真犯人(ほし)をあげろ   著者 高田敞
 銀河の中を探す
 オールトという人の銀河を回転する星星の上下運動の発見が、ダークマター発見の発端だそうです。ということは、まずここから探すのが筋というものでしょう。第一発見現場というわけです。
 今のところダークマターは見えないとされているので、あるだろうと推測されるのに見えないものがないか探して見ます。ひょっとしたらその中にダークマターがあるかも知れないですから。
A [ 星 ]
a  恒星
 これはよく観測されていて、ほとんど見えているのでもちろん犯人(ほし)ではない。
b  褐色矮星・ブラックホール {候補1}
 これは数が足りないようです。もしあるなら、現在の、ハッブル望遠鏡や、巨大な望遠鏡にもっとたくさん映ってくるはずだそうです。ところが写らないということは、本当にないということみたいです。ないものは候補にはなれません。 
c  惑星 {候補2} 
 最近、たくさんの星で惑星が発見されています。星が誕生するときは、ガス円盤ができることが観測されているので、どの恒星にも惑星ができる可能性があるらしいです。
 ベックウィズという人たちの観測ではこのガス円盤は、平均して中心星の100分の1の質量があるそうです。惑星になるのはその10分の1くらいだそうです。ということは、どの星にも惑星が存在したとしても「10倍の質量」どころか1000分の1の質量しかありません。これではとても無理です。でも、惑星は今のところ直接見えません。星の1000分の1の質量があるとすると、ダークマターにほんの少しだけど貢献できるかも知れません。
d  問題点 
 銀河の回転の観測結果から、なぞの質量は、銀河の星の見える範囲の5倍を超えて広がっている必要があるらしいです。見えている銀河の直径の5倍以上の大きさの銀河になるということです。そして、それは、銀河の星がなくなった外でかえって質量が増えていく必要があるそうです。
 上記の、褐色矮星や惑星は、星の仲間だから、恒星の見える範囲の外には存在しないか、あるとしてもほんの少しだと考えるのが妥当でしょう。ということは、これらは、銀河の回転に影響を与えるダークマターにはなりえないということです。
B  星間ガス
 円盤状の銀河には10パーセントほどの星間ガスが含まれているのが観測されています。
 星間ガスは、星のある範囲の5倍ほどまで広がっているのが観測されています。
 その範囲より外は、ガスが薄くなるために光(電磁波)が弱く、観測できないがガスはもっと遠くまで広がっているようです。
ガスは本当に10パーセントほどしかないか?
a  恒星の誕生から
 恒星は、星間ガスの収縮でできることがわかっています。そのとき、ガスの10パーセントほどが星になり、その他はできた星の磁力や光により吹き飛ばされるそうです。
@  わし星雲(暗黒星雲)
 重い星からの紫外線でガスが電離され、プラズマになり蒸発している。
A  オリオン星雲
 誕生したばかりの100ほどの星の、紫外線や、粒子のシャワーによって、ガスが吹き飛ばされている。おたまじゃくし構造となって観測されている。
B  星 XTEJ1550-54
 星は生まれるとき必ずジェットを噴出す。この星では、そのジェットが星間ガスとぶつかり、最初光速近かった速度が4年でかなり減速されている。このほかにもジェットが星間ガスを輝かせているものは数多く観測されている。(オリオン星雲中のいくつかの原始星円盤・ケフェウス座の双極状星雲等)
b  恒星の死から
 星の中には、最後に超新星となって巨大な爆発をするものがあります。
@  りゅうこつ座のカリーナ星雲
 過去の数十個の超新星により、「スーパーシェル」と呼ばれる濃いガス雲が見られます。この中で数百個の星が生まれていることが観測されています。
 数十個の星から数百個の星になる。星だけでも十倍になっている。このほかにも星雲として見えてるガスが膨大にある。これは超新星起因の物質より、もともとあった星間ガスのほうが数十倍多いということの証である。
A  惑星状星雲
 太陽程度の質量の星の最後は、ガスを宇宙空間に吐き出します。そのような状態の星を惑星状星雲といいます。
(らせん星雲) 
