隕石衝突がなければ今も恐竜は繁栄しているか3


著者 高田敞

(以下{ }内は、「あり得ない生物進化論!?」北村雄一 サイエンス・アイ新書よりの引用)


問題


大量絶滅 

{火山活動とそれによる気候変動は、しばしば生物を滅ぼすと考えられてきた。だが、火山が地球の生物を皆殺しにしたと思われる事変はこれより以前、ベルム紀末期の大量絶滅しかない。火山活動が絶滅を引き起こすのには、多くの場合インパクトが不足しているらしい。なぜだろう? 規模が足りないということもあるが、いちばんの問題は時間がかかることだ。火山活動は数十万年、あるいは100万年といった長期間にわたって、しかも断続的に続く現象だが、これだけの時間があれば、生物は棲む場所を変えたり、更には気候変動に適応して進化することができる。こんな長い時間に及ぶ変動など生物にとって恐るるに足らない。だが、もっと強大なインパクトを、もっと短時間で、それも瞬間的に与えたのならどうなのだ? 生物は移動も進化もできぬまま、その力に屈してなすすべもなく死ぬだろう。繁栄は終わり、栄光の時代は突如として終わりを告げる。}


考察

 隕石衝突による大量絶滅に対して、火山活動による大量絶滅は弱いということを言っているらしい。

 この本によると、隕石による大量絶滅はKT境界(白亜紀‐第3紀境界)で起こった1回きりだ。火山活動で大量絶滅したのはベルム紀末期の1回きりだ。共に1回ずつだから、どちらが優位かは決められない。ところが、この本では、火山活動について{こんな長い時間に及ぶ変動など生物にとって恐るるに足らない}と否定している。隕石衝突しか大量絶滅は起こせないように書いてある。ところが、実際にベルム紀末期で大量絶滅が起こっている。それも、KT境界の絶滅を上回る史上最大の絶滅であるという意見が大勢を占めている。{恐るるに足らない}火山活動で、どうして、最大の大量絶滅が起こったのだろう。矛盾している。

 この本にはないが、大量絶滅は全部で5回あるといわれている。その中で、隕石が原因であるといわれているのは、KT境界の絶滅だけである。また、他にも隕石衝突は確認されているが、それが生物の絶滅につながったということは証明されていないし、絶滅とは関係なかったといわれている衝突もある。


結論

恐竜絶滅は隕石衝突であるという説に肩入れしすぎているために、出来事の解釈が、主観的になっていると思われる。

 

問題

{これだけの時間があれば、生物は棲む場所を変えたり、更には気候変動に適応して進化することができる。こんな長い時間に及ぶ変動など生物にとって恐るるに足らない。}

考察1

{生物にとって恐るるに足らない。}ということは、地球の生命の歴史が綿々と続いていることからいえる。しかし、ある特定の種にとってはどうだろう。生命の歴史を見ると、種は生まれては絶滅し、常に変化している。生物は{気候変動に適応して進化することができる}ことから、種は環境の変化に適応して進化し新たな種に変わる。そのとき、適応できなかった種は滅びる。長い時間をかけて、ゆっくりと種が変わっていくか、短い時間で多くの種が、変わるかの違いはあっても、常に、滅びていく種は存在してきた。

 ベルム紀の大量絶滅で、ベルム紀に栄えていた、哺乳類の祖先が滅び、代わって恐竜が支配層になる。これは気候変動によって、それまでの適者が非適者になり、それまで非適者であったものが適者になったことで、支配層が変わったと考えられる。

 ベルム紀の場合、環境の悪化によって、栄えていた哺乳類が滅び、その後、悪化した環境に適応した生物(恐竜)が、徐々に進化していったのではないだろうか。哺乳類は、悪化した環境に適応して進化しても、適応しきれていなかったのではないか。三じょうきを支配する恐竜も、環境に適応する進化をするには、環境が悪すぎて、適応が、なかなか進まなくて、ベルム紀と三畳紀の間に大きな生物の空白ができたのではないだろうか。

 

 恐竜も、その長い恐竜時代を通じて、種は生まれては絶滅している。最初の恐竜の種は終わりのころに残っているものはない。最初の恐竜はすべて滅び、新たな種の恐竜にとってかわられている。

 白亜紀末期の一斉絶滅は恐竜に脅威であるというが、古い種の恐竜の長い時間をかけた絶滅は古い恐竜には脅威ではないというのは間違っている。恐竜とひとくくりにすれば、新種の恐竜が生き残っているのだから、脅威ではないというのであれば、それはそれで、確かである。しかし、それなら、今鳥に進化した恐竜の子孫が地球上で繁栄していることから考えると、恐竜時代は今も続いているのだから、白亜紀末期の激変は恐竜にとっても脅威ではなかったといえる。

 

考察2

先に述べたように、ベルム紀・三畳紀の絶滅に史上最大の絶滅があった。これは、隕石衝突ではないといわれている。環境の変化による絶滅である。一説には、酸素濃度の変化による絶滅であるということだ。

また、オルドビス紀・シルル紀の絶滅も、急激な海面上昇に一致しているという説がある。これも、隕石衝突ではない。この時代は現在の10数倍の二酸化炭素濃度であった。これが地球の温暖化、海面上昇をもたらしたのだろう。そして、生物が、生存するのを難しくさせていたのではないだろうか。

地球の環境変化は、絶滅を引き起こしている。決して{生物にとって恐るるに足らない。}わけではない。


結論

地球の環境変化を現代に近い新生代で見ると大した変化はない。しかし、地球の歴史全体の環境変化で見ると、大きな変化がある。初期の火の玉であった地球を置いておくとしても、その後長く酸素がない時代があった。その時代は酸素がなくても生きられる生物しか住めなかった。その後酸素が大気中に広がると、それまでの生物にとってかわって、好気生物が地上に繁栄した。それまでの兼気性の細菌は片隅に追いやられた。

長い地球の歴史を見ると、多くが二酸化炭素が多く、酸素濃度が低い時代が続いている。大型の動物が生きづらい世界である。酸素濃度が高かったのは、石炭紀とそれにつづくベルム紀と、白亜紀最後から現代までの2度ほどである。そのほかでは酸素濃度が低く、哺乳類は、生きていくのが非常に困難であった。実際、ベルム紀には、哺乳類の祖先が繁栄し、KT境界から今日までも、哺乳類は繁栄している。

環境の変化は今までの地球の生命にとって、{恐るるに足らない。}というが、それは、現在の環境を基準にしてそれと大差ない変化と考えているからである。せいぜい人間が出す二酸化炭素が、地球温暖化を起こすというくらいが大ごとなのだ。昔は呼吸が困難になるほど二酸化炭素が多かった時代が長く続いていたのだ。実際の地球の環境変化は、ベルム紀・三畳紀の絶滅を引き起こしたように、多くの生物が生きられないほどの環境の激変になってしまうのである。