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宇宙空間が膨張するとは,どういう意味か(Newton2016,3)
についての考察4
2016,5,17
田 敞
(以下{ }内は上記本よりの引用)
問題
(3) {空間の膨張にともなって,私たちの体などの物体も,膨張するのでしょうか。}
この本の答え
・ 太陽系は膨張しない。
理由は{重力の作用は,宇宙膨張が太陽と地球を引き離そうとする作用より圧倒的に大きいのです。}
・ 銀河も膨張しない
理由は上と同じ
考察
この本では他の部分で以下のことが書かれてある。
{宇宙は大昔,小さかったはず。}
{宇宙背景放射が発せられたころ,現在観測可能な領域の大きさ(数百億光年)は,現在の1000分の1程度だったことが分かっています。つまり,数千万光年の大きさしかなかったのです。}
この条件から、重力が宇宙膨張の力に打ち勝って、太陽系や銀河系が膨張しないという仮説(これは実証されていない考え方であるから仮説の域を出ない)を考えてみる。
1 宇宙背景放射が発せられたころの重力と空間膨張の力関係
インフレーションビッグバン宇宙論では、今宇宙にある物質のすべての元となる物質がビッグバンでできたことになっている。すると、{宇宙背景放射が発せられたころ,}{数千万光年の大きさ}の宇宙に、今観測されている、千億とも二千億ともあるといわれている銀河の元になった物質が、みんな詰め込まれているということになる。そのほかに、最近観測されだした、銀河間の希薄な水素やその他の塵、また銀河団を大きく包みこむ希薄な電離ガスなども重力源としてある。これらは希薄であるが、宇宙空間の体積は非常に大きいから、総質量は膨大なものになるはずだ。
これらすべてを、数千万光年の球の空間に詰め込むと、濃密なガスの塊になるはずだ。ガスではなく、地球の密度より大きくなる可能性だってある。そのほかに、インフレーションビッグバン説では、その5倍もの、ダークマターなる謎の重力源もあるという。これらのものがすべて詰め込まれているのだからその重力は巨大なものになるはずだ。太陽系の重力よりはるかに高くなるはずだ。すると、この段階で、空間膨張より圧倒的に大きい重力の作用で宇宙は膨張することはできないはずである。ところがその時は重力など無関係に空間膨張の力で物質は膨張している。今は反対に、空間膨張の影響は少しも受けずに、太陽系も銀河系も、銀河系とアンドロメダ銀河も、重力だけの影響を受けて動いている。
どうも、重力が、空間膨張を上回るという考えは、都合のいいところだけで、作用する現象のようだ。
これは、観測できないところでは、空間膨張が優位で、観測できるところは、重力が優位であるということと一致している。
重力が空間膨張を上回るから、膨張しないという考えは、インフレーションビッグバン説に都合のいいだけの理論であるといえる。
2 宇宙背景放射が発せられたころ以前の、宇宙の重力と空間膨張の力関係
これだけではない、インフレーションビッグバン説が正しければ、1点から宇宙は始まったというのだから、宇宙背景放射以前には宇宙はもっと小さかったということだ。直径1万光年のときもあり、直径1kmのときもあったはずだ。すると物質は、もっとぎゅうぎゅう詰めであったはずだから、宇宙背景放射が発せられた以前から、物質は膨張することができなかったはずだ。
天の川銀河と比べてみよう。天の川銀河は直径10万光年の円盤型だ。最近の観測では直径30万光年の球形のハローに覆われているという。
そこで宇宙が1点から大きくなって直径30万光年の宇宙になったときのことを考えてみよう。するとその時、やがて地球になる物質のすぐ近く(30万光年以内)に、今は遠く50億光年も離れている銀河になる物質もあったはずである。100億光年離れている銀河の物質もあったはずである。ハッブル宇宙望遠鏡で見える、すべての銀河や銀河団の元になる物質が地球から30万光年以内にあったということだ。
