──クロノスに守られし第一の大地に眠る
赤き爪が太陽を掴む月時。
イリスの導く輝きの下、
稀代の名探偵が守りしBlue Sapphireを戴きに参上致します。
怪盗KID
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8月のBlue Sapphire -1-
〜怪盗KIDからの挑戦状?〜
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7月も終わり、例年よりは涼しいらしい今年の夏。
それでも暑さに滅法弱い(笑)我等が名探偵は、居候先の毛利探偵事務所でエアコンを利かせ、アイスコーヒー片手にお気に入りの洋書を読んでいた…。
ちなみに主である小五郎はいつもの如く貫徹麻雀。蘭は空手の合宿で今日から10日間ほど不在である。
出かける直前まで心配気だった蘭の予想通り、小学生一人ではなにかと不自由な身なのだが…そこはコナン。
「何かあったら阿笠博士のとこに行くから大丈夫v」と、にっこり蘭を送り出し、扉が閉まったと同時に妖しげな笑みを浮かべる(笑)。
…これで好きな読書が出来、普段は飲めないコーヒーなんかも飲める…
読書開始直後。コナンの頭の中は幸せに満ちていた……が。
やはりと言うかなんと言うか…
──静粛は破られる為にあるらしい。(違)
「はぁ?」
相変わらず前触れも無くやってきた西の探偵・服部 平次。
毎回繰り返される乱入行為(行き成り毛利探偵事務所の扉を開き、「くどー」と叫ぶ)に、好い加減嗜めるのも疲れていたコナンは、場所を阿笠邸に移した後で、その彼から発せられた言葉に珍しい声を上げた…
…ちなみに場所を変えたのは、丁度(負けて)帰ってきた小五郎を避ける為である;
「…なんだって?」
「せやから! あの気障な怪盗が探偵に挑戦状しばきつけたねんて!」
鼻息荒く(汚っ!)捲し立てた服部は、そのままの勢いでバンっ! と予告状のコピーをテーブルに叩きつけた。
氷の入った冷たい麦茶が音を立てる。
ついでに今の衝撃でちょっと中身が零れたりして…;
煩げに服部に冷たい視線(ナチュラルに殺気込み)を向ける哀。
しかし全く物ともせず(気付かず)に、叩きつけた紙をコナンに見るように促す。
「……オレは無罪だからな」
「あら、共犯の可能性もあるわよ?」
「コイツとセットにしないでくれ(哀願)」
向かい合って座っているコナンと服部の間にある、1人掛けソファーに腰を下ろしていた哀に、コナンは小声で話しかけつつコピーを手に取る。
それに対し軽い毒舌で切り返した哀は、読んでいる雑誌から顔も上げずに、コナンの本気の呟きに苦笑した…。
「なにコソコソ話してんねん! 早よ見ぃ!」
かなりの興奮を見せる服部とは対照的に、コナンはたいした興味も無さそうに手にした予告状のコピーに目をやった…
「…クロノスに守られし第一の大地に眠る、赤き爪が太陽を掴む月時。イリスの導く輝きの下、稀代の名探偵が守りしBlue Sapphireを戴きに参上致します──…ね」
口頭で読み上げたコナンは、読み終わると同時に溜息を付く。
「あら…今度は神話?」
「らしいな。まぁ、それだけじゃねぇみたいだけど…」
「視野が広いわね、彼も」
「……『も』ってなんだよ」
「他意はないわ」
耳に入った予告状の内容に哀が雑誌から顔を上げると、それを見越していたコナンが手に持っていたコピーを手渡す。
「…なんや? 『今度』て…」
「いや……何でも無い」
「貴方の気にする事ではないわ」
腐っても探偵。(酷)
さすがに引っかかったその言葉に反応するも、この二人を前には対抗できず;
「それより…これ以外には何も無かったのか?」
哀の持つ予告状のコピーを指差し、服部に付属品(笑)の有無を尋ねる。
…大体のKIDの予告状には、それと一緒に『何か』が付属として添えられている。
