「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 42

著者 高田敞

     



(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

{元素は,ダークマターを説明できるほど多くは存在しない}(P136

 

{そもそも、元素は宇宙の初期にそんなに多くはつくられなかったのです。}

この本の主張

 物質ができたときをインフレーション論では下記のようにいう。

・ 10−27秒のときインフラトンのエネルギーが素粒子に姿を変えた。

・ 10−10秒のとき反粒子が対消滅した。

今ある物質の10億倍の粒子と10億倍の反粒子が対消滅する。生成された粒子の21億分の1の粒子が生き残り、この後すべての銀河と宇宙にあるすべての物質を作ることになる。ダークマターは別ということだ。

・ 宇宙のすべての物質は10−27秒から、10−10秒までの間にはできていたということである。

・ この粒子が陽子と中性子になり、その陽子と中性子が変化した物質の総量が、銀河間の重水素量から計算したところダークマターの{10分の1から2分の1程度しかありませんでした}いうことだ。

・ ダークマターの生成と消滅は書かれていないが、ダークマターの方は通常の物質の2倍から10倍残ったということらしい。

問題1

{宇宙の初期はあまりに高温だったため,原子は一かたまりでいられず,構成要素の陽子や中性子,電子にわかればらばらになっていました。}

考察

 素粒子がつくられたのは宇宙誕生後10−27秒であると書いてある。このとき宇宙の大きさは1000kmということだ。

 この大きさで考えてみる。

{宇宙は生まれた直後、高温,高密度の灼熱状態でした。このとき,宇宙ではクォーク,電子,光子などの素粒子が活発に飛び交っていました。}とあることから、生まれた直後の宇宙には素粒子が活発に飛び交う空間があったということになる。

この1000kmの宇宙で飛び交うことができるのだから、確かに{元素は宇宙の初期にそんなに多くはつくられなかったのです。}ということはいえる。

 ではそれだけの素粒子でいま宇宙に観測されている銀河を作ることができるのだろうか考えてみる。

1000kmの空間では小さな銀河1個だって詰め込むとブラックホールになってしまう。もし何らかの原因で宇宙初期に生まれた素粒子がブラックホールにならないとしても{素粒子が活発に飛び交う空間が}あるとは考えられない。

 反対に、宇宙初期に、活発に飛び交えるほど素粒子が少ないと、その量ではこの後、銀河一つ作れないということになる。観測から数千億はあるだろといわれている銀河を作るには、はるかに多くの素粒子が生まれていなくてはならない。

 とくに、この本の理論{観測できない広大な宇宙}からすると、数千兆の銀河さえあると思われるのだから、小さな初期宇宙の中で飛び回れるほどの素粒子の量では、とてもこの本の述べている宇宙の物質世界を賄いきれないだろう。

 では、元素はこの後生まれてきたのだろうか。それはインフレーション論にはない。10−10秒のとき反粒子が対消滅したと書いてある。このとき生き残った素粒子がこの後全宇宙の物質になると書いてある。少なくとも10−10秒のときにはすべての物質のもとはできていたということだ。1000kmの宇宙に入るわけがない。ましてバラバラに飛び回るスペースなどできるわけがない。

結論

ブラックホールになるにしろ、飛び回れるスペースがあるにしろ、それでは今観測されているような星や銀河に満ちた宇宙はできることはないといえる。

 

問題2

ダークマターはいつからあったか。

考察

ダークマターがあったとしよう。その量は物質の5倍から10倍ということだ。ではそのダークマターはいつできたのだろう。ファーストスターができるときダークマターが関与したということだから、初期宇宙にはできていたと考えられる。

 元素だけでさえブラックホールになるのに、そこにそれの5倍ものダークマターを詰めたら、宇宙は始まった途端に潰れてしまうだろう。

結論

宇宙は1点から膨張していったというのだから、初期宇宙はどうしても小さいことになる。その始まりのときすべての物質ができることにしたら、どうしても入れもの(宇宙)の容積が大幅に足りなくなってしまう。物質や、ダークマターは入りきらなくなる。

かといって初期宇宙に生まれた物質の量を少なくすると、せいぜい星1個くらいしかできなくなる。物質が入るように宇宙の膨張率を上げると、ハッブルの法則に反することになる。あちらを立てればこちらが立たずだ。原因はなにかというと、インフレーションビッグバン論を正しいとして考えているからだ。

 