260万光年離れているアンドロメダ銀河は、天の川銀河との重力で、接近しているということだ。ビッグバン論者に言わせると、空間膨張より、重力が勝っているということだ。すると、30万光年以内にあったはずの、今見えるすべての銀河の元になる物質は離れて行くどころか、重力の作用で接近するしかなくなることになる。
その時空間は膨張していくとしても、物質は重力で、インフレーションビッグバン論者の言うビッグクランチになるはずだ。
もっと小さく、宇宙がまだ直径10万光年(銀河系の大きさ)のとき、この中にすべての宇宙の物質が詰まっていたはずだ。この本では、天の川銀河の星は、その重力で引き合い、膨張できないという主張だ。ところが、宇宙初期には、天の川銀河の大きさに、すべての銀河や銀河団の元になる物質が入っているというのに、膨張したという。大きな矛盾だ。
この本では書いていないから(分かっていないから)、その原因を代って考えてみよう。
ビッグバンだから、その時はエネルギーも詰め込まれていて、空間膨張だけではなく巨大な爆発があったというかもしれない。しかし、この考えでも矛盾がある。
問題は3つある。
1つ目は、全宇宙の物質を直径10万光年の球に詰め込んだら、ブラックホールになってしまうことだ。ブラックホールも爆発するのなら大丈夫だが、今のところ、ブラックホールからはなにも出ることはできない(光さえ出られない)というのが理論の主流だ。
2つ目は、爆発で宇宙が広がったということだ。
爆発では、距離に比例して速度は上がらない。物質は、エネルギーが加わった分しか速度を上げることはできない。エネルギーが加わらなくなった瞬間から等速直線運動になる。したがって互いに離れる速度は距離に関係なく一定の速度になる。ハッブル定数のように、距離に比例して速度が上がったりしない。
ビッグバンの爆発が終了した時点の速度が、その後の物質の速度になる。等速直線運動だ。
3つ目は空間の膨張と爆発の関係である。
普通の爆発は、空間を膨張させることはできない。
火薬の爆発も、火山の爆発も、核の分裂や融合による爆発も、超新星のように重力による爆発も、今まで地球上や、太陽系や、この宇宙で観測できたすべての爆発では空間は爆発したり膨張したりしていない。これは、現宇宙に存在するすべての爆発は、空間を膨張させない、ということを証明した観測でもある。
インフレーションや、ビッグバンの爆発は、空間も超光速で爆発(今のところ普通の爆発は光速以上にはなっていないから、爆発よりはるかに強力な膨張のようだ)させたようだから、今までに知られている爆発とは根本的に違う爆発であるということだ。エネルギーも根本的に違うもののようだ。もちろん、インフレーションビッグバン論の人も、謎のエネルギ−による謎の爆発と述べている。
そう、謎のエネルギーの謎の爆発と言っとけばそれでいい、ということのようだ。それを誰も不思議がらない。現在分かっている物理の法則には入っていない物理現象であるということだ。もちろん観測も実験もできていない現象で、謎のエネルギーが謎のシステムで、謎の爆発をして、この宇宙のすべての物質とダークマターが、ブラックホールを超える密度に詰まった物質を吹き飛ばし、ついでに空間までも吹きとばすということなのだ。
理論は、謎のエネルギーが謎の爆発をし、謎の空間膨張の仕組みを生み.謎の方法で、インフレーションビッグバンに必要なあらゆるものを動かしているというのだ。もちろん実証も何一つない。反対に否定する観測しかない。人知を超えた爆発、これほどキリスト教の人たちに待ち望まれた爆発はない。そう神の力なのだ。
それがインフレーションビッグバンだ。謎が謎を呼ぶ、素晴らしく面白いサスペンスなのだ。
3 空間膨張の証拠
空間膨張の証拠があると、インフレーションビッグバン論者は言う。
その証拠とは、銀河や銀河団の光が距離に比例して赤方偏移するということだ。
これと、宇宙背景放射だ。この二つである。
決して、空間膨張が直接観測されたわけではない。そこで、この二つが、本当に、ビッグバン、空間膨張の証拠として科学的にいえるのかを考えてみる。
