ダークマターってなあに     著者 高田敞 
 一応ダークマターについてそこらの本に書いてあることから説明します。
 これは、宇宙にある正体不明の物質だそうです。星や、分子雲や、中性水素ガスなど宇宙に見えている物質と違って、電磁波は出さない、物とは反応しない、光とも反応しない、だから、今のところ人間が見つけようがない、なんだか得体の知れない物質だそうです。だからダークマターとついたらしいけど、どちらかというと、暗黒というより、透明物質というほうがあたっているようです。それもただの透明ではなく完全に光とさえ反応しない透明です。普通の透明は光を曲げるのであっさり見えるのです。ダイヤモンドもガラスも水も空気も、透明だけど、光が通過すると、その光を曲げてしまうので存在が分かってしまうのです。だからただの透明ではだめなわけです。
 で、この得体の知れない物質が、この宇宙に星や分子雲や暗黒星雲を足した質量の10倍はあるだろうというのです。いや、100倍はあるだろうという人さえいます。見えるものより、見えない物のほうがはるかに多いというのですからこれは不思議です。しかもそれが得体の知れないものだというのですから。
 これとよく似たものは昔もありました。それはエーテルと名づけられ、この宇宙に満ちていると考えられていました。かの有名なアインシュタイン氏がこれを否定するまで、世のすべての宇宙学者たちはその存在を信じて疑いませんでした。
 奇しくも、そのアインシュタイン氏の相対論から考え出された宇宙が、やはり未発見の新物質が宇宙に満ちているというのですから面白いことです。
 あなたの隣にも、見えない何者かが座っているかもしれませんよ。
分かっていること
 ダークマターには重力があることが分かっています。それだけです。そのほかのことは何も分かっていません。だから、もちろん透明か、真っ黒かも分かりません。
 ということは、質量のある物質っぽいです。それなら、今の科学で見つけられそうな気もするのだけどそれがなぜかだめなんですね。
 あると分かった理由
 そんな得体の知れないものがどうしてあると分かったかというと、大きく分けて、二つの理由があるようです。ひとつは観測結果から、もうひとつは、ビッグバン理論からです。
A  観測結果から
 銀河の回転運動から計算すると、見えている星や星間ガスだけではとても質量が足りないことが判明したのです。あと10倍くらい質量がないと観測どおりに銀河が回転しないことが分かったのです。
 もうひとつ、銀河の集団である銀河団の運動を計算しても、見えている星や分子雲の10倍から30倍の質量が必要だということが出てきたのです。
 まあ、銀河にあと10倍の質量があれば、その集まりである銀河団にも10倍以上の質量があることになるのは当然の結果です。それが、それぞれの運動を計算したことから出てきたことは、ダークマターが観測されている物質の10倍から、30倍ほどあるということが確かであるということなのでしょう。
 この、銀河や、銀河団の運動に必要なのに、見つからないものはミッシングマス(失われた大量のもの)と言われていました。それが、後にダークマターと改名されることになるわけです。そして、改名されたとたんに脚光を浴びるわけです。物理学の世界でも、中身より看板なんですね。
B  ビッグバン理論から
 ビッグバンから130億年で現在の宇宙の構造(銀河団、超銀河団、泡構造、グレートウォール等)ができるためには、あと100倍ほどの未知の物質の大きな揺らぎがないと困るということから、その未知の物質をダークマターと名づけたそうです。
 宇宙背景放射は、ほとんど平坦で(ビッグバン理論と一致しているらしい)揺らぎはほんの少しという観測結果が出てビッグバン論者を喜ばせたのもつかの間、あまりにも早い時期にできた銀河や、宇宙のさまざまな構造の発見で、平坦すぎることが今度はビッグバン論者を困らせる結果になってしまったわけです。
 そんなに平坦では、早い時期の銀河も宇宙の構造もできやしないというわけです。そこで、未知の何かがこの宇宙にあって、それが大きな揺らぎをもっていて、今観測できる物質と一緒に膨張してきたと考えればつじつまが合うということになったわけです。それが(1)の観測結果とあいまって観測された物質の100ばいものダークマターが存在するはずということになったわけです。
 こちらの場合は、ビッグバン論が、観測結果と会わなくなったので、つじつまあわせのために考え出された空想の物質です。観測結果に合わせて論を変えようというのではなく、論にあわせて観測結果を変えようというわけです。まあ、論ができて、それにあわせて観測した結果発見されたことはたくさんあるので、それが悪いということではないのですが。
C  ダークマターの候補といわれているもの
 これも二種類あります。ひとつは、既知の物質だけど今の観測技術では見えないもの。もうひとつは今までに発見されていない未知の物質です。
a 既知の物質
暗い星(質量が太陽の100分の1以下)、やブラックホール
ニュートリノ(既知の、ホットな素粒子です)
星間分子
b 未知の物質
ホットな素粒子
コールドな素粒子
D  候補の考察
 aの暗い星は 観測結果及び計算上、数がかなり足りないことがわかってきました。したがって、ダークマターのごく1部にはなりえても、全部にはなりえません。
 aのニュートリノは 質量が発見され、可能性は十分。
 しかし、光速で動くし、他の物質とほとんど相互作用しないため、銀河の回転への貢献度が不明であり、ビッグバン誕生後すぐに銀河ができたことの説明も難しい。ビッグバン論には少し貢献できても、現実の銀河の観測とはあまり一致しないのでかなり問題点を残しているそうです。
 aの星間分子は銀河の観測とは一致しても、ビッグバン論を説明できない。

 はともに発見されていないのでいかんともしがたい。見える物質の10倍から100倍もあるのなら、少しは観測されてもよさそうなものだけど。これは、ここしばらくはたぶんビッグバン論の論文の中にしか存在しないでしょう。ひょっとしたら永久に。    
03年11月18日並刻記

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