「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 44

著者 高田敞

 

 

     

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

まとめ

T 宇宙の卵の問題

宇宙の卵は、原子より小さな状態で生まれた、ということだ。

素粒子も原子より小さい。

素粒子と宇宙の卵は大きさではほぼ同じくらいだ。素粒子は宇宙にはならない。宇宙の卵は孵化して宇宙になるのだから、卵であるときに既に宇宙になる何かの構造を持っていたということだ。生まれたとほぼ同時にインフラトンか、相転移かによって、光速の数兆倍では利かない膨張をするのだから、かなりしっかりした何かを持っていたはずだ。

 素粒子はそれ以上小さな構造はないといわれている。その大きさの宇宙の卵は、どのような構造を持っていたのだろう。急膨張し、その後100万分の1秒で、今の宇宙の物質の21億倍の、粒子と反粒子を生成する。同時に、4つの力やダークマターや、ダークエネルギーや、ヒッグス場を作る。これは天文学的エネルギーの20数億倍のエネルギーを必要とする。そのほとんどが謎の複雑なシステムでできている。

 このことから、宇宙の卵は、巨大なエネルギーと、現在物理学の粋を集めても解明できない複雑なシステムを内包していなければならないはずだ。鶏の卵のように単純であるのかもしれないが、やはり宇宙の卵といえども何もないところからは何も生めない。

 卵については何一つ説明がない。何一つ分かっていないから書きようがないのだろう。

 

U インフレーションの矛盾

1 大きさ

100mから無限大まである

ア 100mの場合

モノポールはぎっしり詰まっているため。今でも観測されるはずだから、間違っている。

イ 無限大の場合

 ビッグバンになったとき、全宇宙が火の玉になれない。また138億年さかのぼっても、宇宙は1点にならないから、間違っている。ではどの大きさか、といえば不明である。人さまざまである。

ウ 論の数

「いま、インフレーションの起き方を説明する理論は100種類にもなる。」(アサヒ新聞2014,4,21)という。すると、このうち少なくとも99は間違いであるということだ。ということは、残りの一つも正しいとは言えない。それ以外がある可能性がある。もちろんインフレーションがあったということもまちがいであるかのうせいがある。もしインフレーションが正しい現象なら、正しい論にもう少し絞られるはずだ。

2 エネルギー

(1)エネルギーの出所

インフラトンにしろ、相転移にしろ、宇宙を急膨張させる巨大なエネルギーの出所がない。真空あるいは偽真空の原子より小さな空間にそのような巨大なエネルギーがあるというのは量子論にはない。もちろん、インフレーション論以外のどのような理論にもない。

(2) 働き方

現在実証されているエネルギーで、空間を膨張させるエネルギーはない。謎のエネルギーである。現在も空間を膨張させているのだから、観測されてもいいのだろうが、観測はされていない。現在宇宙を膨張させているのはダークエネルギーということだが、これは、宇宙の全エネルギーの数十倍あるといわれていながら、何もわからない、観測もされていないという、架空のエネルギーである。お話以外何もないエネルギーということではインフラトンも、相転移もダークエネルギーと同じである。

(3) 働き方

 空間のどこにどのように働いて、空間をどのように膨張させるのかが不明。物質の膨張とは完全に違う仕組みであるはずだ。それが何一つ解明されていない。

(4) インフラトン

ア 宇宙の卵の中の真空から湧いてくるエネルギーということだ。

真空はどのようにインフラトンを作るのか。宇宙は「無」の揺らぎから出たといっているが、インフラトンのでき方は述べられていない。巨大なエネルギーだから、わかりそうだが、何一つ分かっていないし実証もない。お話の段階である。

イ 宇宙を、一瞬より短い間に、1兆倍の1兆倍の100万倍に膨らませた。

この仕組みも何一つ分かっていない。空間の何をどのようにしたら、そのような高速度の膨張を起こせるのかの理論はない。もちろん実証もない。お話だけだ。どちらかといえばおとぎ話に近い。SFならもう少し科学っぽい理屈をつける。