(1) 銀河の赤方偏移の原因
光は物質に衝突するとエネルギーを減じて赤方偏移する。
部屋の明かりを消すと、瞬時に暗くなるのはその現象だ。部屋の中にあった光は壁に当たって反射して、いつまでも部屋の中を飛びまわっていそうだが、すぐ暗くなる。それは壁に当たった光が壁の電子を動かすためにエネルギーを取られるからだ。一瞬で何万回も反射して壁に当たるから、アッと言う間に、エネルギーを取られ、赤外線になりマイクロ波になって、見えなくなる。光のエネルギーは壁の温度を少し上げる。
宇宙を飛ぶ銀河や銀河団の光は、宇宙の水素やその他の、分子や原子に衝突している。その時、光はエネルギーをその原子や、電子を揺り動かすことに奪われる。これが赤方偏移の原因だと考えることもできる。
距離に比例して、光が宇宙空間の物質に衝突する回数も増えるから、距離に比例して赤方偏移の割合も大きくなる。これだと、地球上で観測されている現象で説明できるし、エネルギー不変則にも反しない。理論も今までの物理学で究明されている。
光の衝突説をインフレーションビッグバン論者は無視している。取り上げたら、否定できないからだ。それでは、インフレーションビッグバン説のいちばんの根拠である、銀河の赤方偏移は宇宙膨張の証拠であるといえなくなってしまう。だから絶対無視するしかないのだ。
(2) 宇宙背景放射の原因
これについては、先に書いたように、宇宙の塵の出す光とすれば今まで分かっている物理理論で説明できる。物質が、その温度に応じた黒体放射をしているのが観測されていることから実証もされているといえる。
4 膨張の速さ
太陽地球間の膨張速度をハッブル定数で計算すると、{地球は太陽から秒速320ナノメートル(秒速3.2ミリメートルの1万分の1)の速度で遠ざかる計算になるわけです。・・・地球は太陽から見て、1秒間に原子数千個分だけ遠ざかる計算になるわけです。太陽系の大きさで考えると,宇宙膨張の効果は微々たるものだといえるでしょう。}
考察
原子と比べて、微々たるものと言って、重力が宇宙膨張に打ち勝つことを強調したいようだ。そうだろうか。
地球が太陽の周りを公転し始めたのは46億年前と言われている。ではその間地球太陽間の空間はどれくらい膨張したか計算してみよう。
1時間では1,152mm膨張する。1日では27,648mm膨張する。1年では10.09152mの膨張距離になる。約10mだ。一億年だと10億m、100万kmになる。46億年だと、4600万kmだ。小さな距離ではない。太陽地球間の約3分の1の距離だ。
この空間膨張はどこに消えたのだろう。説明がない。
ナノメートルという馴染みのない小さな数で表して、この4600万kmを隠している。
科学なら一番不都合な数字を示して、それについて、説明しなければならない。分かりづらくしたり、小さく見せかけたりするのは、悪質な商売人のやり方に似ていると言わざるを得ない。
結論
138億年前、今のわれわれには観測できない想像しかできない過去の宇宙では空間膨張の力は巨大な重力に打ち勝って、すべての物質を膨張させたのに、今現在しっかり観測できるところではそれよりはるかに弱い重力が空間膨張に打ち勝ち膨張は起こらないという。
太陽系や銀河系では膨張が起こっていないという観測事実をうまく言いくるめるために重力を持ち出したにすぎないから上記のような矛盾が生じる。
宇宙膨張とは、闇夜には現れても明るい光の元では現れない幽霊のようなものだ。
観測のできない、遠い宇宙や過去の宇宙には起こっても、観測が正確にできる、太陽系や銀河系や、アンドロメダ銀河間では起こらない現象である。
正確に観測できることから類推して不確かな部分を考える方が、不確かな観測から正確に観測できることを類推するより物事は事実に迫れるはずだ。
今までの理論と普通に観測できることで説明できる現象を、無理やり天地創造にしようとするから、謎のエネルギーや、謎の仕組みや、謎の爆発が出てくる。間違ったことを正しいとすると、矛盾が次々と現れるから、最後は謎だ、と言うしかなくなるということだ。