幸せですか 貴方は今も
幸せですか いつかとは違って

貴方の待ち人が やっと現れた
私は少し 悔しかったのよ

私じゃダメなのね
あの人でなければ ダメなのね

私は少し悔しいけれど
それでも
貴方が幸せなら きっと私も幸せよ…










Time After Time 〜花舞う街で〜 5










新一は藤棚の下に立ち、花房へと手を伸ばしていた。

快斗から藤棚までかなりの距離があるが快斗には新一の表情の一つ一つがはっきりと見える。

新一は微笑んでいた。 幸せそうに、嬉しそうに、そしてどこか悲しそうに。

新一の姿を見つけてから止まっていた足を再び動かす。

それまでとは違う、少し早い歩調。

新一はただひたすらに花に見入っている。

快斗にはまだ気付いていないようだった。

ふと、新一は目を閉じた。

唇だけを動かし口の中で呟く。

「  」

その声は快斗には聴こえなかったけれど

けれど解った。

快斗

新一は快斗の名を呟いたのだ。

快斗は新一に名乗った覚えはない。

おそらく自分で調べたのだろう。

思わずまた、足が止まってしまった。

ざっと靴が思いのほか大きな音を立てる。

その音に新一は振り向いた。

目が合ったとたん、快斗は体を強張らせた。

新一が大きく目を見開いて、驚いたように快斗を見つめている。

「か・・・いと・・?」

信じられないとでも言うように唇が震えている。

確認するような新一の問いかけに、快斗はゆっくりと頷いた。

「かいと・・・」

もう一度名を呟くと新一はその場にへたり込んだ。

「っ!新一!?」

俯いてしまった新一に快斗は駆け寄った。

新一は何も答えない。

どうすればいいものかと快斗が悩んでいると、不意に新一の肩が震えていることに気付いた。

新一が、泣いている・・・?

