『クロノスに守られし第一の大地に眠る』  ──第一土曜日。


           『赤き爪が太陽の石を掴む月時』  ──8月の8時。


                『イリスの導く輝きの下』  ──月夜の輝く処。



  …それはつまり──



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                           8月のBlue Sapphire -3-

                               〜怪盗KIDからの挑戦状?〜
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 『8月の第一土曜日の午後8時。月夜の輝く処より、稀代の名探偵が守りしBlue Sapphireを戴きに参上致します』


「……てことだろ、これ」

 地下室に入り、哀の出した麦茶を口に含みながら呟くコナン。

 …自分用に届いた今回の“招待状”。

 それを手を伸ばした哀に渡し、簡易ベッドの上に座る。
 哀は受け取った“招待状”を一瞥し、

「……中の宛名はしっかりと『江戸川 コナン様』なのね」
「いつものことだろ?」


 ──いつの頃からか届けられるようになった“招待状”。
 警察や、ターゲットに届く“予告状”と全く同じ暗号文の記されたそれは、予告状を出す度に、毎回コナンの元に届けられる。
 それは今日のように工藤邸であったり…ここ、阿笠邸であったり様々。

 それでも『毛利探偵事務所』に届けられる事は一度も無く…

 その代わりと言わんばかりに、怪盗KIDからコナン宛てに届く“招待状”の宛名は決まって『工藤 新一』で…

 反面。中身は必ず『江戸川 コナン』宛て。

 それは、KIDが『工藤 新一=江戸川 コナン』を知っている…と言う事実であり、その上で、誰にも公言せず自分の立つ舞台へと招待している証し…。


「…ここまで来たら、もう敵意を向けるのも馬鹿馬鹿しくなるわね」

 今回の“招待状”を見つめ、哀が小さく呟きを漏らす。
 その呟きを聞き逃す事の無かったコナンが、

「は? なんでKIDに敵意を向けンだよ」

と、問いかける。

「アイツは組織とは関係ない。むしろ敵対している立場の人間だ。それは、初めのうちに調べただろ?」
「……そう言う意味でのものじゃないわ」
「なんだよ…他にもなにかあるのか?」

 …こうやって“招待状”が届いた当初。哀は元よりコナンも、これは『黒の組織がコナンの正体に気付いた罠だ』と考えていた。
 そこで、それまでたいして興味を持っていなかった『怪盗KID』と言う泥棒について色々調べ……すぐに、彼の目的を窺い知ることが出来た。

 コナンからすれば、彼の行動を見て何故誰も気付かなかったのか…その事に首を傾げるほど。

 ひとえにそれは、『怪盗KID』のポーカーフェイスが大きかったのだが…

 『黄昏の館』以降、周囲に知られる事なく何度か対峙した。
 だからこそ、その事に気付けたのかもしれない…。


「別に、工藤君が気にするような事じゃないわ。まして、組織とも関係ない。私の個人的な問題よ」

 未だに首を傾げているコナンに、哀は軽い苦笑を浮かべ答えると、手に持ったままだった“招待状”をコナンへ返す。

「それで? 今回はどうするのかしら?」

 改めて尋ねた哀に、コナンの表情も変わる。

 普段は余程の事がない限り、KIDの現場に足を運ぶ事はない。
 今まで何通もの“招待状”を受け取ったが、赴いたのは“例外”を除き両手で足りる程些細な回数のみ。

 小学生である身体では何かと制限があるのも原因の一つだが…


 何よりも、コナン──新一がKIDの邪魔をしたくなかったから。


 だから直接対峙したのは小五郎の元に依頼が来た時だけ。
 そんなコナンの心情に気が付いているのか、KIDの方も敢えて無理強いをする事はなく…純粋に予告状である暗号の解読を楽しませている様だった。

 ……ただ、時々ある唯一の“例外”。


「──I am waiting with the black berry which ANGERONA raised.」


 流暢なクイーンズイングリッシュがコナンの口から零れる。
 手に持っていた“招待状”を開き、両手で玩ぶ。

「今回の“招待状”は本物。ヤツからの“呼び出し”だからな…行くしかないだろ」

 “招待状”の最後に時折付け足される英文。
 公開される“予告状”には決してない、コナンにだけ宛てたメッセージ。

「…ましてそれが、『黒い実』…ならな」

 恐らく本人の直筆と思われる、KIDからの呼び出し。
 それは多かれ少なかれ、コナンにとって有利な情報の提供で…

「秘密を司る女神が育てた『黒の実』……彼も相変わらずね」
「アイツらしいけどな。…内容も、その行動も」

 …毎回届けられる“招待状”の中に混ざる本当の“招待状”。
 何の理由があって自分に情報を渡すのか、コナンには窺い知る事が出来ない。

 共に同じ敵を相手にしている事は解っていても、共同戦線を張った訳でも無ければ、直接『黒の組織』について話を交わした訳でも無い。
 ただ知っているのは、お互いが持つネットワークで調べた結果だけ。

 それでもKIDは当たり前のように、入手した情報を提供する為に特別な“招待状”をコナンへ送り…

 …コナンはその時、自分の持っている情報をKIDへ渡す。


 ──それが、暗黙の了解となっていた…。




to be continue….







きゃぁ〜♪ついにきました暗号解読編(?)
いや〜さっぱりでしたよ…僕は…(爆死)
KID様も無理強いはしないのね…何だかお互い理解しあってて素敵だわ〜vv(妄想全開)
続きが楽しみなのです☆

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