ウ ビッグバンの火の玉を作る

インフレーションで空間膨張をさせたあとはビッグバンを起こし、物質を作ったということだ。もちろん物質を作る仕組みは何一つ解明されていない。無のゆらぎから宇宙の卵ができたといっている。では物質はインフラトンの何がどのように作用して物質を作ったのか説明はない。

エ ご都合主義

 非常に都合のいいエネルギーだ。空間を急膨張させた後、物質をつくるエネルギーに変化したということだ。どのような仕組みで変化したのか。何故いつまでも空間をインフレーションさせていなかったのか。変化の原因は何か。何一つ科学的説明がない。これもお話だけだ。理論も裏付けもない。

エ インフラトンの正体

インフレーション論者の意のままに働く最も都合がいいエネルギーである、という以外に何もない。忠犬の一種なのだろう。

(5)相転移

ア 仕組み

 相転移の仕組みが何も解明されていない。水の相転移という比喩だけだ。物質の相転移と、空間の相転移がおなじ仕組みであるというのは、余りにもお粗末だ。

イ エネルギー

 出所が不明である。水の相転移の比喩でごまかしているだけだ。

 

V 空間の矛盾

ア 空間とは何かがわかっていない。

イ 空間の構造がわかっていない

ウ 空間膨張の仕組みがわかっていない

エ 空間を膨張させるには、どのようなエネルギーがどこにどれだけの量働けばどの速度で膨張するかが何一つ分かっていない。その結果、一瞬で100mからほぼ無限の宇宙まで膨張するということになり、それを大差ないということでごまかしたりしている。

オ 偽真空と真真空と二つある。違いが述べられていない。

それは真空の性質の違いなのだろうか。性質が違うということは真空にはなにか物質に似たものががあるということなのだろうか。

偽真空には、無の揺らぎとか、無のエネルギーとかがあり、真真空には真空の揺らぎとか、真空のエネルギーがあるようだが、名称の違いを述べているだけで実質的な違いの説明はない。

W 宇宙の始まりと果ての問題

インフレーション宇宙は138億年前に始まったということだ。しかし、そのインフレーション宇宙を誕生させた「偽真空の宇宙」というものはいつ始まったのかの問題は残る。

 また、ビッグバン宇宙は1点から始まり、今も膨張しているということだが、その外側はどうなっているのか。また、最初にあった「偽真空」という宇宙の果てはどうなっているのか、の問題も解けていない。

 

X インフレーション宇宙と、旧定常宇宙論の比較

@ 旧定常宇宙論

宇宙にまず真空の空間がある。そこに物質が生まれた。真空の空間は膨張しない。

A インフレーション宇宙

宇宙にまず偽真空の「無」がある。そこに宇宙の卵が生まれた。偽真空の宇宙は膨張しない。

 このことから、まず空間があったということは共通している。それは膨張していないということも共通している。すなわち、真空の定常宇宙空間があったといっているのは共通である。違いは名称だけだ。真空も、偽真空も共に何もないのだから同じ真空だといえる。同じことに違う名前を付けただけだということがわかる。

 根本的な違いは、生まれたのが素粒子か、宇宙の卵かである。

旧定常宇宙論では、動かない真空の宇宙の中にランダムに無数の素粒子が長い時間をかけて生まれ、素粒子が原子になりそれが分子になり、ガスによる巨大構造ができ、その中に銀河団のガスができ、やがて銀河ができという順序だ。

インフレーション宇宙論では、動かない偽真空の宇宙の中に、宇宙の卵が無数に生まれ、その一つが膨張して宇宙を作るという筋書きだ。膨張するのは、出来た宇宙である。元からある、偽真空の空間は膨張しない。定常である。

