いつか必ず
貴方を迎えに行きます…
そう言ったのは間違いなくこの俺
あの時の気持ちに嘘はないけれど
俺のこの手は罪に濡れているから
貴方のその目があんまり綺麗だから
遠くから貴方を眺めるたびに
貴方の噂を聞くたびに 思う
あの人を汚しちゃいけない
罪に濡れたこの手を
あの美しい瞳に伸ばしたら
貴方を汚してしまいそうで
約束を求めたのは俺だけど
約束を破るのも俺なんだ
あの綺麗な人を俺は
一体いつまで待たせるつもりなんだろう…
Time After Time 〜花舞う街で〜 4
柔らかな午後の日差しの中、快斗は小さな児童公園へと向かっていた。
人気のないその中を殊更ゆっくりと歩いてゆく。
もしかしたら、今年こそ諦めて帰ったかもしれない。
去年も一昨年もその前も、『彼』はあの藤棚の下で快斗を待っていたけれど。
きっと四年前にも待っていたのだろうけれど。
今年はいないかもしれない。
それを確認するのが怖かった。
今まで約束を破り続けてきたのは快斗だというのに
『彼』がいないかもしれないと思うと怖かった
きっと『彼』も、そう思っているのかもしれない。
実際快斗は四度約束を破ったのだ。
今回も快斗が約束を破るだろうと思っていても不思議はない。
ついさっき、紅子に言われたことが思い出される。
「『彼』はいるわ。今年も。」
魔女である紅子が言ったことだ。もしかしたら本当のことなのかもしれない。
それでも不安になる・・・待っていてくれるだろうか。
「今年はちゃんと姿を見せておあげなさい」
今までの快斗の行動を知っているのだ。『彼』のことを知っているとしてもおかしくはない。
「遠くから見ているだけではいけなくてよ」
今年こそは『彼』の前に出て行けるだろうか。
遠くから見つめるだけではなく。
ちゃんと『彼』の前に姿を現せるだろうか。
「『彼』もそうなのではなくて?」
それが真実であればいい・・・
あの頃の自分達はただの「探偵」と「怪盗」で
それでも、唐突な約束を求めた怪盗に探偵は頷いてくれたから希望はないとは言えない。
ただのライバルとして見られていたのなら、『彼』は頷かなかっただろうし、何より今まで待っていたはずがないから。
快斗は『彼』が今年も待っていてくれることを祈りながら自分に暗示をかけるようにひたすらそんな事を考えていた
そして
鬱々と歩く快斗の目に、目的地である藤棚が映った。
To be continued …