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宇宙空間が膨張するとは,どういう意味か(Newton2016,3)

についての考察9

2016年5月26日

田 敞

 

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

{宇宙が有限の場合,宇宙はどこに向かって膨張している。}膨張する球面の宇宙って何?

 

この本の主張

・ 閉じた面

 立体の展開図を組み立てて箱を作ると、{その表面は、有限の面積を持ち,端を持ちません}。理由は{2次元の球面が,曲がって閉じているためです}。

・ {曲がって閉じた3次元の宇宙も球面全体と同じく境界がないので,その外を考えることもできません。}

・ {ただし2次元の球面(球の表面)だけがこの宇宙のすべてで,球の外や内部に宇宙は広がっていないとします}

・ {曲がって閉じた3次元の宇宙も、球面全体と同じく境界がないので、その“外”を考えることもできません}

・ {膨張する球面の宇宙}

考察

 全体として、これはごまかしのための流れです。

 以下それを検討します。

問題1

{ただし2次元の球面(球の表面)だけがこの宇宙のすべてで,球の外や内部に宇宙は広がっていないとします}

考察

実際の球を考えてみます。

まず、ボールです、ボールには内部も外部も存在します。球面だけのボールは現実には存在しません。

地球を考えてみます。地球には内部も、外部も存在します。内部にはマグマや、コアがあるといわれています。そんな大げさなことを考えなくても、そこらをシャベルで掘ってみるとわかります。内部には土があります。無差別にどこを掘っても内部には土や石や何か物質があります。また地球の外部は月や、太陽があります。少なくとも100億光年先の銀河まで観測されています。

したがって、{ただし2次元の球面(球の表面)だけがこの宇宙のすべてで,球の外や内部に宇宙は広がっていないとします}という条件は、実際には存在しない条件だから、このような条件を設定することが事実と異なるので間違いです。

たとえば、「ただし1次元の線だけがこの宇宙のすべてです」という条件をつけて宇宙を考えたらどうなるでしょう。あるいは、「ただし、38次元の世界だけがこの宇宙のすべてです」という条件ではどうでしょう。これらの条件で、このわれわれがいる宇宙を、説明できるでしょうか。事実ではない条件から出発すると、条件をつけた人の思い通りの世界はできるかもしれませんが、それゆえに真実からは離れていきます。昔、天動説を唱えていた科学者も、周転円なるものを考えて必死で計算していました。一時は地動説より正確に惑星の位置を計算できたとか聞きます。

この本では、2次元の球面の内部と外部が存在しないことを箱の展開図で述べています。{2次元の球面が,曲がって閉じているためです}という理由ですが。もちろん2次元には3次元目がないのですから内部も外部もありません。箱の表面だけが存在しているという条件なのですから。ただ、実際の箱には内部と外部があります。箱の中には空気があるし、外にも空気があります。箱に、ケーキだって、服だって入れることができます。

まるきり手前みそな設定です。都合のいい条件をつけたら、何でも思いどおりになることの典型です。その条件が{ただし2次元の球面(球の表面)だけがこの宇宙のすべてで,球の外や内部に宇宙は広がっていないとします}という条件です。

たとえば、「ただし動物はアリだけだとします」という条件をつけます。すると、「地球上にはアリだけしか動物は存在しません」という結論が出ます。では象は、人はというと、いえ、条件はアリだけ(表面だけ)が動物(この世界)ということですから、他の動物(内部も外部も)はありませんということと同じです。条件の設定が間違っているから、結論が事実と異なることになるのです。

自分たちの結論を導くために条件を勝手に設定したら、自分たちの望み通りの結論になるのは当たり前です。しかし、それでは事実とは相いれない結論しか出てきません。

 

問題2

{曲がって閉じた3次元の宇宙も、球面全体と同じく境界がないので、その“外”を考えることもできません}

考察

 大きく二つの間違いがあります。

上に書いた、球の表面には中と外がないという仮定と、この3次元宇宙は{曲がって閉じた3次元の宇宙}であり、何かの表面だという仮定が、事実と異なるということです。

1{曲がって閉じた3次元の宇宙}

{曲がって閉じた3次元の宇宙}の存在は、話だけで科学としての理論もないし、実証もされていません。

(1) 実証

この宇宙は観測された限り平坦であるということがこの本にも書いてあります。これは宇宙背景放射を使って、3角測量の技法で測ったそうです。宇宙空間は曲がっていないという実証です。観測事実は、{曲がって閉じた3次元の宇宙}を否定しています。ビッグバン宇宙論なら、宇宙誕生後数十万年(背景放射が出た時)から現在までの宇宙が曲がっていないとうことです。

