シュレディンガーの猫について9

(「シュレディンガーの猫(下)」ジョン・グリビン,坂本憲一・山崎和夫 訳,地人選書)

(以下{ }内は上記本よりの引用)

著者 高田敞
     


問題 

P34{われわれが1度にたった1個の「本当の」電子を取り扱ったにしても、この干渉の跡がスクリーンに見られるのである。}

P32やはり{1度に1個の電子しか装置を通らないようにしても、なお同じ結果になる。}

 1個でも干渉するといっている。

 この原因は、1個の電子が複数のゴースト電子になり互いに干渉するからであると述べている。

そこで、1個の電子で干渉するかについて考える。

考察

ア 想像上の実験1

 {話を簡単にするために、わたしは想像上の2つの孔の実験で通すつもりだ(下線は筆者)}(P30)

想像上の2つの孔の実験}とあるように、これは想像上の実験である。実際の現象ではない。したがってこの想像上の実験からは電子が干渉するかどうかについてはなにも証明されない。

イ 想像上の実験2

 {各回に1個の粒子を通過させて千回の実験結果を合計できるとして、それでも包括的な結果は回折と同様の分布パターンなのである。(下線は筆者)}(P32)

合計できるとして}から、この実験が想像上の実験であるということがわかる。したがって実際に{結果は回折と同様の分布パターンなのである。}とは言えないということだ。想像であって事実ではない。又、量子論者は実際に見ていないものを知ることはできないはずだ。

ウ 想像上の実験3

 {1個の電子がどちらの孔を通るか記録はするが、そのまま探知スクリーまで行かせる装置を想定する}(P33)

装置を想定する}と述べている。これも実際に行ったのではなく、研究者の想像である。事実ではない。

考察

 実際の実験結果なのか、それとも、思考実験なのかはっきりしなければならない。この本では、実際の実験と思考実験がまぜこぜになっている。どれが実際の実験でどれが思考実験か明確でない。著者は、実際の実験も想像上の実験も同じに扱っている。これは科学者として基本的に間違っている。想像上の実験は実証ではない。実験者の勝手な想像である。想像上の実験は実験者の思いどおりの結果しか出ない。天動説のときは、科学者の想像上の実験では太陽が地球の周りを回っていた。誰も疑わなかった。ガリレオ以前の学者の想像上の実験では、重いものの方が速く落ちた。宗教学者の想像上の実験では、神が光あれと言ったら光ができた。想像上の実験では実験者の思いどおりの結果しか現れない。それをもとに、理論を組み立てても、事実から遊離した架空の理論になるしかない。

結論

 科学なら、都合のいい想像上の実験ではなく実際の実験を示さなければならない。想像上の実験は事実ではないから、事実を究明する科学には使えない。SF世界の科学者のやり方にしか通用しない。と言っても、実証は古典科学の方法だから、古典科学の常識を否定する量子論では否定されるのだろうか。まあ、相対性理論にしろ、ビッグバン宇宙論にしろ、想像上の実験が主流で、実証など必要なくなっているようだが。だから、みんなこの世界には起こらないことばかりで組み立てられている。この世は想像世界になってしまった。

ゴースト(幽霊)が物質の根源であるとは困ったものだ。

 

2014,2,12   高田敞