最も遠い銀河団


著者 高田敞

2005年2月18日付の朝日新聞に127億光年先の銀河団が発見されたという記事が載っていました。

 ハワイの、スバル望遠鏡で、国立天文台や、東京大などがとらえたそうです。

「銀河の集団としてはこれまで知られている中で最も遠くにあり、したがって最も古いという。宇宙の年齢は137億歳とするのが有力で、宇宙誕生から約10億年後の姿を見ていることになる」

「6個は地球から約127億光年離れ,直径300万光年の狭い範囲に集まることが分かった。

 数十個以上の銀河が集まる現在の銀河団に比べて数が少なく、質量も100分の1で、誕生直後の姿とみられる」

「巨大な銀河団に成長する過程の最初の姿と考えられる」

とあります。(「」内は引用)

このことについての疑問を下に、述べます。

 

 この観測に対する考察は、ビッグバン宇宙論に基づいているとおもわれるので、そのことから考えてみます。

1 銀河団の大きさの疑問

(1) その銀河の現在の大きさを考える 

 この銀河は、127億年前に直径300万光年でした。このあとも、ビッグバン理論によれば宇宙は膨張をしていることになっています。したがって、この銀河も膨張をしているはずです。同じ速度で膨張したとして現在のこの銀河がどのような大きさになっているかを計算してみます。

 式は 300:X=10:137になります。

 答え 直径4,110万光年です。

(2) 考察

 直径4000万光年というのはこの近くの銀河団の大きさと変わりありません。近くというのは数億年前の銀河団ということですので、大きさでは矛盾はありません。

 つぎに銀河の数を考えてみます。元の大きさの300万光年というのは、現在なら局部銀河群の大きさです。天の川銀河系やアンドロメダ銀河などでつくる局部銀河群とあまり変わりありません。ただ、銀河の数は5分の1ぐらいと、かなり少なめです。

 現在までに、およそ直径で13倍に膨れ上がっているはずです。体積だと、直径の3乗倍なので、およそ2000倍に膨れたことになります。すると、中にあった物質は、2000倍に薄められることになります。このままでは、新たに銀河を作るのは難しいと思われます。周りから物質を取り込むにも、この銀河の周りの宇宙空間も膨張しているので、やはり物質は薄められているはずです。すると周りの物質を取り込むということもあまり期待できません。これでは、いくら127億年の年月があっても、新たな銀河を作ることはできないのではないでしょうか。特に直径4000万光年の銀河団になると、少なくとも、数百個の銀河を新たに作らなくてはならないので、最初に、よほど物質が詰まっていなくてはなりません。しかし、物質が詰まっていると、宇宙空間の膨張より局部重力が勝って、その部分は膨張しないという意見もあるので(アンドロメダ銀河と、天の川銀河は230万光年も離れているのに、空間膨張より局部重力の方が勝って、接近しているといわれています)膨張することができなくなります。そのままの大きさで、局部銀河群を形成したのかもしれません。それだと数十個の銀河を新たに作ればいいだけだからうまくいくかもしれません。ただ、それでは、昔の銀河団はどれも小さいまま、膨張せずじまいになってしまう懸念があります。宇宙空間だけが膨張して、物質は膨張から取り残されてしまいます。それでは物質にアンバランスができ、平坦な宇宙という観測結果から外れてしまいます。とするとこの銀河はやはり、その後、膨張して、ばらばらになっていったと考えられます。

 

2 127億年前の銀河が見えることへの疑問

 (1)127億年前の地球とその銀河の位置関係

 ア インフレーションが非常に小さい膨張で終わった場合。

 宇宙の直径が、1センチメートルとか、10センチメートルのとき、インフレーションビッグバンが終わってあとは通常のビッグバンになったという説で考えます。

 127億年前、この銀河と、やがて地球になる物質(すなわち形の違う地球)との距離は、20億光年以内の距離にあったはずです。ビッグバン後、互いに、光速度で反対方向に飛んだとした場合が一番離れていることになります。(相対論では、相対的に光速度以上の速度はないことになっているのですが、それは考えずに、光の速度で、10億年飛んだら、10億光年の距離を飛ぶことになるという単純な考え方でやってみます。すると、互いに光速で10億年反対方向に飛ぶと、お互いの距離は20億光年になります。物質だから、本当は光速以下の速度で飛んでいるはずだから、互いの距離はもっと縮まるはずです)