インフレーションビッグバン論者は、観測されているその先の観測できていないところは曲がっている可能性がある、と述べたりしています。しかし、それには、科学的根拠はありません。なんだって可能性を言われると、それは否定できません。たとえば、あなたはこの先人を殺す可能性がある、と言われたらどうしますか。0.01パーセントの可能性はあると言われればどうやって否定しますか。だから、人を殺させないために牢屋に入れておくと言われたらどうしますか。

可能性で観測事実を否定することはできません。今のところ、観測できた範囲(宇宙誕生直後から現在まで)では宇宙は曲がっていないのですから、それを基に考えた宇宙を最優先するべきです。特に、この場合のように、自分たちの考えた宇宙が正しいというために、観測事実を可能性で否定するのは、間違いの元になります。

(2) 理論

曲がって閉じた3次元の宇宙は、実際にどのようになっているのか想像すらできないから、2次元と3次元の比喩で表すといっています。想像すらできない代物が、{曲がって閉じた3次元の宇宙}ということです。仮説にもなりません。サイエンスフィクション(SF)です。文字で説明することも、絵や模型で表すこともできないし、今のところ、現在の人間が持っている表現方法では一切表すことができないということは、SFにもならないということです。

2 球には中と外がないと{曲がって閉じた3次元の宇宙}の関係

(1) 理論

{曲がって閉じた3次元の宇宙も球面全体と同じく境界がない}ということをどのようにして解明したのか、その証明はなされたのかが不明です。球の表面と{曲がって閉じた3次元の宇宙}が同じ物理状態であるということを科学的に証明してからの話です。

球の表面は実際に存在します。しかし、{曲がって閉じた3次元の宇宙}は想像すらできないのに{球面全体と同じく境界がない}ということがなぜわかったのか。証明しなければならないはずです。

(2) {球面全体と同じく境界がないので、その“外”を考えることもできません}の根拠

 先に述べたように、実際の球面は中も外もあります。境界がないから、中も外もないというのは間違いです。そうでないなら、中も外もない球面を作ってみてください。世界広しといえど、作れる人は一人もいないでしょう。

結論

これは、{ただし2次元の球面(球の表面)だけがこの宇宙のすべてで,球の外や内部に宇宙は広がっていないとします}という仮定が事実に即さない間違いであることが根源です。

二つ目は{膨張する球面の宇宙}と仮定した宇宙が、そもそも、どのような状態になっているのか示すことができないし、最初から、何一つ、{考えることもできません}といっていながら、{曲がって閉じた3次元の宇宙も球面全体と同じく境界がないので,その外を考えることもできません。}と、ちゃんと考えていることが二つ目の間違いです。

{曲がって閉じた3次元の宇宙}そのものが分からないのだから、{曲がって閉じた3次元の宇宙も球面全体と同じく境界がないので,その外を考えることもできません。}ということも分かりっこないはずです。自分たちの理屈に都合のいいことだけはちゃっかり分かるというのでは、事実に行き着くことはできません。

都合の悪いことは{考えることもできません}と知らんふりして、都合のいいことだけは、自分たちの都合のいいように考えるというのは、科学の方法論からすると間違いです。たんなるご都合主義です

 

(おまけ)

この世界は3次元世界でその他の次元の世界は今のところ観測でも実験でも確認されていません。これは、4次元世界は存在しないということを観測していることでもあります。数学や、理論上は4次元や100次元が存在できても、それは考えの中だけで、実際に観測されたことではありません。観測で、ない、と否定されているのに、観測技術が足りないとかいって観測事実を否定するのは科学的ではありません。

今のところ、地球上だけではなく、観測できている範囲の宇宙もすべては平坦な3次元しかないのが現状です。実際、宇宙論科学者でない宇宙科学者は、平坦な3次元宇宙で考えています。それで、なにも不都合は起こっていません。それを無理やり、この3次元宇宙が何かの表面であるのが事実であるかのようにいっているのは間違いです。

 実際の観測や現象を否定したり無視したりして、自分たちの理論に都合のいい仮定を作って、それにもとづいた理論を組み立てても真実に行き着くとは思えません。少なくとも科学の方法ではありません。

 これはSF小説の方法です。