空間不思議の5
著者 高田敞
空間のゆがみはなぜ検出されないか
 先にも書いたように、引力のあるなしによって、あるいは強弱によって、空間の広がり方が違うということになると、空間はめちゃくちゃゆがんだ空間になってしまうだろう。
 最新の観測によっても宇宙空間は、限りなく平坦であるという結果が出ている。検出のしようがないのか、それともゆがみがないのか。  
 たとえば、宇宙の晴れ上がりのときにできた、陽子や電子や分子は、おそらくそのときの大きさを保ったまま今日まで来ていると思われる(空間と一緒に広がらないらしい)。するとそれらが占有している空間もまたそのときの大きさのままで今日まで来ていると思われる。そしてその周りの空間もある程度はその物質の力で広がれないままでいるだろう。そして、物質から離れるにしたがって引きつける力が弱まるから、徐々に空間が広がりだし、物質から遠くはなれたところでは、空間は思いっきり広がっていくだろう。(重力によって空間はゆがむというのはアインシュタインが言っている。)
 宇宙の始まりから広がり続けた空間と、宇宙の晴れ上がりからこっち、ひとつも膨張しなかった空間と、引きつける重力の違いによって、その間のさまざまな値を取るだろう空間の膨張率は実際の空間にどのような現象をとらせるのだろう。もし、重力レンズというものがあって、空間が引力で曲がったことで光が曲がるならば、この宇宙空間の膨張の差で、光はさまざまに折れ曲がるだろう。
 宇宙にはさまざまな物質がめちゃくちゃある。星や銀河や、分子雲や、それにもなれない、電子や陽子や、あるいはニュートリノや。それらがさまざまに空間の膨張を妨げたら、宇宙空間はめちゃくちゃ捻じ曲がりそうなんだけど、どうなんだろう。どうしてそれは観測されないんだろう。空間は引力に関係なく広がったか、もともとからあったかだからじゃないのだろうか。それとも、空間なんてもともとなかったりして。 
 それに、ブラックホールはどうするのだろう。重力に影響を受ける空間なら、その曲がりは極限を超えて、空間自体がブラックホールに吸い込まれないのかしら。そうしたら、銀河の中心にはかなりの確立でブラックホールがあるらしいというし。超新星の爆発でもできるというし。宇宙全体に、何千億か何兆個あるか分からないブラックホールに、空間はどんどん吸い込まれて、いずればらばらにされ、空間は宇宙から消えてしまったりして。
 そのときは星も、銀河も物質も吸い込まれるかというと、物質は案外粘り強くて、ブラックホールに吸い込まれそうになると、その巨大な重力を逆手にとって、巨大な位置エネルギーを回転力に変えて、吸い込まれないように粘ったりしてるみたいだから。ブラックホールもそこはしたたかで、その回転エネルギーをジェットにして吹き飛ばすことで、相手を弱らせ物質を吸い込むみたいだけど、その吹き飛ばされるジェットが物質でできているから、物質はやすやすとブラックホールの魔の手から逃れ出て宇宙に戻るというわけです。残った物質も、ブラックホールと均衡状態になって(どの銀河にも、中心にブラックホールがあるらしいのに、銀河は吸い込まれない。また、地球が太陽になかなか落っこちないように。月なんか地球から離れて行ってるんだから。)、ぐるぐる回っていたり、ブラックホールからの強烈な電磁波で吹き飛ばされたりして、これでなかなかブラックホールの中に吸い込まれるとはいかないみたい。
 これに対して、空間は質量がないから位置エネルギーを持つことができない。だから、ブラックホールの巨大な重力を回転力に変えることができないから遠心力でとどまることもできないし、そのエネルギーがないから、ジェットとなって噴出すこともできないし、その上、電磁波に影響されないから、ブラックホール周辺から飛び出す電磁波が如何に強力でも、空間をジェットとして宇宙空間へ吹き飛ばすこともできない。だから、空間が重力の影響を受けるなら無抵抗にブラックホールに吸い込まれてしまいそう。
 ということは、宇宙は空間が早く消滅して、物質だけがあとに残ってしまいそう。
 ま、空間なんてどうせ言葉上の存在でなんにもないんだから、なくなってもなくならなくってもどうせ何にもないんだから、同じことだろうけど。
 空間ができて、空間が膨張して、なんて、誰が考えたのか知らないけど、矛盾だらけじゃないのかな。もし、ビッグバン説の説明に都合がいいからだけじゃ、話にならないと思うのだけど。(「ビッグバン七不思議」を参照)
03年11月9日 並刻記

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