ビッグバン宇宙の3大難問と宇宙論
著者 高田敞
 ビッグバン宇宙には,三つの難問があるといいます。
 ひとつは地平線問題、ひとつは平坦性問題、もうひとつはは磁気モノポール問題だそうです。本当にそれだけ?というのは書いてきました。
地平線問題
 この問題は、宇宙の温度を測ると、宇宙全域がほぼ均一な温度分布になっているのはおかしいという問題です。
@ 問題のわけ
 これはビッグバン宇宙が本当だとしたら起こる問題だそうです。
 
 地球から宇宙を見て、その理論的に見える限界のところを宇宙の地平線というそうです。
 今、ビッグバンという、宇宙の誕生から137億年たっていますから、光の速度を考えると、どちらの方向にも、137億光年のところに、見える限界の地平線があることになるといわれています。137億年前にそこから出た光は、光速で137億年宇宙を走って現在の地球にたどり着くというわけです。それ以前の光はまだ地球に到着していないというわけです。それより昔に宇宙はなかったのだから光がないのは当然です。(このことの矛盾は以前書きましたから省きます。)
 問題はここからだそうです。地球を中心に正反対のところどうしは、274億光年の距離があるので、宇宙が誕生してからまだ137億年しかたっていないので、光は互いにまだ届いていないそうです。光以外のものも当然まだ届いていないというのです。光はまだその半分のところ地球にしかとどいていないからです。なのにその反対側同士が同じ温度であるということは不合理であるというのです。今まで、一度も関係を持たなかったのだから、違う温度になってなければならないのに、宇宙全体がほとんど同じ温度になっているのは変だというのです。
 本当は、この設定自体がとても矛盾しているのですけどね。137億光年先の宇宙が見えたということは、137億年前の宇宙が見えたということです。137億光年前の宇宙は、ビッグバンの真っ最中です。星など宇宙のどこにもありません。137億と1光年先の宇宙は137億と1年昔の世界だから、ビッグバン論ではもう何もありません。星どころか、時も、空間も奈落さえありません。
 ところがそのとき宇宙はもう少なくとも直径274億光年の大きさに広がっていたということになるのですからとても変な話です。
 なぜこんなことが起こるかというと、地球は神代の昔からこの場所に鎮座ましましているということが暗黙の前提になっているからです。定常宇宙論者がそうなら少しはわかるけど、ビッグバン論者がそうなんだから不思議なことです。まあ、神代の昔から地球がここにないと、「ビッグバンあれ」と叫んだ神様の立っている場所がなくなってしまいますからね。
 まあ、それは置いといて、話を進めます。
 
A 考察
インフレーションビッグバン説の1(一般論)
インフレーションビッグバン説では、最初、宇宙の膨張はゆっくり始まったというのです。その間に宇宙は全ての情報交換を行い、均一になった後、急激に、それこそ光の何兆倍もの速度で広がったというのです。すると、最初均一だったんだから、今も均一であるというのになんら矛盾は生じないというのです。
 なるほどなるほど。宇宙はかなりよい子なんですね。ちゃんと平等になるまで待ってあげてからボンと爆発するんですから。
インフレーションビッグバン説の2(私論・地球もビッグバンの中にあったと仮定すると))
 最初のゆっくり膨張がなく、情報交換がない場合を想定します。
 宇宙のインフレーション膨張は約10センチの大きさで終わったという考えがあります。直径20センチメートルの球です。そして、ほとんどの考えがそんなものです。
 もしそうだとすると、ことは簡単です。インフレーションが終わった時、宇宙の右端と左端は20センチの距離にあります。そのとき、右端から出た光は、20センチ先の左端を追いかけて行きます。光なんだから、もちろんスピードは光速でです。
