──I am waiting with the black berry which ANGERONA raised.
(アンゲローナの育てたブラックベリーを持ってお待ちしております)
アンゲローナとはローマの秘密を司る女神であり、ブラックベリーは書いて字の如く。
──即ち、KIDの持つ“秘密”とは『黒』に関係するモノ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8月のBlue Sapphire -4-
〜怪盗KIDからの挑戦状?〜
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それにしても…今回はちょっといつもと違うわね」
自身のパソコンを起動させながら呟いた哀。
その言葉が何を指しているのか…それに気付かないコナンでは無く、
「…そうだな」
と、呟き“招待状”を手放す。
「実際。服部が話を持って来た時は模倣犯かと思ってたしな」
「彼らしくないものね。こんなやり方」
「ああ…、でも。実際は本物だった、と…」
工藤邸に届けられた“招待状”。
少々特殊で他に見ない材質の紙とインク。
そして…彼特有であり、彼にしか出せない暗号文。
──コナンにだけ宛てた“メッセージ”…
「本来の彼なら、自分が認めた『名探偵』以外にはそんなモノ出さないでしょうし…」
水滴の溜まったグラスを片手に、哀は起動の終えたパソコンから視線をずらし呟く。
「は?」
「探偵と認めているのは、彼が『名探偵』と呼ぶ者だけよ」
「…なんだよ、それ」
「そんな彼が何故、今回に限って面倒なだけの人間を呼びつけたのか…」
コナンの呟きを無視する形で、哀は自分の持つ疑問を口にしていく。
そうする事で、これまでに判明している事柄を頭の中で整理する…。
なんだかんだと付き合いの長い2人にとって、それはイチイチ気にするような次元ではなく…
……だからこそ、会話も成り立つ。
「ヤツの目的が何にせよ、今回のギャラリーとして『探偵』が必要なのは確かみてぇだな」
「その観客の中でも…特に貴方が必要なのも、確かね」
「らしいな…。この状況下で“招待状”を送ってきた程だ…」
「……行くんでしょう?」
視線をパソコンへ戻し、哀は問う…と言うよりも確認の為に尋ねる。
──コンソールを叩く音だけが部屋に響く…
手放した“招待状”がひっそりと簡易ベッドの上に置かれている。
自然とそれに目が行くのは……差し出し主を思わせる、はっきりとした存在感のせいか…?
「ああ」
苦笑を含んだ肯定を返すコナン。
その応えに、
「なら…今日中に集めた物を纏めておくわ」
「わりぃな、頼む」
「良いのよ。…このくらい……」
液晶パネルに視線を向けたままの哀の、素早く動くその両手が…ふいにピタリ、と止まる。
「? どうした?」
動きと同時に止まった言葉に、コナンが訝しげな表情を見せる。
「…………そう言う意味、なのね…」
そんなコナンに構う事無く、哀は液晶に表示された文章を見つめ呟きを漏らす。
位置的に反射して内容が解らないコナンは、それに対し素直に尋ねる事しか出来ず…
「何がだよ。何か解ったのか?」
「…いいえ…、ただの興味心で検索しただけだったんだけど…」
「? なんの事だ?」
「今回、KIDは錦百合──ヒヤシンスを一緒にしていたでしょう? いつも貴方への“招待状”には何かしら付いていたけど…今回は警察各所にも届けられていた」
「……そうだな」
工藤邸…もしくは阿笠邸に届けられる“招待状”。
“例外”をカモフラージュするかの如く、犯行の度に届けられていたのだが…
毎回、それには名探偵宛ての『プレゼント』が付属している。
だいたいの割合を占めるのが花束なのだが……ごく偶に、コナンが欲しがっていた書籍だったり、好みの珈琲豆だったりすることがある。
警察各所に届く“予告状”と“一輪のバラ”等ではなく…
コナンへの“招待状”にだけ付属していた『贈り物』。
「今回は、全く同じモノかと思っていたんだけど…」
「違うのか?」
「あの煩いトリが言うには、「警察と美術館にはユリの花が届いた」だったでしょう?」
「……灰原…;」
哀ちゃん。素敵にはっきり「煩いトリ」発言☆
ここまできっぱり言われると、なんだかスッキリしますね♪
「それからもう1人…」
「もう1人? …ああ、白馬のことか」
その上、白馬氏のことについては名前すら覚えていませんね☆
対するコナンの方は…『黄昏の館』でかなりのインパクト(アプローチ?)を与えられた為に、否応でも覚えてしまったと言う…;
──余談でした♪(爆)
「…その人の処にも届いた事を知っていたのに、ユリが届いたかどうかについては触れなかった…つまり──」
「──届いたのは警察と美術館。それと…オレの3箇所って事だな」
指を折り、哀の言葉を引き継ぐコナン。
しかし哀は緩やかに首を横に振る…
「なんだよ…」
「確かに、花が届いたのはその3箇所。でも、貴方の処に届いた花は『ユリ』じゃないわ」
「…種類の事を言ってるのか?」
「そう。あのトリでも、花の種類くらいは把握してるでしょうから…」
……さっきから言葉に棘があるって…ι
内心で思わず呟いてみるが、決して表情には出さないコナン。
そんな内情に気付いているのかいないのか(きっと前者;)…哀はコナンから譲り受けた──花瓶に飾った──ヒヤシンスへと視線を向ける。
「…貴方宛てに届いたあの花の花言葉…知ってる?」
「花言葉…?」
問い返すコナンに、哀は「まあ、そうだろうと思ったけど」と溜息を漏らす。
この恐ろしく知識の豊富な探偵は、何故か音楽とこういう事には疎い。
花の種類には詳しくても…その花言葉までは知らない。
首を傾げるコナンへ、哀はKIDからのメッセージを伝える為に口を開く…
「そう。ヒヤシンスの花言葉は──競技・遊技・勝負」
to be continue….