「ねえ新一♪」
「ん?」
「ハニーって呼んでも良い?」
「…………」
工藤邸は今日も嵐が吹き荒れる予感である。
〜ある日の快斗くん6〜
「悪い快斗。俺なんか空耳が聞こえたみたいだ」
暫く固まっていた新一は我に返るとそれだけ言って、現実から逃げるように近くにあった本を開いた。
「空耳じゃないってばー! 俺は新一の事ハニーって呼びたいの!!」
恋人同士なんだから良いじゃん!!
思いっきり真剣な顔でそう宣ってくれる快斗に、新一の顔が引き攣る。
「お前…ハニーって…ι」
今時使わねえだろ…。
てか、大体何で男の俺がハニーなんだよ!
「いいじゃん♪ 新一外国結構行ってたみたいだし、慣れてるでしょ?」
それに新一は「ダーリン」より「ハニ―」のが絶対合ってる!
「慣れてる訳ねえだろ!!!」
余りの馬鹿馬鹿しい快斗の発言に、新一の黄金の右足が炸裂する。
「し、新一…痛い…」
「お前が悪い。今日ばっかりは誰が何と言おうと絶対にお前が悪い!!」
びしっ!と指を指してキッパリとそれだけ言うと、新一はソファーに座り直し先ほど開いていた本をもう一度手にとった。
「し、新一…?」
「………何だ?」
声は絶対零度の冷たさを保っていたが、どうやら話しは聞いてくれるらしい。
そんな新一の様子に調子づき快斗は話しを進めようとする。
「新一君。ここは一つ妥協案を提示しましょう。」
「…妥協案?」
快斗のその言葉に新一は訝しげに眉を寄せる。
「そう、妥協案」
「…聞くだけは聞いてやる」
「俺が新一のこと『ハニーv』って呼ぶ代わりに、新一も俺のこと『ダーリンv』って呼んで良いからVv」
「…快斗」
「ん? なになに♪」
新一に手招きされて、快斗はいそいそと新一の元へとやってくる。
「…てめえはいっぺん死んでこい!!!」
本日二回目の黄金の右足炸裂。
しかも今回は新一さんの怒りゲージが120%の為、威力は何時もより四割増(爆)
「っぅ………」
流石の快斗君もどうやら今日の右足には勝てなかった模様で、脇腹を押さえすっかり床とお友達になってしまった。
「ったく、しょうもねえことばっかり言ってないで次の予告の暗号でも作りやがれ」
今ビックジュエルで日本にきてるのがあるんだろ?
「……怪盗に暗号作れって言う探偵ってのも…」
「ほぅ…まだ足りないか…?」
「いいです! 結構です! 本当に今日はもう無理!!」
流石の俺もこれ以上食らったら死んじゃう!
泣き叫ぶ快斗に満足したのか新一はソファーに座り直すと、今度こそ開いた本の世界へと旅立って行った。
「新一のいけず…」
「快斗。コーヒー」
「…はい」
いじいじといじけながらもご主人様の命令を聞く犬の如く、いそいそとキッチンへとコーヒーを淹れに向かう。
(ったく…毎回毎回くだらねえ事言いやがって…)
そんな快斗を見送って心の中で呟く。
どうしてこんなに毎回毎回くだらない事で体力を消耗させねばならないのか。
(それに俺はな…快斗の名前気に入ってるんだよ…///)
誰が『ダーリン』なんて呼んでやるか!
もしも〜し?新一さん…問題がすりかわってませんか?
「新一〜。はい、コーヒー」
心の中で一人叫んでいた新一の所に快斗がコーヒーを淹れて戻ってきた。
「あれ、新一。顔赤いけどどうしたの?」
「うるせえ、バ快斗」
快斗に指摘され、余計に赤くなってしまった新一はぷいっと快斗から視線を逸らす。
「もう、『ダーリン』だって言ってるでしょ?」
新ちゃんたら恥ずかしがりやさんなんだからVv
「まだ言うか!」
今度はお空の星になりてえか?
「すみませんでした…。」
途端に殊勝な顔をする快斗を確認した後、新一は読みかけの本の続きにとりかかった。
『ダーリン』と呼ばせたい快斗と『快斗』の名前を気に入っている新一の攻防はそれから数日間続くのであった。
…アホだ…ただのアホだ…(爆)
いや、何気に昔の友達と電話をしてて「そういや、私昔お前にハニーって呼ばれてたな」と言われまして…(爆)
昔はハニーがいっぱいいたんですよ(何)
あと可愛い子猫ちゃんとか…高嶺の花とか…あの頃は若かったな…(オイ)
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