 インフレーションが終わっているのだから、左端の速度は光速以下になっています。仮に最大の光速だとすると、そのとき右端から出た光は、左端の20センチ後ろをずっと追いかけていることになります。逃げる左端も光速、追いかける右端から出た光も光速だからそうなります。
 137億年たった現在も、右端から出た光は左端から20センチ後ろを追いかけているはずです。もし、途中で左端が光速より遅くなると、たった20センチの距離だから、一瞬以下で追いつかれてしまいます。左端は一瞬も油断できませんね。
 地球の速度は、現在秒速約400キロメートルだそうです。現在見えている星や銀河はみんな光速以下です。だから、銀河のほとんどは、右端の光に追いつかれているはずです。左端から20センチ手前にある銀河までそのはずです。137億年前に右端を出た光は、今、宇宙のはずれの左端の20センチ手前にあって、相変わらず光速で逃げる左端を性懲りもなく追っかけているのですから。
 同じように137億年前左端から出た光も、今、右端の20センチ手前にあって、夢中で右端を追いかけているはずです。したがって見えている宇宙のほとんどで熱交換が成立します。メデタシメデタシ。
 このときの問題点は、光が、宇宙膨張を追い越してしまうことです。左端が、光速より遅くなると、右端の光は左端を追い越してしまうことになるわけです。宇宙の外に光が飛び出してしまいます。 
 いや、地球から見えなくても、地平線の向こうにも宇宙は広がっているから大丈夫ということになっています。水平線の向こうにも海が広がっているように。
 でも、宇宙ができてから137億年です。光速で広がったとして、宇宙の直径は274億光年です。ビッグバン論では、宇宙は均一な球だそうです。地平線の向こうに宇宙が広がっているためには宇宙は光速以上の速度で広がっていなくてはなりません。ところが、現在知られている星や銀河の速度は光に比べるとあまりにも遅すぎます。
 いや、宇宙膨張は、空間膨張だから大丈夫と言われそうです。宇宙膨張は空間が膨張するので、地球から遠いところの銀河は光速以上ではなれていっているという説があります。実際、光速に近い速度で離れていっているといわれているクエーサーという星が観測されています。この説が正しいとしても、そのためには、銀河同士の間に何百億光年もの距離が必要です。右端の光と、左端の距離が最初20センチではその間の空間の距離が小さすぎて、空間の膨張によって光速で離れるということはできません。自分と、自分が打っているパソコンの間の空間が光速以上の速度で膨張することになるからです。何十億年たとうがそんなことは起こりません。
 ただ、インフレーションビッグバン説ではインフレーションは1センチで終わったという説から、今見える宇宙の何兆倍まで一瞬で広がった説まであるので。どのようなことが起こってもちゃんと対応できるようにできています。問題ごとに違うビッグバンを持ち出せばいいのですから。病気によって、内科の先生が応対したり外科の先生が応対したりするのと同じです。ちなみに、この地平線の問題が生じるときは、宇宙は、インフレーションによって、一瞬で、この宇宙の何倍とか、何兆倍とかに広がったことになっています。とても便利です。
 でも、そのときは、ハッブル定数が無意味になってしまうことは以前書きました。
 また、相対論の、光速度不変の説では、光はどのような速度のものにも光速であるというので、光速で逃げる左端に対しても、光速でぶち当たるので、一瞬で、光は左端に追いつくことができます。もちろん光速以上で逃げるものに対しても、光速で追いつきます。2倍光速のものに対しては、3倍光速でというわけです。まあ、相対論では光速以上のものはないから、そういうことは考えなくていいみたいだけど。
 宇宙が膨張するとすると、その最先端はすっ飛んでいく光でしょう。それを追いかけて、ニュートリノが2番手で争っていることでしょう。カミオカンデの有名な超新星爆発の観測でも、光の到達とほとんど変わりなくニュートリノがやってきています。それに続いて電子が飛んでいくかしら。水中では光を追い越しているのが観測されたりしているので、光にとってはかなり強敵になりそう。