 星から放出されたリング状のガスが見られる。その内側に、おたまじゃくしのような構造が無数に見られる。その一つ一つが太陽系の2倍ほどあるという。ひとつの星が爆発すると、それまで見えなかったおびただしい量のガスが見えだすということです。このおたまじゃくし現象は、このほかにも「爆発」や「風」が吹いているところで観測されるそうです。
(リング星雲・アレイ星雲等)
 上記とともに、ガスのリングが観測されている。これらは、やがて、薄れて、宇宙空間に消えていく。これは見えなくなるのであって、なくなるわけではない。
c  考察
 このように宇宙空間はガスに満ち溢れていると思われます。そのガスは、温度が下がり、拡散すると観測網に引っかからなくなるようです。見えないガスが大量に存在するということです。
 星の爆発で、元の星の10倍近くの星が生まれるということは、星間ガスが、星の10倍以上あるということの証でしょう。
C  星間ガスの分布 
 銀河面に、厚さ300光年ほどに薄く分布している。中性水素ガスや、分子ガスからなっています。
a 分子ガス
 水素ガスが主成分で、分子雲を形成し、暗黒星雲になる。銀河中心部分に厚く分布する領域がある。このガスから星が形成される。一酸化炭素の光で観測されています。なぜ、直接水素ガスを見ないかというと、低温の水素分子の観測は、とても難しいそうです。見えないガスです。
b  中性水素ガス
 300光年の厚さで円盤状に分布し渦巻き構造を作っているそうです。
 注目すべきてんは、中性水素は、銀河系の星の見える領域を過ぎたところに多く観測されることです。そして薄れながら、電波で観測できない点よりもさらに周辺部まで広がっているらしいことです。このガスは、銀河の数倍から、数十倍まで広がっているという観測さえあります。これも、観測が難しく、少し薄くなるとすぐ見えなくなります。
 子供の頃学校で、水の電気分解というのを見ました。酸素と水素ができて、試験管の中に溜まっているということでした。でも、水素や酸素そのものは透明で見ることはできませんでした。目の前でさえそうなんです。これが遠い宇宙空間にはるかに薄く広がっているとしたら、見えなくて当然でしょう。
 これはダークマターの質量分布と酷似しています。ガスが薄れていっても、体積だから、距離の3乗倍づつ体積が増えていくとしたら、ガスの質量がダークマターの質量の増え方に一致することは十分考えられます。
冤罪を晴らす
なぞなぞ
近くにはひとつもないが、遠くにはいっぱいあるもの
答え
ダークマター
考察
 先日、ダークマターの発見ということで、銀河団を中心にした、ダークマターの分布図が発表されていた。星の光が、ダークマ ターの重力によって屈折(私はたんに水素による屈折と思うのですが)現象を起こしていることから見つけたということです。かなり遠い銀河団です。
 このことを考えてみます。これはかなり遠くて、観測したことが本当に未知の物質でできたものであるのかはわかりません。中性水素ガスである可能性も十分あるのです。
 そこで、太陽系について考えてみます。
 ビッグバン理論では、宇宙の構造ができるとき、重力を持ったダークマターが中心になったということです。銀河系も、ダークマターが大きな重力源にになって普通の物質を集めたということです。そのために早い段階で銀河が出来上がったというのです。
 このことから考えると、天の川銀河系にもダークマターは存在しなくてはなりません。ということは、その内部にある太陽系にもなくてはなりません。ア 太陽系に謎の物質は存在するか。
 ダークマターは最新の研究では、普通の物質の6倍程度あるということです。すると、太陽系にも、太陽の6倍以上のダークマターがなくてはなりません。これは存在するでしょうか。見えない物質だから観測できないといえます。しかし、重力はあるということですから、これで考えてみます。太陽系には太陽とそのほかの物質以外の重力源は存在していません。惑星の軌道は太陽と惑星の引力だけで計算したのとぴったり合っています。とても、あと太陽が6個分もの引力源があるとは考えられません。このことから、少なくとも太陽系にはダークマターは存在しないということがいえます。で星間ガスはあるのかというと、水素を基にしたものがあります。6倍あるかというとそれほどはありません。これは、星は、星間物質を、吹き飛ばすということから考えると、薄いということは説明がつきます。少なくとも水素のガスはあるということですから、ぜんぜんない未知の物質とは違います。こちらのほうが候補です。また、水素ガスの分布は上に書いたように、銀河の外にまで大量に存在するということから、太陽系の中で薄くても、銀河回転のために必要な未知の質量になります。
