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宇宙空間が膨張するとは,どういう意味か(Newton2016,3)
についての考察8
2016,5,22
田 敞
(以下{ }内は上記本よりの引用)
以下、他の事について検討していきます。
T 問題1
{小さなころの宇宙の光がなぜ,宇宙背景放射として,今ようやく届いているのか}
この本の解答
(1)宇宙背景放射
{約138億年前のビッグバン宇宙の誕生から少し経った灼熱の宇宙を満たしていた光が,約138億年かけて地球まで到達し,現在観測されているのだということが分かっています。}
(2)「光速を越える膨張」
宇宙背景放射が発せられたころ,{現在,宇宙背景放射として観測されている光の源と,現在,地球が存在する場所とが,数千万光年しか離れていなかった}
その距離を背景放射が138億年もかかったのは不思議であるということだ。
その答えが、{この疑問の答えは「宇宙背景放射の源は当時,現在地球がある場所から見て,光の速度をこえる速度で遠ざかっていたから」だといえる。}
(3)宇宙膨張の減速
{その後,宇宙の膨張は減速していきました。これは宇宙空間に存在する天体やガスなどの物質の重力が,宇宙の膨張を引き戻す方向(収縮させる方向)に影響を与えるからです}
考察
1 {「宇宙背景放射の源は当時,現在地球がある場所から見て,光の速度をこえる速度で遠ざかっていたから」だといえる。}
これは残念ながら科学ではない。
理由
1 理論がない。
ア 仕組み
宇宙背景放射の光が{光の速度をこえる速度で遠ざかっていた}仕組みが何一つ述べられていない。空間膨張のために、ということだが、空間の何がどのようになったので、光速で遠ざかったという仕組みが何一つ解明されていない。
イ ハッブル定数
ハッブル定数は、1000万光年で、200km/sということだ。すると、数千万光年では、数百km/sということだ。とても、光速を超えることはできない。
現在考えられている、ハッブル定数による宇宙の膨張率とはまるで異なる膨張率である。なぜ、ハッブル定数と大幅に異なる膨張をしたのかの説明がない。
ハッブル定数は、その膨張率でさかのぼると、138億年前に宇宙は1点に集まるということだ。ところが、その過去に、数千万光年の距離で光速をはるかに超える膨張率があったら、ハッブル定数でさかのぼっても、宇宙は1点に集まらない。宇宙年齢が異なってしまうはずだ。
宇宙年齢を決めるハッブル定数の理屈(理論ではない)と、背景放射が今届いている理屈とで大きな矛盾が生じるのに、それを調整していない。証明する項目が異なると、それに合わせて理屈も異なる。いわゆるご都合主義の理屈といえる。
あちらを立てればこちらが立たず、になってしまっている。
イ エネルギー
光速を超える速度で空間を膨張させるエネルギーが解明されていない。
ハッブル定数で言われている空間膨張のエネルギーは謎であるとこの本でも述べている。現在も空間が膨張しているというのに、今のところ、空間を膨張させるエネルギーは観測されたことがない。また、特定されてもいない。いたるところ、おそらく地球上にも地球の中にも、普遍的に、空間を膨張させるエネルギーがなければならないはずなのに、それが観測されたことがない。あまりにも小さすぎて観測にかからない?そんなことはない。宇宙のすべての物質と、ダークマター(そんなものがあればだが)を、138億年で、数百億光年以上もの先まで無数の銀河団を吹き飛ばすエネルギーだ。そして、今も、この宇宙空間すべての膨大な質量を、吹き飛ばしているのだ。地球から遠いところでは、光速を超える速度だという。もちろん、そちらから見れば地球が光速を超える速度で飛び去っている。そのエネルギーが観測にかからないほど小さいということはあり得ない。(なぜ観測されない。もちろんインフレーションビッグバン論者は言うだろう。観測できない謎のエネルギーだからだと。しかし観測事実はそんなエネルギーは存在しないということを示している。そろそろそれを認めるころではないだろうか)
この、数千万光年の距離で光速をはるかに超える速度の膨張は、ハッブル定数の膨張の数百倍の膨張率である。そのうえ、ビッグバン論が正しければ、その当時は、今の宇宙と違って、数千万光年に、やがて数千億個を超える銀河(この本の宇宙の大きさから考えると、数兆個、あるいは数千兆個を超えるかもしれない)と、それを取り巻くハローの膨大な星間ガスと、その5倍のダークマターになる物質が詰め込まれていた時代だ。その巨大な物質の重力を打ち破る空間膨張である。しかも、その巨大な質量を光速まで加速するのである。ものすごいエネルギーが必要であったはずだ。そのエネルギーはどこからどのように湧いてきたのか究明されていない。謎のエネルギー、とかでちゃっかり済ませている。
2 実証
観測などによる実証がない。
結論
以上のように、理論も実証もないので、科学的見地から、仮説にもならないといえる。
背景放射が現在地球に届いているという事実を説明するために考え出された、あると便利だから、光速を超える速度にしよう、などという話を考え出したにしかすぎない。どちらかと言えば、科学というより、言い訳の類だ。
U 問題2
宇宙背景放射がなぜ現在の地球に届いているか。
・ 宇宙背景放射の原因
宇宙背景放射の原因についての説は2つある。
一つはインフレーションビッグバン論者の言う、{ビッグバン宇宙の誕生から少し経った灼熱の宇宙を満たしていた光}であるという説である。