 人間に見える、物は、ずっと後に遅れて飛んでいくしかないでしょう。
 ということで、左端は、光とニュートリノと電子でできているかも。
測ったのは何の温度
 宇宙の温度を測ったら均一であったというけれど、それは何の温度なのでしょう。
 有名なのは、宇宙背景放射の温度です。絶対温度にすると2.7度という電磁波が宇宙に満ちているということです。満ちているというのは、詩の中ではよい表現ではあっても、科学の中ではあまり適切な表現ではありません。光というのはそれぞれが好き勝手な方向に秒速30万キロ弱ですっ飛んでいるのだから、満ちているという状態ではありません。適切な日本語の使い方ではありませんね。
 それはさておき、 ビックバン宇宙論では、これは137億年前のビッグバンのときの宇宙の温度ということです。現在の宇宙の温度ではありません。
 定常宇宙論では、これは、宇宙の塵やガスの温度です。1光年はなれた宇宙の温度を測ると、それは1年昔の宇宙のその場所の温度になります。1万光年離れた場所の宇宙の温度を測ると、それは1万年昔のその場所の宇宙の温度になります。銀河系は直径10万光年くらいだそうだから、星空の温度は現在から数万年過去の温度までが測れることになります。これが、銀河系を離れると、ちょっと遠くて、10万年から、百億年くらい昔の宇宙の温度を測っていることになります。
 光の速度が有限なので、遠く離れれば離れるほど過去の星を見ていることになるのといっしょで過去の温度は測れても現在の宇宙の温度は測りようがないのです。
 たとえば、今、お隣のアンドロメダ銀河の温度を計っても、それは270万年前のアンドロメダ銀河の温度です。今のアンドロメダ銀河の温度を計ろうと思えば、270万年待たなければなりません。
 10億光年先の銀河の温度を測ると、それは10億年昔の銀河の温度になります。
 ビッグバン宇宙論では、宇宙の膨張に伴って、宇宙の温度も下がっていくことになっています。10億光年先の宇宙の温度は現在もっと下がっているはずです。
 ただ、10億年前の銀河が、現在に至るまでに宇宙空間膨張によって下がる温度と、10億年前にその銀河から出た熱が、地球に届く間に宇宙空間膨張のために下がる温度が同じ割合だとするとかまわないかも知れないのですが。
 
平坦性問題
 これは宇宙の密度の問題です。宇宙を「閉じた宇宙」「平らな宇宙」「開いた宇宙」の3つに分ける考え方です。平らな宇宙の密度を1とすると、それより密度が高くなると、閉じた宇宙になり宇宙はいずれ収縮していき、1より小さいと開いた宇宙になり宇宙は果てしなく広がり続けることになる、という考え方だそうです。
 問題はここからです。現在の観測結果から、今の宇宙はほとんど平らで、質量密度は1に近いらしいのです。確率的には、閉じた宇宙や、開いた宇宙になるほうがはるかに多いのに、どうしてこの宇宙は1に近いのだろうということだそうです。宇宙は、1以外の数字、たとえば、5とか、6とか、7.4とか、2.749とか、78305とか、0.001とかどんな数字でも選べるのにどうして1を選んだのかということです。神の一撃があったのかしらという人さえいるくらいに難しいことだそうです。 おそらく、1億円の宝くじを、1億回連続して引き当てる方がよほど簡単なくらいなんでしょう。
@ 問題点
 この問題も、ビッグバン宇宙論の問題点です。
 地球上における、さまざまな現象は、必然的に起こっています。偶然に見えても、物理的な因果関係は法則にのっとっています。地球に近い宇宙でもほとんどそのように動きます。宇宙のバランスが、どうしてそのような、決してあるはずのない偶然によってできているのかは、確かに難問です。
