空間七不思議の蛇足
著者 高田敞
[みんな手に手を取って]
銀河同士は離れていくことができるのかを考えます。
最初にアンドロメダ銀河から考えていきます。
 この銀河は銀河系から230万光年先にあります。銀河系の1〜2倍ほどある大きな銀河で、銀河系やその他の数十個の銀河と一緒になって局部銀河群を作っています。今のところその中で一番大きな銀河です。
 宇宙膨張から考えると、アンドロメダ銀河は銀河系から離れていくはずです。そのスピードがどれくらいかというとハッブル定数を100とすると100×2.3=230となります。すなわち秒速230キロメートルで離れていかなければならないわけです。ハッブル定数を70としても、161キロです。
 ところが、アンドロメダ銀河は秒速200キロメートルほどで銀河系に近づいてきているという観測結果があります。本によって、数値(50キロメートルというのもあります)はかなり違いますが、接近しているというのは共通しています。
 この矛盾の説明は、宇宙全体では膨張しているのだが、それぞれの銀河内部や、近い銀河同士など、部分部分では、その重力が、宇宙が膨張する力に打ち勝ち、それぞれ固有運動をしているということだそうです。(なぜか、距離や速度を、複数の手段で誤差も少なく測定できるところでは宇宙は膨張はせずに、観測手段が赤方偏移くらいで、誤差も大きいところでは膨張しています。というのはかんぐりすぎかな。)
 そこで考えます。銀河団の中では、銀河同士の平均距離は、130万光年だそうです。230万光年の距離でさえ、膨張の力を振り切って、反対にそれと同じスピードで接近するのだから、平均130万光年だと、空間膨張の力は完全に無視されて、すべての銀河は銀河同士の重力で動いていくことになります。これは銀河団の観測結果からも明らかです。銀河団内の銀河は、お互いの重力で手に手を取り合って動いているそうです。
 では、それ以上大きな範囲ではどうなるでしょう。
 銀河系を含む局部銀河団は秒速250キロメートルでおとめ座銀河団のほうに引っ張られているそうです。それと一緒に、海ヘビーケンタウルス座超銀河団にも引っ張られているそうです。そして、1億5000万光年離れたところにあるらしいグレートアトラクターというところにそれらすべてが引っ張られているらしいのです。もちろん、グレートアトラクターを否定する意見もあります。見つかっていないのだし、そこまでいくと誤差がとても大きい世界だから。それでも、銀河団同士も引っ張り合っているというのは事実のようです。これは、引力は宇宙の果てまで届くという理論からも、うなずける観測結果です。
 銀河は次から次へと連なっています。銀河団も次々に連なっています。そして、それらが超銀河団を形成しているといいます。そしてもっと大きい構造が発見されています。それぞれが固有の力で結びついて運動しています。
 子供が30人いますそれぞれが手をつないで横一列になります。端と端の子はその二人だけを見ると遠く離れているけれど、遠ざかることはできません。みんな手をつなぎ合っているから当然です。局部銀河団は30ほどの銀河で構成されています。端と端が数百万光年離れていても、引力で次から次に結ばれているので、この子供の例からわかるように、離れていくわけにはいきません。では、銀河団の外はどうでしょう。
 子供を考えます。やはり手をつないでいる隣のグループと手をつなぎあいます。するとグループ同士もまた遠ざかることができません。どこかで手が離れない限り。
 銀河は次々に連なっているのが観測されています。それぞれが、お互い引力でがっちりつながっているようです。地球から、1億光年離れていても、その間の銀河が、しっかり手をつなぎあっているのだから、上の端と端の子供と同じで、離れていくわけには行かないはずです。
 どこかに銀河同士、あるいは、銀河団同士の距離が開いて、膨張の力が引力を上回るところがあるのかもしれません。何箇所かのそういうところが膨張して銀河が広がっているのかもしれませんが、そうすると宇宙の膨張はとてもアンバランスになってしまいます。
 そして、こんな不都合も起こります。
 70億年前だと、宇宙は約半分の大きさになります。すると距離も半分に縮まります。この70億年の間に膨張していたのは、現在、距離の大きいところだけです。現在、近いところは70億年前からずっと引力という手をつなぎあっていて膨張していないので昔と同じ距離です。距離の大きいところだけが今の半分だったことになります。するとそこは70億年前には、膨張していないほかのところよりも距離が近くなります。すると、そこは膨張できません。すると銀河間はどこも膨張できないことになるはずです。
 このことから考えられるのは、銀河は常にがっちり引力で引き合っていて膨張せず、空間だけが膨張しているということか、あるいは宇宙は膨張していないということかです。ということは、少なくとも、星や、銀河の物質宇宙は膨張していないということがいえます。
 03年11月28日 並刻記

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