トムキンスの不思議の町は太陽がいっぱい! | |
特殊相対論の話です | |
ガモフ氏の書いた、相対論の入門書「不思議宇宙のトムキンス」の冒頭に、主人公のトムキンスが自転車で、男を追いかける話が出てきます。 「この世には、最高速度があり、それは光の速度だ。」と話が始まります。そのために、「奇妙なことが起こる。」「光速に近いスピードで動くと、ものさしが縮み、時計は遅れる」というのです。 そこで、最高速度が30キロくらいの町の話を例にして、最高速度が決まっているとどういうことになるかという話が進んでいきます。 いろんな話の中に、こんな話が出てきます。 トムキンスが自転車で走ると、町並みがみんなぺっちゃんこになる話です。ものさしが縮むからそうなるらしいです。 トムキンスは5時に走り出して、ペダルをこげばこぐほどぺっちゃんこになる町並みを不思議がりながら郵便局に着きます。郵便局の時計は5時30分をさしているのにトムキンスの時計は、5時5分をさしています。トムキンスが最高速度に近く走ったから、動かない郵便局に対して時間が遅れたというのです。トムキンスは「あなたの時計が遅れているといってもいいですよ。」と言われて自分の時計を郵便局の時計に合わせます。 この後トムキンスは駅まで行きます。そこで、また時計が遅れていることに気づき、こう言います。 「まいったな、またしても相対性か。きっと僕が動くたびにこうなるのだろう。なんて不便なんだ。どこかに行くたびに時計を合わせなけりゃならないなんて、たまらないな。」と。 |
1 | そこで問題 | ||
トムキンスはどんな方法で時計を合わせたでしょう。 | |||
(これは、けっこう難問ですぞ。もちろん東大入試には出ないけど。) | |||
2 | 答え | ||
A | 答え1(多分トムキンスが持っていただろう時計) | ||
まず、トムキンスはどんな時計を持っていたのか考えます。多分、ちょっと昔だから、針のついたアナログの時計だったと思います。 トムキンスは銀行員だから、正確な時刻を知るために、きっと大き目の実用性のある時計を持っていたでしょう。 したがって、合わせるのは簡単です。ノブを持って、ちょこっと動かします。25分の遅れだからそれだけで十分です。 |
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B | 答え2(いまどきの時計) | ||
では、いまどきのデジタルならどうでしょう。時計によって方法は異なるけど、これも簡単です。分のところを動かすポッチを押せばいいのです。文明の利器はとても便利です。 | |||
C | 答え3(昔の時計だとどうでしょう。) | ||
a | 水時計 | ||
ひしゃくで、上の水盤からきちっと量って汲んで、下の水盤に入れなければならない。昔のはかなり面倒ですね。 | |||
b | 砂時計 | ||
手でその分だけくるくると反対にして合わせるしかないかな。でも、砂時計は、落ちるスピードは時間の進む速さと同じだからいつまでたっても追いつかないことになります。だからどうせ同じなんだから上下を何回かひっくり返したことにしてしまいます。そして最後のはしたの分を合わせます。1回余計に進ませたことにして、横倒しにして、本当の時刻?が追いついて来たときに立てる。これならうまくいきそう。手間はかかるけど、考えてみればそんなに難しくはない。でもなんかちょっと変ですね。 | |||
c | 日時計 | ||
駅前の日時計と、トムキンスが黙って借りてきた自転車の荷台にたまたま積んであった日時計(本当の話にはもちろん日時計は積んでありません。)では指している時刻が違います。さて、どうやって合わせましょう。これは難問ですよ。 | |||
3 | 不思議の国のパラドックス | ||
日時計は、知ってのとおり影のさしている位置で時刻が決まります。この、影を動かさなければなりません。ところが、影は、太陽の位置で決まります。駅前の日時計と、トムキンスの自転車の日時計では太陽の位置が違っているというわけです。合わせるためには太陽の位置をあわさなければなりません。さて、どうやれば太陽の位置をあわすことができるでしょう。 駅前は今しもラッシュです。たくさんの人たちが、トムキンスの周りを歩いています。電車から降りた人、歩きできた人、バスで来た人、走ってきて息が弾んでいる人。スピードはさまざまです。だから、一人一人の時刻もさまざまです。したがって、一人一人の頭上に輝く太陽も、全て微妙に位置が違います。そうなると一人に1個づつの太陽が必要です。 空じゅうまあ太陽だらけです。 こんな国に住むと、あっという間に日射病にかかってしまいそう。 |
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4 | 結論 | ||
ノブを動かして、時計を合わせるなんて小学生だってできます。ぐるっと長針を1周させると、1時間進みます。けれど、それは時計の針が1時間進んだだけで、本当の時間が1時間進んだことでないのは誰だって知ってます。 そうなんです。トムキンスがあわせたのは時計の針なのです。本当の時刻ではありません。いくら時計の針を回したところで、本当の時刻を進めることはできません。トムキンスが時間を自由に動かす魔法の指を持っているなら別ですが。 そうなんです、相対論者は、時計の針がさしているところと、本当の時刻とをうまく使いわけながら論を進めます。あたかも、時計の針が指している時刻が本当の時刻であるかのように読者に錯覚を起こさせます。そしていつの間にか、指で動かした時計の針とともに本当の時間も動くと思い込ませてしまうのです。ちょっと考えればだれだってわかるそんな矛盾にも気がつかなくなるのです。 ガモフ氏は、時計の針を動かすと本当の時間も動くと思っていたのでしょうか。それとも、王様の服職人のように、とても才知に長けていたのでしょうか。私にはわかりません。ただ、私なんかより、千倍は頭がよかったろうとは思いますが。 やっくらむっくら めでたしめでたし。 03年12月26日 並刻記 |
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