第13章 速度の加法定理−フィゾーの実験

1 問題

 普通の物質の速度は光速度にくらべて小さすぎるので、前章の結果は具体的に比べられないといっているが、この章ではくらべられる現象があるというのです。

 それは、管の中を流れる、液体の中を光が伝播していくとき、光は流体に影響されるのが、確かめられたというのである。

2 考察

 前章では、流体は、(光速度cに比べて小さな速度でしか・・・動かせないのだから、・・・結果を直接具体的に比べることはできない)はずでした。だから、それが具体的に比べられたのは、ローレンツ変換とは違う原因で光の速度が落ちたと考えるのが妥当な気がします。

 もし、たかだか秒速数メートルの流体の速度くらいで、(しかも、その1パーセント以内の精度で、というくらい小さな速度さえ検出できたという)アインシュタインの相対性原理が具現化するなら、地球上のあらゆる動きで相対性原理は具現化しなければならないはずです。

 地球が秒速400kmで動いていることから考えると、第12章の測量棒の縮む現象は簡単に測定できなくてはならないでしょうし、地球が伸び縮みしている現象も観測されなくてはならないはずです。

 その意味でこの章は前章と明らかに矛盾します。自分の理論につごうのいい事だけを取り入れて、不都合なことは葬り去っています。

 また、光が、空気や水やダイヤモンドの中で速度をおとすのも観測されています。液体ばかりではなく、気体や固体でも速度を落とします。これは、特殊相対性理論とは関係ない現象です。


問題2

 (管は軌道堤 流体は列車 光は車中を走る男)と考えられる

考察2

 このとき(流体に対して相対的な光の速度と管に対して相対的な流体の速度は、管に対して相対的な光の速度を求めればわかる。)とのべています。

@ 特殊相対性理論では

 管=軌道堤に対しては光はつねに光速度Cをとることになっています。また、

 流体=列車に対しても、光はつねに光速度Cをとることになっています。

 このことから、管に対して相対的な速度を求めても、つねに、光は光速度Cなのだから、計りようがないはずです。

A 管に対して、相対的な光の速度からだけで、流体の速度は出てきません。光が流体の中でどれだけの割合で速度を落とすのかも必要です。

 

  もうひとつ疑問があります。この流体の向きです。この流体が地球の進行方向(秒速400km)に対して後ろ向きのときは、流体は宇宙の中を反対の向きに進みます。横向きのときは流体の流れより横向きの速度がはるかに大きく、斜めに動きます。同じ向きのときは、流体の速度と、地球の動きがプラスされます。この章でも、光はこれにまるで影響されていません。

 管=軌道堤=座標系Kとして絶対静止にしています。高々管に対して秒速数mmの流体の動きに意味を持たせて、秒速400kmの管の動きを無視している理論には疑問があります。

 アインシュタインの相対性原理では観測装置に対する光速はつねにCなのですから、光に対する流体の速度は、観測装置に対する流体の速度ではなく、真空中を突き進む地球の速度が、流体の速度に加味されなければならないはずです。観測装置に対する光速が、観測装置の速度に影響を受けるとした場合、ガリレイ変換になり、地球とともに動く観測装置と、流体の装置は地球の速度を共通して持つので、それは計算上省いてもかまわないが、アインシュタインの相対性理論では、流体の速度に光は影響を受け、観測装置の速度に影響を受けないのだから、地球の動きによる光に対する流体の速度を考えなければならないはずです。

 そして、地球の進行方向に対する向きは、今まで述べたように、つねに変わっています。流体の向きがどの向きになるかはつねに変化しています。したがって実験のたびに流体の速度が変わるので実験値が変わることになるはずです。しかし、光と地球が相対速度を変えるときは、地球とともに動いている観測装置はガリレイの相対性原理の動きになって、ほぼ同じ観測結果になるでしょう。光は一瞬で管を通り過ぎるので、管は光観測装置に対して動かない直線としてもいいからです。

(さて、問題は、経験に照らしてみてこれら二つの理論のうちどちらが持ちこたえられるか、である)

 (静止している液体の中を)というが、経験にてらして、静止している液体を地球上で作るのは不可能です。ガリレイ変換なら相対的に観測装置に対して、静止している液体は存在します。アインシュタインのローレンツ変換では、静止している液体は存在しないのです。ガリレイ変換は、地球上の動きから生まれたのに対し、ローレンツ変換は、地球の動きと、光の動きを比較した実験から生まれたのですから。

3 問題3

(液体がほかの物体に対して相対的に動いていようとなかろうと、光の伝播は流体に対して相対的につねに同一の速度wになることを、いかなる場合にも前提としなければならないであろう。すなわち、液体に対して相対的な光の速度と、管に対して相対的な流体の速度は、管に対して相対的な光の速度を求めればわかる。)

4 考察

 このことが正しいとするなら、流体に対する、光の相対速度は、いかなる場合にもwになることがいえます。

 たとえば、管に対して、秒速2メートルの流体の光に対する相対速度は、wです。また秒速200メートルの流体の光に対する相対速度は、やはりwです。このことから、光に対する流体の速度からは、流体の速度は測れません。

 一方、管に対する、光の相対速度もやはりwになります。すると、光に対する相対速度から求められる管に対する流体の速度は、0になります。流体がどのような速度であっても、計算からは0にしかなりません。(管に対して相対的な流体の速度は、管に対して相対的な光の速度を求めればわかる。)ことは不可能ではないのでしょうか。

 アインシュタインの原理では、光は、何に対しても、つねに相対速度がwになります。したがって、光の相対速度から、物体の相対速度は求められません。変わりに、アインシュタインの原理では、物体が伸び縮みすることになっています。したがって、管に対して相対的な流体の速度は、流体及び管の縮みの違いで測らなくてはならないはずです。

 問題に書かれた方法は、光と物体の相対速度が変化するという、ガリレイ変換の方法です。

 表紙

第14章 相対性理論の発見法的価値