シュレディンガーの猫について21

(「シュレディンガーの猫(下)」ジョン・グリビン,坂本憲一・山崎和夫 訳,地人選書)

(以下{ }内は上記本よりの引用)

著者 高田敞

     

 

問題

{一つのリアリティーからのメッセージが時間の中を分岐点まで逆戻りし、そこでこのメッセージを受け取った人々が時間の中を前進して、彼ら自身の異なる分岐のリアリティーに入っていく。}

考察

{一つのリアリティーからのメッセージ}について

・ リアリティーはどのような手段でメッセージを送るのか。

言葉としたら言語はどれを使うのか。手話としたらやはりどの国の手話か。言語でないとしたらどのようなもので伝えるのか。送る側と受ける側で共通のものでないと、伝わらないから、そのようなものがあるのだろう。ジョン・グリビン氏は具体的にそれを示さなければならない。古典物理学では存在しない伝達手段だから、これを示さなければならないはずだ。提出できないでしょう。そんなものはないからだ。

 因果関係を示すお話がある。「風が吹けば桶屋がもうかる」という話だ。風が吹くと砂埃が舞う、砂埃が猫の目に入る。猫がネズミを捕れない。鼠が増える。増えた鼠が桶をかじる。桶の注文が増える。桶屋がもうかる、という話だ。この話は、風が吹くというメッセージが、具体的な物質によるエネルギーの伝達で伝わっていく。どこにも未知で、不可思議な伝達手段はない。

 ところが、{一つのリアリティーからのメッセージ}はすべてが謎の伝達手段だといえる。すなわちリアリティーは0パーセントだ。リアリティーなどひとっかけらもない。上のお話の方が、はるかにリアリティーがある。まあ、猫の目に砂埃が入って鼠が取れなくなるというところは、笑い話だが。それでも伝達手段としては100パーセントリアリティーがある。

・メッセージはどのようなものなのか。

電波や光などの電磁波を送るのか。会話のように音波を使うのか。手紙などのように車や、飛行機など交通手段を使うのか。人間のメッセージは、だいたいこのような方法を取る。では、{一つのリアリティーからのメッセージ}は何によって、{時間の中を分岐点まで}運ばれるのか具体的に示す必要がある。これは書いていない。

まさか、リアリティーの念力、とか、テレパシーとかのSF小説的なものじゃないとは思うけれど、これは具体的に示して、証明する必要がある。

・ メッセージはどのような形を取っているか。

それは言語なのか。言語としたら、何語によるのか。{このメッセージを受け取った人々が}とあるから、{人々}が理解できるメッセージなのだろうと推測できる。いったいそれは何なのか。それも書かれていない。

・ {一つのリアリティー}はどのような方法でメッセージを作るのか

手紙なら手で書く。テレビなら放送機器で映像や音を電磁波に変えて作る。電話なら音声を電磁波に変える装置で作る。{一つのリアリティー}どのようにメッセージをつくっているのだろうか。これも書いていない。

・ メッセージはどのような方法で時間をさかのぼるのか。

時間をさかのぼる手段は今のところ作れないし、具体的に発見されてもいない。その方法を書かなければならない。それがない。

・ {このメッセージを受け取った人々}はだれか?

私は、今まで一度も未来からのメッセージを受け取っていない。今生きている人で、未来からのメッセージを受け取った人がいるのだろうか。いないのではないだろうか。

{受け取った人々}と抽象的には言えても、具体的に言えないだろう。受けとた人はいないからだ。

・ {受け取った人々が時間の中を前進して}

 {時間の中を分岐点まで逆戻りし}てきたメッセージを受け取った人々はどのような方法で現在まで一気に{時間の中を前進}するのか。その方法も書いていない。

タイムマシーンの発想なのだろうか。人々が時間の中を前進するということは今のところできていない。まして全世界の人々が足並みをそろえて、時間の中を前進するなど、あり得ることではない。

・ {彼ら自身の異なる分岐のリアリティーに入っていく。}

 意味不明である。科学なのだから、文学的表現に逃げてはいけない。はっきり理解できるように書くべきである。おそらく、著者自身が、わかっていないから、曖昧な表現で煙に巻く作戦に出たのであろうと思われる。

 {異なる分岐のリアリティー}ということは、元の{分岐のリアリティー}があったということだ。すると、もとのリアリティーと違って、メッセージを受け取って過去から遡ってきた人々は基と異なるリアリティーの世界へ進むということだ。基の人々と、過去から時間をさかのぼってきた人々は同一人なのに、異なる人生を歩まねばならなくなる。人々は倍増した。地球上の人間が60億から120億人になた。大変だ、食糧危機になる。分岐点で生き別れだから、どちらかがあちらの世界に飛んでいくから大丈夫というのだろうか。それとも、さかのぼってきた方が理由はないけどひゅういだから、元からあった人々は消えてしまうというのだろうか。

 まあ、楽しいSF小説だね。

 

・ メッセージを受け取った覚えのない人はどうすればいい。

分岐点は今までに無数にあったことと思われる。しかし、私は今までに一度も未来からのメッセージを受け取っていない。{このメッセージを受け取った人々が時間の中を前進して、彼ら自身の異なる分岐のリアリティーに入っていく。}というのだけれど、メッセージを受け取っていない私は、いつ、どのような方法で時間をさかのぼり、どこに行けばいいのだろう。

・メッセージを受け取っていない人々はどうすればいいのだろう。

 私の周りに未来からのメッセージを受け取ったという人はいない。彼らはどこに行けばいいのだろう。

 

結論

 ここには何一つ具体的なものは示されていない。要するにリアリティーは一つもないということだ。著者は何故具体的のものを示さなかったのか。そんなものがないからだ。すべてが想像の産物で単に机上の空論にしか過ぎないということだ。

 

つづく