もう一つは宇宙空間にある塵が出す光である、という説である。
考察
この二つの説について考えてみる。
1 {ビッグバン宇宙の誕生から少し経った灼熱の宇宙を満たしていた光}である。
・ 宇宙は一点から始まり、灼熱の宇宙になった。
(実証されていない。物理理論もない。1点に、この宇宙のすべてのエネルギーが生まれたというのは、エネルギー不変則に反する。)
・ 空間が膨張した
(実証されていない。理論もない。空間を膨張させるエネルギーは解明されていない。空間とは何か、空間の構造は、空間が膨張するとは、空間の何がどのように変化することなのか、空間膨張はどのように伝わっていくのか。空間が銀河団を動かす仕組み、等、空間に関する一切が分かっていない)
・ 空間膨張の速度の変遷
インフレーション(超超光速)→ビッグバン(ハッブル定数の膨張?)→背景放射後の膨張(超光速)→ビッグバンの膨張(ハッブル定数)
と、インフレーションビッグバン論者の考えている出来事の必要に応じて、膨張速度を大きく変化させている。
(実証されていない。理論もない。ご都合主義者とやり方が同じである)
2 宇宙空間にある塵が出す光である。
この説はビッグバン宇宙論が出る以前から複数の科学者によって提唱されている。
・ 宇宙に塵があることは観測から分かっている。
(実証されている。今分かっている普通の物理理論で説明できる)
・ 塵は、その温度に対応した黒体放射をする。
(実証されている。今分かっている普通の物理理論で説明できる)
・ 塵は、宇宙に飛び交う電磁波を受け温度が上がる、そしてそれに応じた運動や、電磁波を出し、温度が下がる。宇宙空間の、この電磁波の、吸収、放射のやり取りにより、長い年月をかけ宇宙の塵はほぼ同じ温度になる。宇宙の平均温度だ。(ビッグバン理論が出る以前に複数の科学者が、この温度を、約2.7kくらいと計算していた。後、ビッグバン論者はもっと高い温度を計算していた)
(実証されている。熱したフライパンを空気中に放置すると、空気の温度と同じになるのと同じ現象(エントロピー)である。理論もある)
以上から、宇宙には必ず一定温度の塵の出す黒体放射による電磁波が飛び交っているといえる。
これらは今分かっている物理学で矛盾なく十分説明できる。また実証もされている。
結論
背景放射はビッグバン時の光が今地球に届いた光である、という考えは、今の物理学では理論もなく実証もされていない。それに反して、背景放射は宇宙の塵の出す光であるという説は、上に書いたように理論も実証もあるといえる。
宇宙背景放射の原因は宇宙の塵の出す光であるという方が、科学的には正しいといえる。
V 科学の方法論から
問題
背景放射は宇宙空間にある塵の出す光であるという説が取り上げられないのはなぜか
考察
宇宙空間には塵がある、物質はその温度に応じた光を出す、というのは、ともに実証されている。だから、宇宙には、宇宙空間に満ちている塵の出す光が飛び交っているはずだ。
ところが、なぜかこの説は日の目を見ない。
理由は、この、背景放射が、宇宙空間にある塵の出す光であるという説は、インフレーションビッグバン論者が無視しているからである。
ではなぜインフレーションビッグバン論者はこの説をとりあげないのだろうか。間違っているから取り上げないということではない。上に書いたように、宇宙の塵の光説の方が、ビッグバンの名残の光説より、科学的に見て正しいといえるのだから。
これこそが、ビッグバン論者が背景放射は宇宙の塵の出す光説を無視している理由であると思える。
背景放射は宇宙の塵の出す光説を取り上げると、背景放射は、宇宙に浮かぶ塵の出す光であるということを認めざるを得なくなる。科学的に証明されている理論や実証があるものと、科学的に理論も実証もないものを比較したら、どちらに軍配が上がるか自明である。
すると、背景放射はビッグバンの証拠であるといえなくなってしまう。これではビッグバンを支える二大証拠、銀河の赤方偏移と、宇宙背景放射はビッグバンの名残の光という、なけなしのビッグバンの証拠の片一方がなくなってしまう。これでは困る。だから無視しているのだと思われる。
そんな説は聞いたことがないという顔をしているが、ビッグバン論者が、背景放射は宇宙に浮かぶ塵の出す光であるという説を知らないわけはない。私だって、複数の本でその説を読んでいる。宇宙論を考える学者が知らないわけはない。また、宇宙論科学者なら知らなければならない問題のはずだ。
科学の方法論では、現象をさまざまな角度から検討しなくてはならないことになっている。自分でさまざまな場合を考えそれを正しいか矛盾はないか検討しなければならないことになっている。特に、自分の説に反する事項は徹底的に研究しなければならないのが科学の方法のはずだ。ところが、インフレーションビッグバン論者は自分たちの理論に都合のいい、背景放射はビッグバンの名残の光であるという考えだけを取り上げ、他の考えを完全無視している。これは科学の方法論にも反しているといえる。
結論
{約138億年前のビッグバン宇宙の誕生から少し経った灼熱の宇宙を満たしていた光が,約138億年かけて地球まで到達し,現在観測されているのだということが分かっています。}という考え方は、本質的な理論も矛盾だらけだし、実証もないし、科学の方法論にも背いているといえる。これはSF(空想科学)の世界なら十分通用するが、科学の世界では間違いであるといえる。