隕石衝突がなければ今も恐竜は繁栄しているか2

 著者 高田敞


「あり得ない生物進化論!?」への疑問1

北村雄一 サイエンス・アイ新書

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

恐竜は天体衝突で絶滅したのか


問題

{白亜紀に栄えた生物群の多くが滅びたのは、地球に直径10kmにおよぶ天体が衝突したからだ、ということになる。}

考察

 隕石衝突によって、白亜紀の生物が大量絶滅した。その結果、恐竜は鳥類をのぞいて、絶滅し、その後、哺乳類が繁栄したということだ。その根拠が述べられている。

疑問T さまざまな恐竜の中で鳥しか生き残っていない理由

白亜紀、恐竜が大繁栄し、さまざまな科や、属や、種に分化していた。鳥はその中の一つだ。

隕石衝突によって、鳥以外のすべての恐竜の種類が滅びたということである。

問題点は

@ この本では、鳥以外の恐竜が滅びた理由が説明されていない。

A 反対に、他の恐竜が滅びたのに、鳥が生き残った理由の説明がなされていない。

これだと、この本で否定しているグールド氏の{生物が生き残るかどうかというのは、すべて偶然なのだ}ということになり、この本で肯定しているダーウィンの進化説と異なる立場を取ることになる。

 鳥以外は死に絶えた理由、そして鳥が生き残った理由を説明する必要がある。それがないと、偶然鳥だけが生き残ったということになる。そして偶然としたら、あまりにも不可思議な偶然である。しかし、こうも考えられる。隕石衝突の、爆発や、業火や、毒ガスや、暗闇という環境変化があって、その中で、それに耐えた種が生き残ったとすると、その環境に対する適者が鳥だったということになる。その時は、隕石衝突による環境の激変に、鳥だけが絶えて、他の恐竜が死に絶えた違いを考えなければならない。この本ではそれはない。ただ隕石衝突で恐竜は死に絶えたしかない。これは偶然生き残ったという説に近いといえる。

疑問2 哺乳類が生き残った理由

 現在の哺乳類は、北方獣類、アフリカ獣類、貧歯類の3つに分かれる。

{3大グループが急激に、おそらくほぼ同時に進化したことを示している。しかも、その進化が起きたのはおそらく白亜紀の前期。時代はいまだに恐竜たちが地球を支配する時代のことである。たぶん、この時代に何かあったのだ。そして真獣類の祖先は、急激に多型状態を保ったまま3つのグループへと進化してしまったのだろう。}

白亜紀の初め、一時的に、急激に酸素濃度が高まり、二酸化炭素の濃度が下がった時期がある。この時期に哺乳類が急激に3つのグループへ分かれたのではないだろうか。生存競争において高い酸素濃度は、哺乳類に有利に働くようだ。

哺乳類の3つのグループは白亜紀を生き伸び、白亜紀末期には、今あるほぼすべての目が現れている。そして、白亜紀の最後の隕石衝突の激変でも全ての目が生き残ったということだ。

恐竜は鳥以外はすべて滅び、哺乳類はすべての目が生き残っている。この理由が説明されていない。なぜ哺乳類はすべて生き残ったのか。生存したグループと絶滅したグループがはっきりとわかれるのは、そこに何らかの自然淘汰があったと考えられる。無差別攻撃のはずの隕石衝突による絶滅なのに、そこに適者生存の原理がはっきりと現れている。

結論

 この本では、ダーウィンの進化論を採用している。グールドの偶然説を退けている。それなのに、天体衝突説では、偶然説である。偶然、鳥と哺乳類が生き残ったということだ。すると、もし、天体衝突がなければ恐竜が今も生き残り、哺乳類は細々生きていることになる可能性大である。そうだろうか。恐竜は滅ぶべくして滅び、哺乳類は繁栄するべくして繁栄したのではないだろうか。天体衝突がなくても恐竜は鳥を除いて滅び、哺乳類は恐竜を滅ぼして代わって繁栄したのではないだろうか。その原因はダーウィンの適者生存説によって説明できるのではないだろうか。以下の章で、それを、考えてみる。