それは予告内容に関係がある物だったり…全く関係無かったり(爆)。
「えーと…確か、わいンとこには無かったケド、警察と美術館にはユリの花がついてたらしいで。赤と白の」
「百合?」
「ああそうや。きっと自分の勝ちでも信じて、紅白なんか洒落たんと違うか?」
「………ふ〜ん…」
「なんや。気のない返事やな」
「…………」
今回の付属品『赤と白の百合』を聞き、ちょっとした思考の海へと入り込むコナン。
こうなるともう、周囲の声はそう簡単には聞こえない…
「おい、工藤?」
「…黙ってた方が身の為よ? 貴方だって一応は探偵なんだし、そのくらい解るでしょ?」
見終わった予告状のコピーをテーブルに戻し、哀はそう呟いて雑誌に視線を戻した。
どうやら、あまり予告状には興味が無いようで…
…しかし灰原さん。やはりナチュラルに毒吐いてますネ☆
「それで? コレが届いたのは全部で何箇所なんだ?」
泳ぎ終わった(笑)コナンは、次に予告状の届け先について尋ねる。
『探偵に挑戦状』と言ったくらいだ。
当然、他の探偵の処にも届いている筈…
「警視庁とターゲットが展示してある美術館。あとはわいと…それから白馬総監の息子んとこ──計4箇所やな」
「届いたのはいつだ?」
「わいのとこが昨日で、東京の方はみな今日みたいやな。こっちに来る前に警視庁に行ったら、ごっつい剣幕でわいの持ってた予告状奪われてなぁ…、せやからこれはコピーなんや」
質問にかなりご機嫌で答える服部。
コナンからの質問が嬉しいのか。はたまた、コナンには届いていない予告状に『名探偵ランク(服部命名)』(←何それ;)が付いたようで嬉しいのか…
「……どっちもじゃない? 単純だし。まぁ、割合的には6:4じゃないかしら」
──的確な解説(しかも詳細な割合付きv)、ありがとう哀ちゃん♪
異次元で哀ちゃんと会話している間(笑)、そんな服部に溜息を付きつつコナンは話を進める。
「結局の処、お前何しに来たンだ?」
「何しにて…あのコソドロ捕まえる為にや!」
「…じゃあなんでここに居るんだ? オレの処に来る必要はねぇだろ」
「そんなの、予告状見せに来たに決もてるやろ? 工藤のとこにも届いてるかわからんて思ったし」
「……まあ良い。そんな事言ってられる…って事は当然、暗号は解けてるンだろ?」
後半の言葉は「絶対に嘘だ」と思いつつ、これ以上のやり取りに疲れてきていたコナンは、さっさと終わらせるべく、出かかった言葉を飲み込み話を先に進めた…。
…が、服部からの返事が無い。
「服部?」
「いやな…それがなぁ〜…」
それまでの勢いはどうした?!
急に歯切れが悪くなった服部に、雑誌を読みつつも耳は傾けていた哀が、
「…まさか貴方…」
と、呟いた。
既にコナンも事情を理解したのか頭を抱えている。
つまり、解けていない、と…;
「あははは〜;」
「ったく、お前がそれじゃ、警察もまだなんだな?」
「せや! このわいがまだなんや。無理やろなぁ」
「…えばるな」
言外に「警察よりもお前の方が上だ」と言われた気がした服部くん。
上機嫌で断言すると、即座に冷たいお言葉が返ってきた。
…あくまで「気がした」だけ。コナンにそんなつもりは『これっぽっちも』(指の隙間1mm)無い。
「はぁ…」
深々と溜息を付くコナン。
そんなコナンを前に、ちょっと落ち込み気味の服部。
そこで、自分の腕時計をちらり…と見た哀が声をかけた…。
「そろそろ…届いた頃じゃない?」
「…もうそんな時間か? 今日はどっちだろうな」
「お隣りじゃない?」
「お前もそう思うのかよ…じゃ、決まりだな」
そう言って立ち上がったコナンに、服部が慌てて声をかける。
「おい、工藤! 何処行くんや?!」
「隣り。…すぐ戻る」
腰を浮かしかけた服部を片手で制し、コナンは今は無人の工藤邸へと向かった…。
to be continue….