その事実に快斗は焦った。

状況からして明らかに自分のせいだろう。

だがどうすればいいのかわからない。

「ぃんだよ・・・」

微かに、新一が何かを呟いた。

「え?」

「遅いんだよ、バーロ。俺がどれだけ・・・どれだけ待ったと思ってやがる・・・」

泣いているせいか、声に力がない。

「新一・・・」

「見つかったんだろ?」

「うん。四年前に。」

「ならなんで・・・なんで来なかったんだよ・・・」

「・・・」

責めるようなその口調に快斗は何も言えなくなる

「答えろよ!」

俯いたまま、新一は叫ぶ。

その姿が痛々しくて、快斗は目を伏せた。

「ごめん」

「あやまんな!」

「うん、ごめん。」

「謝るくらいなら・・・なんであんな約束したんだよ・・」

震える声で新一は快斗を問い詰める。

「なぁ、なんでだよ」

「・・・また、逢いたかったんだ。新一に。どうしても逢いたかったんだ」

「じゃあなんですぐ来なかったんだよ」

「・・・怖かったんだ・・・」

ぽつりと呟いた。

「新一に逢って、新一を傷つけるのが怖かったんだ。」

「なんで俺が傷つくんだよ」

「だって、俺は犯罪者だから」

「だからなんだってんだよ。勝手に決め付けんなよ。なんだよ、俺が傷つくって!」

きっ、と新一が快斗を睨みあげる。その目には涙が溜まっている。

「新一は探偵で、俺は怪盗だ。こんな・・・正反対の俺たちが一緒にいれば・・・きっと・・・」

「確かにお前は怪盗だよ」

快斗の言葉を新一は遮った。

「間違いなくお前は窃盗犯で、犯罪者だ。でも・・・でもお前は理由もなくあんなことしてた訳じゃねぇだろ。ちゃんとした理由があって、信念を持ってたんだろ!」

「・・・新一・・・」

「だからって許されるわけじゃねぇ。でもお前は・・・周りの奴らを守るためにやってたんだろ」

「・・・っ」

気付かれていたのだ。快斗の正体だけではない。KIDとして動いていた理由も、おそらくは敵対していた組織のことも。

「正反対じゃねぇよ。」

「・・・え?」

「俺がお前と同じ立場だったら俺だってきっと同じことしてた」

周りの全てを守るために・・・

「正反対じゃねぇ。同じなんだ。俺も、お前も」

「・・・」

「なぁ、なんで・・・なんで解ってくれなかったんだよ・・・」

その蒼い瞳から涙を流し、新一は快斗に縋り付いた。

「傷つけたくなかったんだ。新一を・・・」

そんな新一を見つめながら、快斗は呟くように告げた。

「それに、嫌われるのが怖かった・・・」

「きら・・う?俺が?お前を?」

「そう。俺たちは正反対の位置に立ってるから、だから嫌われるかもしれないって思ったんだ」

そっと、新一の髪に触れる。

「そう思ったら怖かった」

精一杯の優しさを込めて、快斗は新一の髪を撫でる。

「俺の闇が新一の光を侵食するのが怖かった」

「かいと・・・」

「どう取り繕ったって俺は犯罪者。俺は闇の中に生きてる。そんな俺が、新一の光を汚すなんて嫌だったんだ。」

ゆっくりと、快斗は新一の髪を撫で続ける。

「お前・・・馬鹿だな」

ぽつりと、新一が呟いた。

「お前は確かに闇の中に生きてる。でも、それでもお前は闇に飲み込まれたりなんてしてねぇ」

あれだけの闇にいながら、その光は決して失われることなく輝いていて、そんな彼だからこそ新一はこんなにも焦がれているのだから。

「お前だって・・・光だよ・・・俺からすれば、お前の方が光だよ・・・」

「新一・・・」

優しい光・・・新一にとっての、道標。

「嫌いになんて、ならねぇよ。だって俺は、お前が・・・」

と、新一の唇にそっと人差し指を寄せて新一の言葉を快斗が遮った。

「ね、新一。俺から言ってもいい?」

一瞬何の事か解らずにきょとんとする新一。けれどすぐにその意味に気付いて顔を紅く染める

「だっ、駄目だ!大体、俺が先に言おうとしたんだかんな、俺に言わせろよ!」

「だぁめ。」

くすくすと笑いながらも快斗は譲らない

「好きだよ、新一」

「か、快斗!!」

「ねぇ、新一は?」

「・・・・・言ってやんねぇ」

「どうして?」

楽しそうに、嬉しそうに微笑む快斗。その腕は愛しい人の体へと回されている。

「お前が先に言うからだろっ!」

未だ潤んだままの瞳できっ、と快斗を睨みつける。

「あははは、ねぇ、新一。それってもう言ってるのと同じじゃない?」

「え?あ・・」

紅く染まった頬に快斗は満面の笑みを浮かべる。

「ね、新一。ちゃんと聞かせて?」

囁くように新一の耳元で告げると顔を真っ赤にしながら、消え入りそうなほどの小さな声で告げた。

「俺も、好きだよ」







fin

【樹耀様後書き】
はうぅぅ・・・ごめんなさい、折角の新一さんの誕生日記念なのにこんなもの送りつけてしまって・・・(汗)
本当は一日から五日まで毎日送るつもりだったんですが・・・忙しかったり書きあがってなかったり(おい)で結局一週間かかってしまいました(汗)
一応由梨香さまのご希望にそって第五話の詩は志保ちゃんのにしてみましたが・・・どうでしょう?
しかし、長さが違うにも程がある・・・大体なんだ、四話と五話の長さの違いは(汗)
こんなもので宜しければお受け取りくださいませm(_ _)m



【薫月コメント】
くふvくふふふふvvvありがとう樹耀ちゃん♪
新一さんの誕生日で舞い上がっていた所に、とってもとっても素敵なブツを頂いてしまいました☆
もう途中は切なくて切なくて。
新一が一人待ち続けるのには涙が出そうになりました。
でも最後はハッピーエンドvで新ちゃんが可愛くて可愛くてvvもうめろめろvv
いやぁ…今回も素敵ブツを有り難う御座いましたvv



そして最後に……あぷが遅くなってすいません。 もう、マジで御免なさい…(土下座)←毎回それじゃんι



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