X 第4章 ガリレイ座標系 (P24)


1 問題

(地球に硬く結びついた座標系を用いるならば、この系に対して、すべての恒星は一日(天文日)のうちに巨大な円を描くことになり、慣性の法則がいうところと矛盾することになる。したがって、この法則に固執しようとするならば、恒星が相対的に円運動しないような座標系にのみ、恒星たちの運動を基準づけなくてはならない。)

(ガリレイ座標系に対してのみ、ガリレイ-ニュートンの力学の諸法則が通用するのである。)

2 考察

 そのとおりである。前章で書いたように(地球に堅く結びついた座標系)で見ると、恒星は地球を一日で一周することになるから、恒星はことごとく、光速の数億倍の速度で動いていることになります。銀河にいたっては、数兆倍できかない速度で移動していることになります。今、観測されている最遠の銀河は、130億光年ほど離れているといわれています。ならばその銀河は、130億光年×2πの距離を、24時間で移動するので、およそ、光の30兆倍の速度になります。

 また、すべての恒星や、銀河の速度が、地球からの距離に比例するということにもなります。宇宙の中心が地球ということになり、これは明らかに実際の現象と矛盾しています。ここまではアインシュタインの言うとおりです。すなわち、地球表面に硬く結びついた座標系はどれも恒星を回転させるので座標系になれないということです。

 では、彼が(恒星が相対的に円運動しないような座標系にのみ、恒星たちの運動を基準づけなくてはならない。)といっている座標系とはどういうものなのでしょう。

 それは(相対的に慣性の法則があてはまる運動状態をとる座標系を、〈ガリレイの座標系〉と呼ぶ。)とあることから、このガリレイの座標系が、上の条件を満たす座標系といっているようです。

 では、ガリレイの座標系は、恒星の運動を矛盾なく説明できるのでしょうか。ガリレイ座標系は恒星の運動を矛盾なく説明できるかのようにいっていますが、何一つ証明は述べられていません。円運動するのはだめだ、だから、円運動しないものにしようといっているだけです。円運動しなければ大丈夫であるという証明はなされていません。

 そこで、ガリレイ座標系で、恒星たちの運動を見てみることにします。

(1)問題

 ガリレイ座標系で太陽を見るとどうなるか

(2)考察

 宇宙空間を慣性運動〈等速直線運動〉している宇宙船を考えてみます。

 この宇宙船は、ガリレイ座標系です。宇宙船の中は、宇宙船に堅く結びついた座標系ですべて問題なく表されます。前に歩くのも、後ろに歩くのも、横に歩くのも、同じ力で大丈夫です。もちろん、オルガンの音もどちらの方向にも同じように響きます。地球上で暮らす人もこれとほとんど同じです〈地球上は、自転しているのでその影響が現れる。人間の感覚は大雑把なので、それを感じないだけである)

 では宇宙船の窓の外を見て見ましょう。太陽が見えます。太陽は、宇宙船の後方に向かって等速直線運動をしています。地球から見た太陽が、東から西に向かって動いているのと同じ現象です。

 具体的に考えてみます。

ア 太陽に対して、時速10kmで慣性運動をしている宇宙船を想定します。

 この宇宙船に硬く結びついた座標系から見ると、太陽は、時速10kmで等速直線運動をしています。

 このときの太陽の運動エネルギーは{太陽質量×10kmの2乗÷2}になります。

イ 太陽に対して時速1,000kmで慣性運動する宇宙船を想定します。

 この宇宙船に硬く結びついた座標系から見ると、太陽は、時速1,000kmで直線運動をしています。

 このときの太陽の運動エネルギーは{太陽質量×1,000kmの2乗÷2}になります。

 このように、ロケットの慣性系を座標系にすると、太陽の運動エネルギーはころころ変わることになります。太陽の運動エネルギーがこのように変わることは自然現象にはありません。