問題3

ヒッグス場と重力

考察

重力が分岐したのが10−44秒。ヒッグス場が物質に質量を与えたのが10−11秒。反粒子の消滅が10−10秒.ということだ。

すると、物質が、重力を持った時には、まだ今の宇宙の20億倍の素粒子が消えずに残っていたということだ。今の物質になる素粒子と合わせて20億倍もの素粒子が重力を持って宇宙に詰まっていたということになる。

これにおそらくダークマターも加わっているだろう。ダークマターも重力を持っているということだから、このとき、一緒にヒッグス粒子から重力をもらったということになるのが自然だろう。ダークマターの性質から、それは無理だとは思うが。

すると、この10−11秒のときの宇宙には、今の宇宙の物質の2000000006倍もの量の重力を持った物質が詰まっていたということになる。ブラックホールになるだろう。それをうまくすり抜けても、膨張することはできないだろう。太陽一つの重力だって冥王星を空間膨張に打ち勝って、引きつけているのだから。

太陽系はスカスカである。それでも空間膨張の影響は0である。小さな彗星でさえ空間膨張に打ち勝って遠くから太陽にむけて進んでくる。太陽系の10×××倍も物質が詰まった状態では空間膨張は重力に完全に負けてしまうだろう。すなわち、物質は空間膨張とともには膨張できないということだ。

結論

矛盾しかないといえる。やはり、物質は出来たとたんにブラックホールになるしかない。そうでなくても、空間膨張の力だけでは物質は膨張できない。

 

問題4

{原子核ができる前の「陽子と中性子の密度」が高いと頻繁に衝突がおきるのでヘリウムが多くつくられ・・}

考察

陽子と中性子がつくられたのは、10万分の1秒のときだという。このとき、宇宙の大きさは今の宇宙の1兆分の1ということだ。しかし、今の宇宙の大きさがまるっきり不明であるということだから、このときの大きさも不明である。計算するにも分子の大きさが不明では答えは出てこない。

しかし、10万分の1秒では宇宙はそんなに大きくはなっていないだろう。光でも3kmしか進まないのだから。光速の10万倍の速度で膨張して、やっと1秒光年の距離だ。光速の3153600000000倍の速度でやっと1光年になる。ハッブル定数(326万光年で、69,32km/S)からすると、1光年の宇宙空間の膨張速度は約2cm/Sだ。

初期宇宙はハッブルの法則とはまるっきり関係ない膨張をしていたようだ。10−27秒で1000kmも大きくなっているのだから。これは光速の33×1020もの速度である。

机上の空論である。実際にこんな速度が出るわけがない。机上の空論なら私だって負けないですよ。光速の38×1024807倍。どうですか。さすがのインフレーションだって勝てないでしょう。もっと速い速度だっていくらでも書けますよ。インフレーションビッグバン論は根拠がある、あなたのは根拠がない、ということでしょう。

ビッグバン宇宙が、光速の33×1020もの速度で膨張するエネルギーの出所と、ハッブルの法則との整合性と、エネルギーがどこに、どのように働くと、空間がそのような膨張速度になるのかの理論を示さなくてはならないでしょう。それから、頑張って実証してみましょう。どれ一つできないでしょう。理論も実証もないということは私の数字と同じです。

 

宇宙誕生10万分の1秒のとき、光速の3153600000000倍の速度で膨張して宇宙はやっと1光年になる。その宇宙空間に、出来たばかりの全宇宙の素粒子が詰め込まれているのだからすべてが重なり合って存在するしかないことになる。{「陽子と中性子の密度」が高いと頻繁に衝突が起きる}。という状態になるはずがない。この前、10−11秒にはヒッグス場が素粒子に質量を与えているのだから、そのとき一瞬でブラックホールになってしまっているはずだし。このときヒッグス場は、陽子の130倍も質量のあるヒッグス粒子を隙間なく生成するのだから、宇宙全体の素粒子と相まって一瞬以下の時間で宇宙のすべての物質はブラックホールになってしまうだろう。

ここを切り抜けたとしよう。

陽子と中性子はぎっしり詰まって身動きどころか一つ一つが、同じ所に重なって存在しなくてはならなくなるだろう。{頻繁に衝突が起きるので、ヘリウムが多くつくられ}る状態にはなれないはずだ。

この本は、宇宙には数千kmの空間で素粒子が飛び回れるほどの物質しか生まれていないと考えているようだ。

結論

これも、他の理論と整合性がない。この場面を説明するためだけに考えられた理屈だ。

今ある宇宙と物質量が矛盾していることになるのは、ダークマターを通常の物質ではないということにするための理論であるからなのだろう。

 