 でも、「考え方が間違っている」というのなら、ありえない偶然ではなく、十分普通にありえることになります。ということは、確率的にはこれが99.99パーセントでしょう。  
 まず、何をもとに1という数字が計られたのかという問題があります。宇宙の大きさも、宇宙の物質の量も、どのようなものがどこにあるかも不確かなのに、1と決め付けられるわけがないと思うのです。
 また、上に書いたように観測の限界も存在します。10億光年先の宇宙の密度を計ると、それは10億年過去の宇宙の密度です。現在も宇宙は膨張しているというのだから、現在、そこはもっと密度が薄くなっているはずです。100億光年先の宇宙の密度も、10億光年先の宇宙の密度も、地球のそばの宇宙の密度も同じであるなら。100億年過去の宇宙と、現在の宇宙の密度は同じということになって宇宙の膨張は否定されてしまいます。
  また、同じビッグバン宇宙論でも、宇宙の物質は、今見えているものだけでは足りない、後100倍はいるというダークマター論も出てきて、一世を風靡しています。
A 考察
 神に頼らずに宇宙が均一になる仕組み
 大昔から、物質は、熱交換や、物質交換をしていました。いたるところで、引力によって物質は縮み、銀河になります。エントロピーの減少です。すると物質の密度の増大や熱の増大が起こります。すると、物質は周りと同じ密度になろうとして、ばらばらになっていき、熱は、周りの低い温度のほうに流れ、同じ温度になろうとします。エントロピーの増大です。
 さまざまな方法でそれは行われ、やがて、元の均一な密度で、同じ温度の安定したガスに戻ろうとします。宇宙の密度や温度がどこでも、昔でも今でもほとんど同じなのはこのためです。ビッグバンがなければ、そのための時間はたっぷりあります。空間膨張などという、実態も法則もない幽霊のようなものに悩まされずにもすみます。ほとんど同じ密度、同じ温度の宇宙になるために実態も法則も分からない神なるものの一撃も必要ありません。自然に任せればそうなるのですから。
 真空の箱の中に、水素ガスを入れます。すると箱いっぱいに水素ガスが広がります。次に酸素をそっと入れます。酸素は水素より重いので下にたまりそうなのですが、酸素は酸素で箱いっぱいに広がっていきます。それぞれに均一になるのです。
 ところが、何かのかげんで、ひとつでも酸素と水素が化合すると、次から次に反応が伝わり、燃えて水になってしまいます。これはエントロピーの減少です。箱が丈夫でこの爆発に耐えられれば、水蒸気と発生した熱と、余った水素か酸素はそれぞれまた均一に箱いっぱいに広がります。
 このようにできた水も、宇宙の中では、自然に分解されて、また水素と酸素に戻ります。そしてこれも、中性子星の中ではクオークになったりします。
 エントロピーの増大と、減少は宇宙の中では常に起こっています。
この仕組みが宇宙全体をほぼ均一にしたのでしょう。水素は水素で、酸素は酸素で、鉄は鉄でそれぞれにエントロピーが増大して、均一に宇宙に広がろうとしたのでしょう。星は星で銀河は銀河で広がっていったのではないでしょうか。引力や熱の不均一が起こり、がたがたと大騒ぎしながら。
宇宙の大構造
 宇宙は巨大なバブル構造で満たされているのが観測されています。
 この宇宙の大構造も、エントロピーの増大と減少のせめぎあいから生まれた構造ではないでしょうか。
 味噌を溶いて沸かすと、亀甲模様が現れます。これは、温度差と地球の引力によって、水に下降流と上昇流が生じ、これがある程度規則的な模様を作るのです。ベナール対流といわれている現象です。
 宇宙の大構造は、この模様が立体的にできたとするとよく似ています。宇宙の熱と引力によるエントロピーの減少と、崩壊し、均一になろうとするエントロピーの増大の力が描いた壮大な縞模様です。
