17章 ミコフスキーの4次元空間

 この章で、アインシュタインは、世界は空間の三次元連続体と時間からなる四次元連続体といっています。

1 問題

ローレンツ変換の式を挙げ (この式によればKを基準とする二つの事象の時間差凾は、Kを基準とする同じ時間差凾狽ェ消えるときでも、一般的には消えないのである。)と述べています。

 動いているものは、止まっているものと時間の経過が違うということがいいたいようです。

2 考察

 ローレンツ変換の式では時間が運動によって変化するといっています。

数式上はそのようになるようです。しかし、数式上は可能であっても、実際の現象としてそれが可能であるということではありません。理論は経験によって確認されなければならない、とアインシュタインもいっているとおりです。

 そこで、ここでは(一般的には消えない)ということが現象として実際に存在できるかを考えます。すなわち、運動によって生じた時間差が、現実の現象として、観測されているか、ということと、それが可能であるかという検証をします。アインシュタインは、事あるごとに特殊相対性理論の起こす現象はあまりにも小さいので観測されない、あるいは他の理由から観測されないといっているので、観測されないとしても、今までの事実から、現実に起こりうる可能性があるかを考えます。

第1点

 まず比較するために、速度の違いから考えます。

 2台の車があります。時速50kmと、49kmで走っています。K点から同時に出発します。1時間後、二台の車の間には、1キロの距離の差ができます。最初同じ場所にいたけれど運動によって違う場所に存在しています。これは実際の現象として観測されています。この違いは、計算と実際の測定の両方が一致します。だから実際に起こっていることとして、この理論は正しいとすることができます。

 では、時間の差もこのように実際に計ることができるかを考えてみます。

 2台の車があります。二つの車は速度が違うので時間の経過が違っていると仮定します。A車が2時間走る間に、B車は1時間経過するとします。

 〈わかりやすくするために時間の差は誇張してあります。特殊相対性理論の小さな差については後で述べます〉

 西暦2008年1月1日午前0時を時刻のK点〈出発点〉とします。

 2台の車は運動場をぐるぐる回っています。

 A車が10時間走ったとすると、その間にB車は5時間経過したことになります。B車がA車よりはるかに速いので、何度もB車はA車を追い越します。F1レースなどで見られる、周回遅れという現象です。

 すると、A車は、西暦2008年1月1日午前10時にいます。そのとき、B車は、西暦2008年1月1日午前5時にいることになります。

 このことを詳しく考えてみます。

 2台の車の時間差は5時間です。計るまでもないことです。だから、今までの相対性理論では、実際に計っていません。

 では、実際にやって見ましょう。方法は簡単です。それぞれの車に積んだ時計を見くらべればわかります。

 ところが、実際にやってみるとかなり困難です。

 A車の時計を見た人は、B車に行くことができないのです。なぜなら、5時間過去にさかのぼらなければならないからです。また、B車の時計を見た人は、A車に行くことはできません。なぜなら、5時間未来に行かなくてはならないからです。そして今のところ、人間は過去や未来に行く手段を持っていません。実際には2台の車の時間差を直接計ることはできないのです。

 なぜこんなことが起こるのか。本来、違う時刻にある車は、同時には存在できないからです。ところが、特殊相対性理論では同じ運動場に違う時刻にある、2台の車が同時に存在していることになってしまいます。

 A車からB車は見えるでしょうか。また、反対に、B車からA車は見えるでしょうか。

 見えないのです。午前10時にA車を運転している人は、午前5時にいる車を見ることはできません。もちろん午前5時にいるB車の人も、5時間未来の、午前10時にいるA車を見ることはできません。見るだけでなく、触れることもできません。一切の関係を持つことはできないのです。 

