空間てなあに

著者 高田敞
 ビッグバン宇宙の「空間」は、普通に使われている、隙間とか間とかいう意味とはかなり違う意味があるようです。
 

これを説明するのに、ある人は風船を例に取り上げて、上手に説明していますので、少し借用します。
まず風船に小さな渦巻きをいっぱい書きます。この渦巻きを銀河とします。点々で渦巻きを描くと、一つ一つの点が星になります。渦巻きと渦巻きの間が銀河と銀河の間になり、点と点の間が星と星の間になります。ふつう私たちはこの何もないところを宇宙空間と言っています。月を見て、私たちは宇宙空間とはいいません。
 そしてこの風船を膨らまします。そうすると、渦巻きと渦巻きの間が離れて行きます。これが宇宙膨張だという説明でした。空間の膨張によって、銀河が離れていく仕組みだそうです。
 この説明では、このとき、風船の中に入っていく空気に当たるものがどうも「空間」ということみたいです。したがって、私たちが普通に考える宇宙空間と、空間が膨張するというときの空間は似て非なるものみたいです。
 風船の場合は、これでうまく説明ができます。宇宙が、風船の表面になり、2次元の宇宙になり、空間が後ひとつの次元に入り、立体、3次元の世界ができるからです。
 しかし、現実の宇宙は、もとから3次元だから、この普通の世界の縦横高さの全てをもう使ってしまっています。だから、風船の空気が入る部分がもう存在しないのです。したがって、膨張宇宙を支える空間が入るところがないわけです。
 しかし、ビッグバン宇宙では、空間が膨張することで、宇宙が膨張していることになっているので、どうしても空間が必要です。そこで、乾しぶどうパンを考え出した人がいます。パンが宇宙です。乾しぶどうが星、あるいは銀河です。パンが膨らむと、乾しぶどう同士が離れて行きます。それが宇宙空間の膨張だというのです。
 この場合の宇宙空間は、パン生地の部分になります。星ぶどうは宇宙空間にはなりません。パン生地は膨らむけれど、乾しぶどうは膨らまないからです。
 これは、実際の宇宙膨張といわれているものによく似ています。
 宇宙誕生から数十万年後、出来立ての空間に物質ができます。これが、空間膨張に乗って広がりながら星や銀河になります。そのあとは、銀河の間だけ膨張して、銀河同士が離れて行きます。
このときの空間は銀河と銀河の間になります。銀河という物質のあるところは膨張していません。 
 どうも、このときにちょっとした混同が起こっているのじゃないかと思われる節があります。それは、空間には今書いたように2種類あるのに、言葉がひとつしかないことから起こる認識の混同です。
 最初にあった空間と、星と星の間の空間とを同じものだとしてしまう混同です。違いは何かというと、最初の空間には、星も、星と星の間も、全てが空間の一部として含まれます。隙間ではないわけです。物が占有している場所も空間なわけです。でも、もうひとつの空間は、星と星の間だけが空間になります。星や星の内部は含まれません。
 実際に、この違いが現れるのは、最初に借用した、風船の話です。この本の説明では、風船を膨らませると、渦巻きの絵と渦巻きの絵どうしは離れるけれど、渦巻き自体、あるいは、点々自体は、大きくなりません。でも、実際に風船を膨らませると、渦巻きも大きくなるし、点々もそれ自体が大きくなって、点から円になっていきます。
 これを宇宙に当てはめると、空間が膨張すると、星自体も大きく膨張していくことになります。
 しかし、それでは現実の宇宙と合わなくなってしまうので、広がるのは銀河と銀河の間だけということにしてしまいます。風船では、渦巻きの絵と渦巻きの絵の間だけ伸びることになります。このときの空間は、星と星の間ということになります。
 星同士の間や、近い銀河同士が空間膨張によって離れていかないのは、引力が空間膨張に勝ったためであると説明されていますがそうすると矛盾だらけの宇宙になってしまうということは以前に書きました。この矛盾に気がつかないのは、無意識に、空間は何もないところという意識があるためでしょう。あるいは、その意識をうまく使ってごまかそうとしているんでしょう。
 そこで、この最初の、アインシュタインのいう空間とは何なのだろうということを次に考えてみます。
空間七不思議の蛇足
雑談目次
アインシュタイン空間は絵空事