ダークマターのあとがき    著者 高田敞
 観測された事実(銀河や銀河団の動き)に必要なダークマターは以上のとおりです。ビッグバン説に必要なダークマターは不明です。どんなものが出てきても今のところビッグバン理論を満たすことはできないでしょう。なぜなら、ビッグバン説そのものが変だからです。ビッグバン説で、宇宙を説明しようとすると、これからもますます荒唐無稽な理屈がうじゃうじゃ出てくる必要があるでしょう。
 ついでに、宇宙全体では、見えている物質より見えていない物質のほうがたくさんあるというのはそうだと思います。そしてその一部は見えています。でもそれが見えていることになったら、ビッグバン説の根底が崩れてしまうから見えていないことになっているのです。
 何だと思いますか。背景放射です。もちろん嘲笑うでしょう。でもこれが、宇宙の温度で、宇宙全体に散らばっている炭素の出す光だというのは、「ビッグバン七不思議」でも書いたようにビッグバン説の出る前は主流だったんです。これがビッグバンの光になったために宇宙から主要な物質が消えたわけです。
 炭素のあるところではその数十倍で、水素もあるはずです。星や銀河などが占める空間より、星間物質の占める空間のほうがはるかに大きいので、如何に薄くとも星間物質の量が星などの量よりはるかに多くなるのは不思議ではありません。
 また、これがあれば、遠い銀河ほど赤方偏移することも説明がつくのは、以前にも述べました。
 では、なぜこのガスは、銀河や星などの引力に引き寄せられずに、宇宙に散らばっているのでしょう。それどころか、背景放射(ここでは星間物質の光と考えます)は、ほとんど平坦で、揺らぎはないに等しいという観測結果さえ出ています。 なぜでしょう。
 これは、エントロピーの増大から来るのだと思います。エントロピーの増大の実験はご存知のように、真空の箱にガスを入れると、ガスが一様に広がるという実験です。基本原理は、エネルギーは常に低いほうに流れるということです。
 これと同じことが宇宙という箱でも起きていると考えると、宇宙全体のガスが、一様に広がっていることのつじつまが合うように思われます。エントロピーの増大の力と引力の力の均衡が破れると、物質が集まり、濃い分子雲や、銀河や、星が誕生します。でも、エネルギーが集まると、エネルギーの落差が大きくなりエネルギーのほうが強くなり周りに拡散していきます。星は、常に電磁波や、恒星風やニュートリノなどといったもので、そのエネルギーを回りに拡散していきます。そして最後に、爆発して、宇宙空間に広がっていきます。エントロピーの増大です。
 広大な宇宙空間では、星などは、箱の中のガス分子より小さな比率しか占めていません。宇宙の大構造などといっても、ほんのかすかな揺らぎです。
 たとえば、ランダムな動きをしているのにつぶれない巨大な楕円銀河も、回転していないのにつぶれない球状星団も、中心に巨大なブラックホールがあるというのにいつまでも巻き込まれない渦巻銀河も、巨大分子ガスに収縮してせっかくたくさんの星を作ったのに、そのとたんばらばらに飛び散っていく散開星団もみんなこのエントロピーの増大の力と引力の力関係です。そして、ニュートンの見つけた万有引力は宇宙に10万分の1の漣を立てているというわけです。

03年11月29日並刻記
これでダークマターは終わりです。次は重力レンズです。乞うご期待!
重力レンズのはてな!の序
ダークマター 銀河の周りを探す
宇宙考目次