 これは、今の私が5時間前の私を見たり触ったりできないのと同じです。

 このとき運動場の地面の指す時刻は、何時をさしているのでしょう。地面は車と違う速度なので違う時刻を指しているはずです。

 ほんらい、違う時刻の物質は、上に書いたように触ることも、見ることもできないはずなのに、車は2台ともその地面の上にいます。

 では、今の時刻は何時何分なのでしょう。それぞれに時計が積んであれば、3つの時刻が存在することになります。しかもどれも正しい時刻です。

 午前10時と午前5時は同時には存在できないのは経験的に事実です。時間の進み方がそれぞれに違うと、同じ時刻ではないので、同時には存在できなくなります。

 ベンチにあなたが座っているとします。右隣の人は明日の午後4時の時刻の人で、左隣の人は、昨日の午前9時の人だということは可能でしょうか。

 特殊相対性理論の時間の違いは、非常に小さいので、現実にはこの思考実験のように5時間もの違いは現れません。しかし、1秒でも時間が違えば、同じ世界には現れないのです。0.1秒でもそれは同じです。現実にそんな現象は存在していないので、ローレンツ変換を事実の現象にあてはめることはできません。

第2の不都合。

 基準体をどこに取るか。

 地球表面に基準体を取ります。地面は静止していることになるから、標準時間(そんなものがあればですが)で経過します。それに対して、車A,Bは動いているのでそれぞれの時間でゆっくり経過します。

 車Aを基準体にします。すると、車Aが静止するから、車Aが標準時間になり、地表と、車Bの時間がゆっくり経過します。 

 車Bを基準体にします。今度は、車Bが標準時間になり、地面と、車Aの時間がゆっくり経過します。

 どれもが時間経過が他より早くなり、どれもが時間経過が他より遅くなります。

 双子のパラドックスといわれている現象と同じことが起こります。

 今度は宇宙から見てみます。速度はかなり速くなります。したがって時間の違いも大きくなります。

 太陽を基準体にします。すると、地球も動きます。赤道の地表面でも、100倍近く速度が上がります。地面の時間経過は地球を基準体にしたときと変わります。車A、Bも、それまでなかった公転の影響で、走る向きで速度が違うので、時間経過は早くなったり遅くなったりします。そして、やはり、地球を基準体にしたときと時間経過が違ってきます。

 銀河系の中心を基準体にします。今度は銀河の回転速度が地球に加わるので、さらに時間経過がゆっくりになります。

 このことから、物体は、基準体を変えると、時間の進み方が変わり、そのためにさまざまな時刻にいることになります。

 このことから、すべての物体はそれ独自の時刻を持っているということがいえます。しかも、基準体を変えるたびに、物体そのものは何一つ変化しないのに、物体の経過時間だけが基準体に合わせて変化します。すべての物質は、それ固有の時間経過を持っており、しかも基準体によって同一固体がさまざまな時間経過をもつことになります。

 具体的には、こんなことになります。

 車Aは、基準体により、現在午前10時にいたり午前3時にいたり、昨日の14時23分11秒にいたり、その他さまざまな時刻にいることになります。決まった時刻というものを持ちません。となります。

 このような現象は可能なのでしょうか。現実には不可能です。理論的にも不可能に思えます。

 F1レーサーはサーキッドをぐるぐる回ります。観客とレーサーはかすかに違う時刻にいることになります。人工衛星は、ぐるぐる地球を回っています。われわれと違う時刻にいることになります。でもちゃんと帰ってきます。

 太陽の周りを45億年のあいだ回っている地球は、そのあいだに太陽と時刻が違っています。

 1日に3650分の1秒違うと、10年で1秒違います。45億年で4億5千万秒地球の時間が遅れます。これは5,208日に当たります。約

14年です。すると、太陽は、地球の14年未来にあることになります。

 1日に365,000分の1秒遅れると、450万秒の遅れになります。これだと約5日の遅れです。太陽の光は約8分で地球に届きます。5日未来の光が8分後、地球に届いていることになります。

 今、現実に太陽を見ることができます。どんな小さな時間経過の差も、45億年立つと、かなり蓄積されます。もし、速度で時間経過が変わると、今太陽を見ることはできないはずです。

 今太陽が見えるということは速度によって時間経過は変わらないということの証です。

 すなわちローレンツ変換を現実にあてはめたことが間違いだということがわかります。

表紙

第18章特殊及び一般相対性原理