 違いは、真空から直接素粒子が生まれるのか、宇宙の卵が生まれるのかの違いだけである。この違いはエネルギーの違いである。素粒子は物質としては最小のエネルギーである。宇宙の卵は宇宙最大のエネルギーである。両者の違いは宇宙最大の違いであるといえる。

共通点は、どちらも、根本舞台は、膨張しない空間であるということだ。その意味で共に定常宇宙論であるといえる。

 

Y ダークマター

 ダークマターは、ビッグバン宇宙論の矛盾から必要とされた。膨張する宇宙で、物質が収縮し銀河ができるには物質も時間も足りない。そこで、謎の重力を必要とした。

 これは発見されていない。ダークマターの重力は太陽系にはないことなどから、観測的には存在しないといえる。

Z ダークエネルギー

この存在も、太陽系では観測されていない。通常の宇宙のエネルギーの総量の数十倍もあるのだから、太陽系でも何らかの影響を及ぼすはずだが、それが何一つ現れていない。太陽系にはないということだ。すなわち太陽に似た恒星の周りにはないということだ。銀河系も膨張は確認されていないから、銀河系にもないということだ。

物質のエネルギーはE=mcから巨大なエネルギーだ。ダークエネルギーはその数十倍あるという。重力の物質の総エネルギーに占める割合はそれに比べて非常に小さい。銀河系のダークエネルギーと重力を比べると、ダークエネルギーの方が格段に大きいはずだ。それなのに、銀河系は膨張していないということは、ダークエネルギーがないということになる。

[ 宇宙背景放射

 宇宙背景放射は宇宙の塵の出す光である。これが宇宙の物質の平均温度であるといえる。宇宙空間はこの温度で平衡時状態になっているということの証拠である。

 ビッグバン宇宙の名残という証拠はない。ガモフが言ったということはなんの証拠にもならない。単なる権威主義だ。

 ビッグバンは1点から始まったということだ、膨張しても中心は爆発の始まったところになる。宇宙の晴れ上がりのとき光は直進する。それから138億年たつと、直進する光は元のところから、138億光年のところにある。宇宙膨張があればもっと遠くにあることになる。宇宙の真ん中には宇宙の晴れ上がりのときに直進を始めた光はなくなる。宇宙の端にしかないだろう。それが今地球に到達できるわけはない。地球は宇宙の端にはないのだから。地球を中心に百二十億光年先までどこにも銀河があるのだから。

 塵の光なら、いつも全天から降り注いでも矛盾はない。そして全天に水素を中心とした粒子があるのは観測されているので、証明されているといえる。

 

\ インフレーション宇宙の矛盾

(1)荒唐無稽な時間

非常に短い時間に何でも起こる。

虚時間

(2)今の物理学に合わない状態

ア インフレーション

10−36秒〜10−34秒の間に、空間が1兆×1兆×100万倍になる。どのような素晴らしい計算でもそれは机上のことである。実際にこのような速度は出ない。現在までに光速以上の速度は観測されていないことから、これは否定できることになる。

空間膨張とは、何がどのようになることなのか。今の物理学では理論も証明もない。

また、このような高速膨張の仕組みの理論も実証もない。

イ 物質密度の問題

宇宙年齢10−27秒のとき、宇宙の大きさは1000kmであった。このとき素粒子ができたという主張だ。

1000kmの球の中に宇宙全部の素粒子が詰まっていたらブラックホールになる。銀河1個でもブラックホールになる。今の物理学では説明できない状態だ。

 このような短時間で全宇宙の物質が無からできるわけがない。地球1個だってできないだろう。

 

結論

インフレーション宇宙論は、今の普通の物理学では説明も証明もできないことだけでできている。すなわち、すべてが謎でできているといえる。魔法と同じだ。非科学の理屈でできている。もちろん実証された現象もない。手前みそな非科学理論と、無実証しかないということはサイエンスフィクションとそっくりだ。SFでももう少し科学的といって差し支えないだろう。インフレーション宇宙論は非科学の世界であるといえる。間違っているといえる。