特殊および一般相対性理論について 3
(〈真〉ということばでもってけっきょくは〈実在〉の対象との一致を示すのが普通だが、幾何学はその概念と経験の諸対象の関係ではなく、これらの概念同士の論理的な関係を問題とするからである)
(いまやその〈真〉を正しく問うことが出来るようになったのである。なぜかといえば、われわれが幾何学の諸概念に結びつけてきた実在のそれぞれのものに、これらの定理が当てはまるかどうかを問うことができるからである。)
これは理論と実際の現象が一致するか否かによって、理論が〈真〉であるか否かを問うことができる、と規定していると考えられます。いわゆる、普通の科学の方法です。これは相対性理論の概念が、〈真〉であるか否かを、同じ方法で問わなければ、相対性理論が〈真〉であるかどうかを問えないということでもあります。したがって、実際の物理現象に相対性理論に予言する現象が存在しない場合、あるいは反する場合は、相対性理論は〈真〉ではないということができるということです。これは科学の方法として抜かしてはならないことなので、以降、論理と、事実を比較検討していきます。
それとは別に、この章は、ユークリッド幾何学について疑問を投げかけているのが主旨です。そしてそれが、(コンパスと定規による作図と一致することである)から真であると述べています。しかし((一般相対性理論)においてそれらの真には限界がある。)と述べながら、(さしあたっては、幾何学の諸定理が真であることを仮定しておこう。)とかなりあいまいなことを述べています。(真に限界がある)とはどういうことでしょう。真でもあり、偽でもあるのでしょうか。あるところまでは本当でもあるところは偽であるというのでしょうか。この段階では、このあいまいな表現について考える手立てがないので、私もここは一歩譲っておいて、一般相対性理論のところで考えようと思います。そのときは、一般相対性理論に基づく現象が、(〈真〉を正しく問うことができる)方法である、定規とコンパスで書けるのかをひとつの目安にして考えようと思います。
たとえば、(2点を通ってただ1本の直線が引ける、ということが真かどうかを問うことはできない、)をこれを使って考えてみます。方法は実際に2点を通る直線が何本書けるのかを実験することです。私には、今のところ実際に2点を通る1本の直線は書けても、2本以上の直線を書けた人はいません。そして、そういう現象を観測した人もいません。おそらくこれからもそういう人はでないでしょう。
理論上は可能でも、実際に2点を通る直線は今のところ1本しかありません。
学問はいろいろな考えが存在することは可能です。しかし、それがすべて事実であるということではありません。空想科学小説の中では何でもありでも、事実は、そうめったやたらに何でもありというわけにはいかないのです。
そして、このやり方、実際にできるのかどうか、実際に存在するのかどうか、すなわち事実として存在することが確認されていることをこの後、〈真〉であるかどうかの基準のひとつにすることにします。