  巨大な銀河も、写真ではまるで台風の渦巻きのように写っています。大きな太陽の集まりなのに、まるで雲のようです。あまりに遠すぎて星1個1個が台風の雲の中の水滴と同じに写るのです。もっと遠くはなれると、その銀河全体が1個の水滴と同じになります。この銀河が、遠くから見ると、味噌汁に溶けた味噌の粒粒のように動き、同じような縞模様を作るのではないでしょうか。なにも見えないところには、味噌汁の湯のように宇宙塵や高温のガスが充満しています。湯の動きに乗って味噌の粒粒が動くように、宇宙に満ちているガスの流れにのって銀河が動いているのではないでしょうか。共に、原動力は、熱の高低と、引力です。そのための時間は、ビッグバンがなければたっぷり死ぬほどあります。
 仕組みはこんな風です。
味噌汁と同じように宇宙の縞模様のところが、周りより少し温度が低いのです。すなわち、銀河や銀河団、グレイトウォールなどがある場所です。
 宇宙の巨大な泡の中は、温度が高く、物質がそのぶん希薄です。その周りの銀河が集まったところは温度が低い分物質が濃く集まっています。
 ちょっとした物質の動きや引力の偏りくらいでは銀河や星はできません。物質が圧縮されると熱が高くなりその熱により物質同士は物質はそのエネルギーで離れるからです。上に書いたような、宇宙がほぼ均一になる仕組みです。宇宙に、星や銀河ができるためには、物質が収縮するときの膨大な熱を外に逃がさなければなりません。その仕組みはだいぶ解明されてきているそうです。たとえば、星が誕生するときは、収縮した分子雲の熱を、まず、赤外線で発散させます。もっと収縮すると、電磁波やプラズマのジェット、ニュートリノ、恒星風などで周りの宇宙に発散させていきます。その結果物質を拡散させていた熱エネルギーが減少していき、物質は引力により引き付けあい星が出来上がります。
 銀河も同じような仕組みで熱を宇宙空間に飛ばして収縮していきます。銀河も、その中心から、巨大なジェットを噴出しているのが観測されています。われわれの銀河系も、ジェットを噴出しているのではないかという観測があります。
 観測によると、銀河のある部分は周りの宇宙空間より温度が低くなっています。本来物質が集まっているところは温度が高くなるはずなのに逆転しているのはこのためです。銀河が作られる過程で熱が周りの宇宙空間に発散されてしまったためです。
宇宙の年齢はそんなに長いの
 今のところ観測されている星は百数十億年ぐらいの年齢だそうです。百数十億年ぐらいより古い星がないから、宇宙の年齢もそれくらいでそんなにのんびりとはできないはずだといわれるでしょう。また、ビッグバンのあった証拠のひとつだとも。、
 しかし、何百億年もの寿命を持った星がないのもこの、エントロピーの増大によるためだともいえるのです。
 エントロピーの増大によって、星は分解し、塵に戻り、複雑な金属原子もやがて元の陽子と、電子へ、さらに、素粒子やニュートリノに戻ってしまうのです。星ができ、さまざまな元素ができ、また分解されて元の粒子に戻るのが、一番遅くて200億年ぐらいの周期になると考えればつじつまは合います。星の寿命は長い星でもそれくらいだと計算もされています。
 では、現実にそんなことが起こっているのかを考えてみます。
 まず熱です。
 熱は常に拡散しているのは太陽を見ると簡単です。常に、電磁波となって宇宙空間に拡散しています。また、ニュートリノになって、宇宙空間に拡散しているのもあります。超新星の爆発のエネルギーの90パーセントはこのニュートリノになって宇宙空間に戻るともいわれています。おそらく、宇宙のエントロピーの増大に一番かかわっているのが、このニュートリノなのではないでしょうか。カミオカンデに期待します。
 では物質はどうでしょう
 ほとんどの星はその最後に爆発して宇宙空間にガスや塵になって散らばっていくといわれています。大きい星ほど早く爆発し、誕生後数億年で爆発してしまうものもあるそうです。エントロピーの増大にもってこいの例です。巨大な星ほど早く爆発してしまうのは周りの宇宙空間と星とのエントロピーの差が大きいからとも考えられます。
