シュレディンガーの猫について1−1

(「シュレディンガーの猫(下)」ジョン・グリビン,坂本憲一・山崎和夫 訳,地人選書)

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 著者 高田敞  

     

1 不確定性について

{粒子の位置を正確に知れば知るほど、その運動量の方はぼやけてくる。その逆もまたしかりである。}

2 問題は2つある

(1)枝葉のこと

正しい測定が不可能

(考察)

 電子を見るとき、測定の為に、ガンマ線をあてて測定すると電子は弾き飛ばされてしまう。だから、{電子の位置と運動量を正確に測定するのは不可能だと一般的に考えられる。}と述べている。そのとおりである。

 これは何も原子に限ったことではない。たとえば、カボチャの形を測定しようとする。普通、カボチャで反射している可視光線で形を判断する。可視光線は、カボチャを即座に破壊するエネルギーを持たないからそれができる。光の代わりに1kgの鉄球を無数にカボチャに当てて、その反射でかぼちゃの形を測定してみよう。カボチャは破壊されて測定できないだろう。測定される物に対して、大きなエネルギーを持ったもので測定しようとすると、測定される物が破壊されたり飛ばされたりして正しく測定できないのは、何も量子に限ったことではない。

新幹線の長さを測るのに、100tの物差しを載せたら、新幹線は壊れて正確な長さは測れないだろう。もちろんそんなことをする人はいない。それは常識外れだから考えもしないし、小さな物差しで測れるからその必要性はないからである。だから電子にガンマー線を当てると電子が飛ばされて測定することはできないということを不思議なことと言っているが、マクロの世界でも当たり前のことだ。

電子を測るには、電子より、何百万分の1かのエネルギーの物差しで測ればいい。ただ人は今のところそれを持ち合わせていないからできないだけだ。それがあれば、電子に小さな影響だけで電子を測れる。不確定ではなくなるわけだ。ということは、道具がないということが不確定を生んでいるだけだ。

(結論)

この場合の不確定性は、電子自身の問題ではなく測る側の人間の不備ということになる。物理現象ではなく、人為的ミスにしか過ぎないといえる。

(2) 重要な方

{不確定性原理が示すのは、量子力学の基本等式によれば、正確な運動量と正確な位置を持つ電子などは存在しないということである。}

(考察)

ア{量子力学においては、時空の座標を正確に定めると、運動量が不確定となり、因果律は成立しない}

 と述べている。これは、位置を正確に求めると速度は測れない、速度を正確に求めると位置が測定できないということのようである。

 これも、何も量子に限ったことではない。

 新幹線を考えてみよう。新幹線の速度を測ってみよう。そのためには、A点からB点まで新幹線が走った距離と、経過時間を測ればいい。距離÷時間で速度が出る。

 このとき、新幹線の正確な位置を測定してみよう。新幹線は、A点からB点へ移動している。どこと場所を特定できない。時間も、新幹線がA点にあったときからB点に着いたときまでの時間だ。いつと時刻を特定できない。

 反対に、新幹線の位置を正確に求めてみよう。新幹線はA点にある。このとき、新幹線の速度を測ってみよう。位置はA点と特定されているから、距離も、経過時間も測れない。距離÷時間=速度の式に入れる値が0になる。速度は測れないことになる。

 これは、光のドプラー効果を使っても同じである。正確な位置、A点から反射してくる光子は一つである。ドプラー効果はないから速度は測れない。反射する光子がA点からB点まで変化すると、ドプラー効果は出るので、速度は測れる。しかし、このとき光子が反射した時の新幹線の位置が変わっているので、正確な新幹線の位置は測れないことになる。

 このように、位置を正確に求めると速度は測れない、速度を正確に求めると位置が測定できないという不確定性原理も、量子に限らないといえる。普通のマクロの世界の当たり前の出来事である。なにもこと改めて自慢するほどのことではない。

(結論)

 ファインマンが、{日常経験から量子の世界に持ち越せる類似点は皆無だし、量子世界の反応には見慣れたものは何もない。}

と述べているそうだが、上記の点では、日常経験と、量子の世界はそっくり同じであるといえる。

 {不確定性原理が示すのは、量子力学の基本等式によれば、正確な運動量と正確な位置を持つ電子などは存在しないということである。}

これは総ての物質にいえることである。運動している物質はすべて動いている。したがって、位置は常に移動している。もちろん時間も停止することはない。すべての物質で正確な位置を測定するということは人間にはほとんど不可能であるということである。おそらくブランク長さの時間とブランク長さの移動を測定できる技術を持った時初めて正確な位置を測定できることになるだろう。現在のところ、すべての測定は誤差の範囲を含んでいる。誤差の範囲はブランク長さをはるかに超えた大きさである。

 基本等式から、時間を完全に止め、位置を完全に止めると運動量は0になる。不確定ではない。運動量は0である。しかし計算上は時間を止めることはできるが現実は時間を止めることはできない。

 しかし、人間は測定できなくても、瞬間瞬間の物質の位置は存在する。そして、時間の経過とともに、正確な位置が動いていく。その動きは、その物質が持っている運動エネルギーに一致している。勝手にあっちに行ったり、速度を変えたり、とび跳ねたりしない。正確な運動を行う。人間が正確にそれを測定する技術を持たないだけだ。物質が不確定なのではなく、人間の技術が不正確なのだ。自分たちの未熟を物質のせいにしているだけだ。

 

  2014年2月8日記
つづく シュレディンガーの猫について2