らない事に怪盗キッドの名を出すなとか。
 そんな下らない事に折角ある高いIQを無駄に使うなとか。

 新一としては色々思うところはあったが、もう何もう言うまい、と心に決めた。




 だって言ったが最後、余計にややこしい事になりそうだから;




「そうと決まったら早速……」


 ふふ…っと、不穏な笑みを浮かべて何処からともなくノートパソコンを取り出して早速作業に掛かった快斗を見詰めて、新一はまた余計な事を言ってしまったと今更ながらに自分の発言を後悔したのだった。










 ちなみに、その余計な一言が照れ隠しから出たのだという事は快斗が知り得なかったもう一つの真実。












昔薫月は携帯の下四桁をキッド様ナンバーである『1412』にしてた事があります(笑)



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