 では爆発しない星はどうなのかということになります。たとえば地球とかの惑星とか、褐色矮星とかです。爆発もしないし、恒星風も出しません。ばらばらになりそうにありません。しかし、小さすぎるから、ほっとけばいいというわけにもいきません。塵も積もればで、何千億年とか、何十兆年とかの時間が積もれば、この燃えない星ばかりが増えてしまいます。定常宇宙論などは、永遠の昔から宇宙があるのだから、このごみの様な星を片付けなくてはなりません。準定常宇宙論では、宇宙は膨張しているので大丈夫そうです。私はそうも思えないのですが。
 地球などは、太陽が爆発するときにそれに巻き込まれて蒸発しばらばらになりそうです。惑星の一部分はそのようなことになるでしょう。でも、そうじゃない惑星や、褐色矮星などが残ります。しかしこれも時間はかかるけどやがて何らかの形で風化しばらばらになっていくはずです。周りとの差が小さいほどエントロピーの増大はゆっくり進むからです。ばらばらになるまで、200億年とか300億年とかかかるかもしれません。しかし、物質は常に変化し、風化しています。
分子や原子は
 では原子はどうでしょう。鉄も、簡単な陽子に戻るのでしょうか。戻っています。
 星の中で、物質は簡単なものから複雑なものへ作りかえられているというのはよくいわれています。では、その反対に複雑なものから、簡単なものへの変化はないのでしょうか。たとえば、鉄が分解されて、陽子になるとかいうことです。その例はいっぱいあります。
 銀河や恒星ができるとき、プラズマのゼットが出ます。これは、銀河や、恒星を作る元になったガスの中のいろいろな原子が元の陽子や、電子や、ニュートリノに分解され宇宙空間にばら撒かれている現場です。同じようなプラズマのゼットはさまざまな場面で見られます。
 また、恒星風は陽子や電子のプラズマです。
 宇宙の中では、いろいろな原子ができるのとともに、また分解され、元のさまざまな粒子に戻っています。作ってはこわし作ってはこわしです。
 だから宇宙はいまだに金属元素が少なく、陽子や水素分子が多いのです。
 
宇宙で最初の星
 ビッグバン宇宙論では、古い星ほど金属元素が少なくなることになっています。最初の星が爆発するまでは水素から鉄までの元素しかなかったので、最初にできた星は、鉄から以降の金属元素をひとつももっていないことになっています。そこで、その証拠となる鉄以降の元素を持たない星を探しています。だけどいまだに発見されていません。しかし金属元素の含有率の少ない星は発見されているので、やがて発見されるだろうということです。そうでしょうか。
 金属元素の少ない星は、主に銀河系を取り巻くハローの中に散在する球状星団の星です。
 銀河系は、本体の渦巻き部分と、それを大きく取り巻く薄いガスからできた球状のハローとその中に散らばる、球状星団が主な構造です。この、ハロー内に散らばる球状星団には、本体の渦巻き部分に比べて、金属元素がすくなくなっているのが観測されています。その理由は、球状星団ができたのが、古いからだといわれています。ビッグバン説から考えると、もっともです。
 しかし、本当にそうでしょうか。銀河は、ハローと、渦巻き部分と、、球状星団が、一体となった構造をしているのだから、そのそれぞれが、違う時期に別々にできたと考えるのは無理があるように思います。では、どのようにして、これらの構造が出来上がったのか考えてみます。
 最初に、引力と、熱のアンバランスから、ガスが収縮して大きなガスの塊ができます。このガスが収縮していく過程で回転を始めます。すると、中心に重い物質が沈んで行きます。それと同時に、回転の縦方向には、遠心力が働かないので、物質が回転の赤道上におちていき円盤を作ります。この、円盤にも重い元素が速く沈んで行きます。この物質から、銀河の中心、バルジと腕部分ができます。そして、残ったガスが、その周りを取り巻いてハローを作ります。したがって残ったガスは軽いガスが中心になります。このガスから、球状星団ができたら、球状星団は金属元素の少ない星ばかりになります。そして、元素が、同じもの同士で均一に広がろうとする性質があることから、この球状星団も球状星団同士で均一に広がって行きます。そして、引力とつりあったところで、ハローの中に浮かんでいるわけです。