ウ 次の場合はどうでしょう。

 まず、太陽に対して時速10kmで慣性運動をしていた宇宙船が、太陽を観測して、太陽が時速10kmで動いていることを確認します。その後、エンジンを動かして、速度を上げて、太陽に対して時速1,000kmになったときにエンジンを止めて慣性運動に入ります。すると、上に書いたように、太陽は時速1,000Kmで直線運動をしていると観測できます。

 このとき太陽の運動エネルギーは大幅にアップしています。太陽自体は何の変化もないのに、太陽の運動エネルギーが変化することは、ニュートンの見つけた、エネルギー不変の法則に反します。

 運動エネルギーが変化したのは、ロケットのエンジンによるものです。したがって、ロケットの運動エネルギーだけが変化しているといえます。変化しているのは太陽ではないということです。このことから、ロケットを基準とした、座標で太陽を見ることはできないということです。

 回転運動と、直線運動との違いはあっても、これは天動説です。

 宇宙船に硬く結びついた座標系を基準にすると全宇宙が動くことになります。このことは天動説で懲りたはずなのに、なぜアインシュタインは古典力学を復活させるのでしょう。

 ガリレイ座標系でも、恒星の運動は説明できません。

 

 ウ 2機の宇宙船を想定します

 恒星がだめなら、宇宙船だけにします。何もない宇宙空間で、慣性運動をしている2機の宇宙船がすれ違うと、どちらが動いているか誰にも決められない、というあのうん不動は、相対的であるという証明に使ったロケットです。

・ 考察

  宇宙船Aの質量は60t、Bは40tとします。

 A,Bは相対速度、50km/sですれ違います。

 ともに慣性飛行〈等速直線運動)をしています。

 @ 宇宙船Aに固く結びついた座標系で考えます。

 Aの運動エネルギーは{60×0の2乗÷2=0}となります。答えは0です。動いていないのだからそうなるのは当然です。

 Bの運動エネルギーは{40×50の2乗÷2=50000}となります。

 Bだけが動いているのだから、運動エネルギーっをもっているのはBだけになります。  

 A 宇宙船Bに固く結びついた座標系で考えます。

 Aの運動エネルギーは{60×50の2乗÷2=75000}となります。

 Bの運動エネルギーは{40×0の2乗÷2=0}となります。

@とAを比較してみます。

 AもBも慣性運動をしているのだから、ニュートンの法則からすると運動エネルギーに変化はないはずです。ところが、基準となる座標を変えると、運動エネルギーが変わってしまいます。Aは0から、75000にBは50000から0になっています。また、総エネルギーも、50000から、75000になっています。これはニュートンのエネルギー不変の法則に完全に反します。

 このように、慣性系に硬く結びついた座標系から考えると、本来慣性系の運動エネルギーであるはずのものが0になり、そこから観測されるものの運動エネルギーに変化してしまいます。

 本来、{ロケットの質量×10kmの2乗÷2}であるはずなのに、ロケットを座標系にしたために、ロケットは停止してしまい。ロケットの運動エネルギーは0になってしまいます。慣性運動をしているのに、運動エネルギーは0という矛盾が生じます。そして、先ほど書いたように、本来持っていないはずの運動エネルギーが他のロケットに加わってしまいます。

 

3 結論

 何が間違ったのか。それは慣性運動の範囲を、他の慣性運動をしているものにまで広げたからです。範囲は宇宙船の中だけに限られます。すなわち、同じ慣性運動をしているものだけにしか、適用できないのです。だから、ロケットの慣性運動と無関係の太陽や、他のロケットには適用できないのです。それに適用したところに矛盾が生じる原因があるのです。

 だから、適用できない2機のロケットの運動から、物事はすべて相対的であるということはいえないのです。

 すべてのものに通用するのは、ニュートンが考えた、絶対静止の空間を基準にすることだけです。そのときに始めて、すべての運動は、固有の絶対運動になり矛盾なくエネルギー不変の法則が通用するのです。

 

  
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