イ 銀河系にダークマターはあるか
 銀河の中にはまだ未知の物質は発見されていません。銀河系の回転は先ほど述べたように、見えなくなる外にも、広がっている水素を中心としたガスで説明がつきます。未知の物質はありません。
 このことから、近くで観測が正確なところには存在しないけれど、遠くて観測が不正確か、何物か確認できないところには存在するということがいえます。これは火星の運河と同じものではないでしょうか。観測機器の限界近くのところでは、見えないものが見えたりするようです。あるいは、でっち上げても反論をするだけの資料がまたそろわないということでもあります。
ウ ダークマターは銀河を造れるか
 宇宙の構造ができるとき、重力を持ったダークマターが中心になったということです。そこで、ダークマターの性質から、それが可能であるか考えてみます。
 物質AとBが離れて宇宙空間に浮かんでいるとします。この物質は、引力(重力)で引き合ってぶつかります。そして、跳ね返ります。このとき、引力による位置エネルギーが、運動エネルギーに変化し、衝突して、反作用が起こり、離れていきます。しかし、このとき引力がそれを引きとめ、やがて止まります。そして、また引き合ってぶつかります。エネルギーの損失がない場合は、必ず二つの物質は元の距離まで離れます。そして際限なく同じことを繰り返します。
  このとき普通の物質と、ダークマターは違った結果になります。
 普通の物質はぶつかると運動エネルギーの一部が熱エネルギーに変化します。この熱エネルギーは輻射によって、宇宙空間に放出されます。その結果AとBは元の距離より放出されたエネルギー分短くなります。宇宙空間の普通の分子は、放出される熱エネルギーのために収縮し、分子雲になったり、星になったり、銀河になったり、あるいは大構造ができたりしていくのです。
 ところが、ダークマターは、光を出さないということです。したがって、輻射によって運動エネルギーを放出できないということです。したがって、エネルギーの損失がありません。すると、ふたつの物質は、衝突しても必ずもとの距離まで離れてしまいます。これは無数のダークマター粒子があっても同じ結果になります。したがって、ダークマターは、収縮することができません。分子雲のようになったりはできないわけです。すると、宇宙に拡散しているだけで、重力の種にはなることができなくなります。宇宙の構造の中心にはなれないということです。もちろん銀河を造ることはできません。
 先ほど書いた、銀河団を中心にした、ダークマターの分布図のように、収縮して塊にはなれないはずなのです。
 もちろん輻射以外の何らかの方法で、位置エネルギーを減らすことができればこの限りではありません。まあ、不思議な未知の物質ですから未知の方法でエネルギーを減らすこともできるのかも知れませんが。
D  結論
 星間ガスがビッグバン論に必要な宇宙全体のダークマターに見合うだけあるかというと、これでは足りないだろうが、銀河系、あるいは銀河に限っていえば、この中性水素ガスが犯人としてはかなり濃厚な気がするのだがどうでしょう。宇宙の物質の中で群を抜いて多く、集まってはいたるところで星を作っているくせに、希薄になるとほとんど観測できなくなることを考えると、銀河のダークマターに限っていえば、ほぼ、犯人は水素のガスだといえるのではないでしょうか。
 もんだいは、それではあまりにありふれすぎているということでしょう。ダークマターは、ブラックホールと同じように、何かおどろおどろしく、不気味な存在でなければならないのに、答えが水素では、あまりに普通すぎて笑い話にもなりませんからね。
 03年11月24日並刻記
「(2)銀河の外を探す」に続く 
ダークマターてなあに
銀河の周りを探す
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