 これはまったくの私論です。根拠はありません。
 バルジや渦巻き部分の星からは、絶えず、恒星風や、電磁波や、ニュートリノがまわりのハローへひろがっているのが観測されています。超新星の爆発で、さまざまな元素もまた、ハローの中に広がっていっています。そしてそれが、勢いや熱を失い、銀河円盤の引力に引き寄せられ落ちていったりしています。ハローも球状星団も、渦巻銀河も、一体となった結合態なのです。
 そして、電磁波やニュートリノはハローを越えて宇宙のかなたへ飛び去ります。ハロー全体のエントロピーも宇宙空間に対して増大していきます。
 宇宙の最初の星はあったとしても、もうみんな爆発して、存在しないのです。だから、百数十億年よりも古い星がないことが、ビッグバンの証拠にはなりえないのです。
厄介な星。ブラックホール
 では、特殊な星はどうでしょう。中性子星とか、ブラックホールです。
 中性子星はすべての原子が、ほとんど中性子に戻った星です。一部は、クオークにまでばらばらになっています。しかし、とても重力が強いので、この星がばらばらになるのは難しそうです。しかし、γ線や、ニュートリノを宇宙空間に放出しているので、エントロピーの増大の過程の中にあることは確かです。
 この星がもしばらばらになると、中性子はベーター崩壊し、陽子と電子と反ニュートリノに壊れてしまいます。元の宇宙のガスに戻ってしまいます。
 ブラックホールは、中身は不明です。
 相対論にいわれている状態のブラックホールがあるかどうかも不明です。ほかの相対論の予言と同じに実際の観測で実証されたわけではありません。
 しかし、相対論のブラックホールもやがては蒸発するという意見もあります。
 ブラックホールや、中性子星は、周りとの差が大きすぎます。大きな星ほど寿命が短く、あっという間に燃え尽き爆発するのは、周りとの差が大きすぎるからです。氷水の中に熱いやかんを入れると、あっという間にさめるのと同じ原理です。
 これから考えると、ブラックホールと名づけられた非常に密度の高い星も、永遠にブラックホールでいるわけにはいかないのではないでしょうか。周りとの温度差や、密度差が宇宙一大きいのだから、あっという間に熱は発散し、物質はばらばらになるでしょう。ブラックホールのあるあたりでは強烈なγ線やニュートリノが観測されています。相対論ではγ線もブラックホールの外には出られないというけれど、相対論は美しすぎて現実には影響が現れないということを考えると、γ線やニュートリノも十分外に出てきます(ちょっと乱暴な意見過ぎるかな)。ブラックホールの周りで、γ線やニュートリノや磁力線が観測されており、それがとてつもなく強烈なのは何よりの証拠でしょう。
 それは、ブラックホールから出ているのではなく、その回りのガスがブラックホールの強い重力のために出しているのだと相対論ではいいます。でも、それは理論から推論しただけで、観測された事実からでてきたことではありません。
 エントロピーの増大は全てのエネルギーと物質に共通の性質なのだから、これらの特別に見える星にも共通しているはずです。
 そして、あらゆる星は、元のガスに戻るのです。宇宙は永遠にこれを繰り返しているのです。
磁気モノポール問題
 磁石のS極N極の問題です。磁石はどんなに切っても端にS極とN極ができます。ところが、ビッグバンの時には、この二つがばらばらになって、S極だけ、N極だけというものができたはずだといいます。これを磁気モノポール(単極子)というそうです。これが現在もいっぱいあるはずなのにひとつも見つからないというので困っているそうです。
