『クロノス』は「全て」であり「無」である
世界を創造した神「カオス」から生まれた「大地」であり、土を司る神。
『赤き爪』はサードニックの別名であり、『太陽の石』はペリドットの由来。
この2つは共に、8月の宝石と言われている…。
『イリス』とは、小説「グイニサーガ」に出てくる
ヤヌス12神の1人で、「夜」と「月」を加護に持つ女神のことである…
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8月のBlue Sapphire -2-
〜怪盗KIDからの挑戦状?〜
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外へと出たコナンは、さり気無い仕草で軽く周囲を見渡した後、ゆっくりと工藤邸の門を見た…。
「やっぱり…ったく、いつの間に来たんだよ、アイツ」
門の前に置かれた白い箱。
それを見下ろして、コナンは軽く頭を掻いた…。
とりあえず目的でもあったその箱を手に阿笠邸に戻る。
勿論、その際にも周囲を見回す事は忘れない。
帰ってきたコナンを最初に出迎えたのは、この家の主である阿笠博士だった…
「お帰り、新一。…届いておったか」
「ああ…悪いけど博士、毛利のおっちゃんに電話しといてくれるか?」
「解った。蘭ちゃんは…」
「それなら大丈夫だ。合宿に行ってる」
「ならついでじゃ。その間こっちにいる事にしたらどうじゃ?」
「…そうだな。その方が良いかもしれねぇし」
二人並んでリビングへと向かう。
それを出迎えたのは、服部一人だけ。
「あれ? 灰原は?」
「ねぇちゃんならお前が出てってすぐ、どっか行ったで?」
知る訳は無いだろうと思いつつ尋ねると、思った通りの答えが返ってくる。
「地下室か…?」
「すぐ戻ってくるじゃろう。それじゃあ新一、電話してくるぞ?」
「ああ、頼むな博士」
済まなそうに表情を変えたコナンに、博士は構わないと笑顔でその場を離れる。
それを見送って、コナンは持っていた箱をテーブルの上に置いた。
「…? なんや、それ」
さっきまでいた場所に座ったコナンに問うも、コナンは何も言わず再び手に取り、その膝の上に置き直した。
…そこに哀が戻ってくる。
「やっぱりあったのね。中身は?」
「ああ…。これから見るところだ」
そう言って蓋に手をかけた瞬間、部屋中に花の香りが広まった…。
──中に入っていたのは白と赤の錦百合──ヒヤシンス──の花束。
そして…特殊な紙質で出来た封筒。
その宛名は…
──工藤 新一 様──
「ヒヤシンスの花束に、彼特有の“招待状”。…おめでとう、工藤君」
「…嬉しくねぇよ;」
哀の言葉に、蓋をソファーに置きつつ呟く。
そして中から花束を無造作に取り出し、
「やるよ。オレが持っててもしょうがねぇし」
「ありがと」
素直に受けとった哀は、花束を生ける為にそのままキッチンの方へと姿を消す。
その姿を見送りつつ、服部が再び声をかける。
「なぁ、工藤? それって…もしかせんでも…」
なにやら恐る恐る…と言うより、「信じられない」or「信じたくない」と言った態の服部。
そんな服部に気付いているのかいないのか(きっと前者)。
コナンは意図もあっさりとその問いの答えを言い放った…
「見ての通り。ヤツからの届けモンだよ」
「な…なんでや? なんでアイツが工藤個人に…っ」
「…今度のは『探偵への挑戦状』なんだろ? だったらオレんとこに来てても、別におかしくねぇだろ」
「確かにそうやけど…わいが言いたいのはそれや無くて…!」
……なんだか今。コナン君の受け答えで不審な点がありましたねぇ?
混乱している服部はそれに気付く事無く追求を続け…ようとして、帰ってきた哀の言葉に遮られた。
「貴方が言いたいのは、どうして届けられ方が違うのか…って事かしら?」
「その通り! さすがねぇちゃんや!」
しかしその言葉は、まさに彼が言おうとしていたもの。
賛同者(?)がいたと、意気揚揚と声を上げる服部に、
「……ちょっとは静かに出来ないの?」
…とても冷たい一言;
「はぁ…、とにかく。お前はさっさと警視庁にでも行って、2課の様子でも見て来い。んで、暗号解読手伝ってやれ」
「お前は…て、工藤はどないするンや?」
「バーロー。今のオレが行ける訳ねぇだろ」
「せやけど、わいと一緒に行けば…、普段だって──」
「ちょっとは考えろよ。おっちゃんに届けられてないものに、居候のオレが出ていくのはおかしいだろぉが」
しつこく自分を誘う服部に好い加減苛立って来ていたコナンは、まだ続くだろう言葉の先を予測し、問答無用で黙らせる。
「…良いから早く行けよ。……急がないと、間に合わなくなるぜ?」
最後にそう言い残し、コナンは花瓶を持ったままの哀を促して地下室へと降りて行った…。
to be continue….