 そこで、127億年前にその銀河から出た光が、20億光年先を飛んでいる、やがて地球になる物質を追いかけて行って、127億年後、地球にまで形を変えたその物質に追いついたとしたら、地球は、どれぐらいの速度で飛ばなければならないかを計算してみます。

 考え方は、小学校で習った、追いかけ算です。

 ウサギと亀が競争をしました。ウサギは亀の後ろ100メートルからスタートします。ウサギの速度は分速500メートルです。1時間後に追いつきました。亀の平均速度を求めよ。という問題と同じです。

式は 147÷1=127÷Xです(Xは地球の速度)

答え X≒0.8639

 地球の平均速度は、光速の0.8639倍ということです。秒速約25万キロメートルになります。現在は、背景放射に対して、秒速400キロメートルぐらいだそうです。しかも、その大部分は、銀河間の重力による固有運動だそうです。ではいったい、空間膨張によるこの、25万キロメートル/秒という速度はどこへ消えたのでしょう。地球はかなりの質量を持っています。この地球の速度を、秒速25万キロメートルも落とすにはかなりのエネルギーが要ります。そのエネルギーはどこから供給されたのでしょう。

 この問題は、ビッグバン宇宙論者の考え方の不思議のひとつです。彼らは、地球はビッグバンのときからここにあったとして考えています。あるいは、ビッグバンの時には地球はなくて、45億年前に突然宇宙に現れたと考えています。

 宇宙背景放射も、137億年前に、137億光年離れたところの爆発の光が、今やっと地球に届いたとして考えている節があります。そのとき地球の前駆物質も爆発の現場にいていっしょに爆発していたとは考えていません。

 この考え方は定常宇宙論の考え方です。定常宇宙論なら、127億光年先の銀河が127億年前に光を出して、それが127億光年離れた地球に今届いたとなります。しかし、ビッグバン宇宙論では地球はビッグバンと共に膨張しているはずです。

 だから、ビッグバン論では127億光年先の宇宙は見えないはずです。これは8分前の太陽は見えても、10分前の太陽は宇宙のどこにも見えないのと同じです。また、7分前の太陽も見えません。見えるのは、星から出た光が地球にとどいた瞬間だけなのです。だから、10分前の太陽を出た光は2分前に地球を通り越していて、見えないのです。また、7分前に太陽を出た光は、後1分待たなければ届かないので見えないのです。

 127億年前に銀河を出た光が、地球を通り越さずに今到着したというのなら、上記のような地球の速度が要ります。これは現在の地球の速度を考えると不可能なことです。まして、今宇宙は再度膨張が加速されているということです。加速されてこの速度では、とても遠くの銀河は見えません。銀河の光はとっくの昔に地球を通り過ぎているはずです。

 
イ インフレーションが巨大になって終わった場合
 インフレーションユニバースでは、最初の物質やエネルギーはこの宇宙の外まで飛ばされて、新たに物質ができ現在につながったとあります。
 このとき物質はどこにどのようにできたのか不明です。
 1回目のように、1点から始まったら、また、インフレーションを起こさなくてはならなくなります。1回目のときと同じ不条理が生じるからです。
 宇宙全体に散らばってできたのなら、定常宇宙論と変わりなくなってしまいます。このときは、地球とその銀河団とが127億光年離れてできたと考えても差し支えないので、127億年前のその銀河から光が出て127億光年の距離を旅して今地球にたどり着くことは可能です。この場合のみ唯一その銀河が見えても不思議ではなくなります。
 適当な大きさから始まったというのなら、アと同じことになります。見えません。

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