@ どこから出てきた問題なのか
 これも相対論から出てきた問題だそうです。
 自然界は重力、電磁気力、強い力、弱い力の4つの力があることになっています。
 ビッグバンが起こったとき、この4つの力はひとつだったと相対論では考えます。それが、宇宙の温度が下がるにつれて、分化し4つの力になったというのです。
 そのとき、宇宙には、磁気モノポールがたくさんできたというのです。それが、現在も宇宙に残っているはずだというのです。
A 考察 
 これも、相対論の美しい方程式の中には存在するが、現実には観測されないという相対論の特徴の現れのひとつでしょう。
 同じようなことで「陽子崩壊」という問題があります。
 これもやはり、相対論で存在が予言されたことです。陽子も崩壊するというのです。
 そこで、この崩壊を検出しようというので作られたのが、あの有名な「カミオカンデ」です。しかし、いくらがんばっても相対論の予言と違って、ひとつも陽子崩壊は観測されませんでした。仕方ないので、ニュートリノ観測に切り替えたら、とたんにあの快挙です。ノーベル賞がすっ飛んできたというわけです。
 相対論を信じて、陽子の観測を続けていたら、「カミオカンデ」は予算がなくなって今もとの廃鉱になっていたでしょう。
 でも、この陽子崩壊が発見されなかったということは、本当は、ニュートリノ発見に匹敵するかそれ以上の発見だったはずなのです。なんといったって、世界中の一流の科学者が信じて疑わない、「アインシュタイン氏の相対論」が間違っているという観測結果が出たのですから。でも、現実は、アインシュタイン氏の相対論はとてもすばらしいから、観測のほうが間違っているということになったようです。
 相対論のすばらしき予言は、あまりにも美しすぎて、現実世界で観測するのはとても難しいことなのです。観測できたらそれは奇跡に近いことなのです。神の腕を持った人のみその栄光に預かれるのです。だから、陽子崩壊が観測できなかったからといって絶望のふちに落ち込むことはないのです。それは本当に難しい観測なのですから。もちろん、モノポールも、重力波も、観測されないからといって、それは観測者が悪いのではないのです。それは時代の科学の限界なのです。
 え!相対論が間違っているって。それは、神を知らぬ不届き者か、はたまた、なにも知らぬ痴れ者の言うjことだ。「王様は裸だ。」などとたわけたことをいっても許されるのは子供くらいだということです。 
考察
 もし、ビッグバンがなくて、もっと古くから宇宙があったとしたら、どれもたいした問題じゃなくなるはずです。観測機器が進歩すれば、すぐに137億光年などといわずに、200億光年先の銀河も見つけられるでしょう。(ビッグバンよりはるかに古い銀河です。)
 しかし、それは永遠の昔から存在していた銀河ではありません。たとえば、今から150年前の世界にいた十億の人間は今はみんないません。全部死んでいす。今から150年後、今生きている人は誰もいません。全て新しい人間になっています。それと同じです。銀河もおそらく数百億年くらいでばらばらになり、宇宙の闇に飲み込まれていくでしょう。そしてまたどこかで新しい銀河が生まれます。もちろん人間や、多くの自然現象と同じように一斉にではなく、少しずつ交代しながらです。で、ある時間が過ぎると、もうすっかり違う銀河ばかりになっているというわけです。
 一度、あなたの母校の小学校とか中学校をのぞいて見るといいですよ。同じように子供たちが勉強しています。しかしみんな知らない子達ばかりですから。そんなの当たり前ですよね。
 そう、宇宙だって、神の一撃がなければ存在できないような宇宙ではなく、当たり前のことばかりで構成されているはずです。
 そうやって宇宙はずっとずっと続いていくのではないでしょうか。
 
2003年12月12日 並刻記 

  宇宙考あとがき
  アインシュタインリングは重力のせい
  宇宙論目次