「快斗…」

「ん〜?」

「お前何作ってるんだ?」

「ナイショvv」








〜ある日の快斗くん2〜









「ナイショって…」


 ある休日の昼下がりいつもの様に新一はリビングのソファーで読書に勤しんでいた。
 しかし、今日はその横にいつもなら新一を眺めているはずの快斗の姿が見つからない。
 その快斗はというと、新一から離れる事約3mの距離で何かを作っているようだ。


「ナイショはナイショvv」


 快斗は上機嫌でその何かを作っている。
 だが、新一からその様子は見る事はできない。
 なぜなら快斗は新一の方に背中を向けて作業をしているのだから。

 どうやら、新一に内緒で何かを作っているらしい。(でも離れたくないから自室には行かない・笑)


「…気になるじゃねぇか」


 そんな快斗の背中を見ながら新一はぼそっと呟く。

 流石は謎好きの名探偵。
 どうやら推理小説の新刊よりも目の前の謎が気になってしかたないよう。

 そんな新一をしり目に快斗は一人ほくそえんだ。


(新一君、気になってるね〜♪)


 どうやら彼のそんな気持ちの変化まで快斗にはお見通しのようだ。


(でも教えてあげないvv)


 いつも本に入り浸りの新一に仕返しとばかりに快斗は黙々と作業を続ける。








(くそっ、やっぱ気になる…)


 建て前上本に目は落としているが内容はまったく頭に入ってこない。
 目の前の謎が気になって仕方ないのだ。

 快斗が体で隠せているという事はそんなに大きくはない物らしい。
 が、もしかするとパーツ部分を作っているだけかもしれないのでその仮説もなりたたない。
 そして快斗が物音も立てずにその何かを作っているので音から判断する事も出来ない。

 いかんせん推理するには材料が足りなすぎるのだ。(既に推理モード)


「新一〜♪ そんなに気になるのかな〜?♪」


 そしてそれに気づいている快斗は既にかなりのご機嫌モードである。
 なんせいつもは手も足もでない新一お気に入りの作家の新刊に勝っているのだから。


「…気になる」


 どうやら謎が絡むと普段は表に感情を表さない新一も素直になるようだ。


(いや〜vv マジで可愛いvv)


 微妙にむくれて拗ねている新一に快斗の頬は緩みっぱなしだ。

 だが、快斗には一つ誤算があった。
 それは…東の名探偵と言われるだけあって工藤新一は気配を消すのも十八番だという事(爆)

「…………で、それをいったいどうする気だ…?」


 気を緩めていた瞬間後ろから声がかかる。

 快斗は恐る恐る後ろを振り向く。
 と、そこには先ほどまで3m程後ろの距離に居たはずの新一の姿が…。

快斗は血の気が引いていくというのを初めて実感した。


「いや…あの…これは…………」
「覚悟は出来てるな…?」
「はい………(泣)」








「で、今日の夕食のメニューはこれな訳ね」
「そうそうずっと食べたかったんだよな〜」


 すっげぇ興味あってさ〜、と新一はにこやかに志保に語った。
 志保の目線の先には怯えて部屋の隅っこに丸まっている犬(酷い…by快斗)。

 そして新一と志保が食べている今晩のメインディッシュ…それは…。


『今ちまたで話題(?)の骨無し魚』であった(爆)

(※注;骨無し魚とは工場で骨をすべて抜いてから売られている魚である)


「これホントに骨無いんだなぁ〜。凄いよな、食べやすいし」
「だけど、子供のうちからこんな物を与えていたら日本人はますます不器用になるでしょね」
「そりゃ確かに。そのうち魚には骨が無いなんていい出す子供が増えるかもな」
「今でも、『お魚の絵』と言って『魚の切り身の絵』を描く子もいるそうよ」
「それはちょっとなぁ…」


 そんなお魚さん談義を聞きながら快斗は次第に視界がブラックアウトしていくのを感じていた。










 ちなみに快斗が作成していた物…それは…






『工藤新一推理記録』である。(どうやらシャーロック・ホームズのワトソン博士になりたかったらしい)
















 おまけ;後日談


「でも、『工藤新一推理記録』ならいいんじゃないの? 黒羽くんの事だからきっと隅から隅まで記録してくれたんでしょ?」


 ならばそれを見れば過去の事件の事をファイリングし直す手間も省けるという物ではないのか。


「ただ純粋に『推理記録』だけならな…」
「なるほどね。で、一体他に何が書かれていた訳?」
「………寝顔の写真まで貼り付けてやがった///」


 そう言うと新一は耳まで真っ赤になってしまった。


(成る程。よっぽど彼も構われたかったのね。)


 なんたって新一の約3m離れただけの距離でその作業を行っていたのだ。
 いくら気を付けていたとしても見えてしまう事は可能性として皆無ではない。
 だとすれば、自分の身を犠牲にしてでも構われたかったのだろう。


(でも、きっと彼の事だろうからどこかに制作済みの物を隠してあるのでしょうね)


 新一の話しに耳を傾けながら志保はどこか遠くへ意識を飛ばしていたのであった。








「やっぱ新一は寝顔も可愛いよね〜vv」


 ここは工藤家の客間(現快斗の寝室)である。
 そこでは快斗が何やらアルバムのような物体を片手に一人悦に入っていた。

 快斗が手にしているもの、それは…






『工藤新一推理ファイル+日常生活写真集(こっちがメインでしょうねby志保)』であった。






「やっぱりナイショはナイショvv」


 そんな快斗の呟きと共にそれは快斗のKID部屋に隠されることになったのだった。




         






TVで「骨無し魚」の番組を見て思いついた話し。
魚嫌いの子供の魚の嫌いなところNo,1は『骨が取り難い』ところらしい(苦笑)
でも、快斗は見るだけで駄目なんだよな〜、としみじみ思ってましたw





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