 

問題5

{現在の宇宙に,観測から考えられるダークマターの10分の1から2分の1程度しかありませんでした。つまり元素は少なすぎ,元素を材料とするなにかでは膨大な量のダークマターは説明することができないのです}

考察

 上に書いたように、せいぜい数千kmの大きさしかない空間で飛び回れるほど少ない量の素粒子では、銀河一つ満足に作れないのは明らかだ。ダークマターどころではない。満足に星さえ作れないのだ。

 それは置いておいて、星を作るための素粒子の量は足りていたとしよう。

この広大な宇宙空間の5倍以上が元素以外のダークマターで占められているという主張だ。それを考えてみる。

 銀河、局部銀河団、銀河団、超銀河団、大構造と、すべて通常の元素でできているのが観測されている。謎のダークマターはあるというけれど、たったの1個も実際には観測されていない。5倍もあるものが一つも観測されないのに、5分の1のものが無数に観測されている。

 変な話だ。見えないの、相互作用しないのは言い訳とそっくりな言い分だ。電磁波を出さない、相互作用しない、しかし、重力だけはしっかりある。ドラえもんのポケットから出た、のびたのご都合のための機械と同じ性質だ。

 重力が多すぎるということだが。この多すぎる重力が、謎の物質であるという証拠はない。通常の物質ではないといろいろ証拠を並べているが、謎の物質であるという証拠もない。そこで考えてみよう。

この本では、観測されている、銀河団をおおう水素は一度も述べられていない。銀河をおおうハローに水素を中心とした希薄なガスが観測されたことも述べられていない。銀河系と、アンドロメダ銀河はガスでつながっているということも述べられていない。都合の悪いことは一切書かない。自分らの理論に都合のいいことだけしか書かない。これは科学の方法論では間違いである。科学は真実を見つけるためにあらゆるデーターを検討し、あらゆる疑問、反対の現象を真っ先に検討しなくてはならない。

 しかし、いくら隠してもほころびがでる。事実は隠しおおせないのだ。

{1996年,数十億光年先のクェーサーとよばれる非常に明るい天体の観測から初期宇宙の重水素量がわかりました。クェーサーからの光は,宇宙空間の非常に長い距離を旅して,重水素を含む銀河間の水素ガス雲を通過してきました。}

これは、重水素の量から、ダークマターが通常の物質ではないというために書かれている。しかし、{宇宙空間の非常に長い距離を旅して,重水素を含む銀河間の水素ガス雲を通過しました。}と、銀河間に水素ガス雲があることを述べている。{数十光年先のクェーサー}からの光だから、銀河間(銀河団内)だけでなく銀河団の外にも、水素ガスがあることを示唆している。また、ガス雲があるということは、ガス雲にはなれない希薄なガスもあるということだ。通常の観測では観測されないほど希薄なガスもあるということになる(本当は観測されてはいる。違うものとみなされているだけ。)。宇宙空間は、星のあるところよりないところの方がはるかに体積が多い。いくら希薄でもそこに水素があると、多量になる。それがダークマターといえる。

 事実が顔を出す例はほかにもある。宇宙背景放射の観測だ。宇宙背景放射はビッグバンの光である。だからビッグバンはあったといっている。しかし、背景放射は宇宙の塵の光であるという意見は書かれていない。宇宙空間にはどこにも塵がある。これは銀河や上に取り上げたクェーサーなどの光のスペクトルで観測されている。塵は光を出す。塵は光で相互作用(交流)しているから一定温度になる。その温度が2,7Kということだ。この説を科学的に否定できないから取り上げないのだ。

 そしてもう一つ重要なのは、この宇宙背景放射が塵の光としたら、ダークマターは、宇宙の塵であるということになってしまうことだ。宇宙空間全体に満ちている塵ということにしたら、今まで見えていた(観測されていた)物質にこの、見えていたのに見えないとされていた宇宙全体の塵の量が加算される。見えない物質の正体が見えてしまう。

だから、これをビッグバン名残の光として、塵の光という説を科学的に否定できないから無視するしかないのだ。

 

まとめ

 初期宇宙は矛盾だらけである。光速の何兆倍もの速度で膨張しても、ブラックホールになってしまったり、ハッブルの法則により空間は膨張しているといっておきながら、小さい宇宙ほど、速く膨張しているとしたりしている。そして、不利な現象は無視し、都合のいい解釈しかしなかったりと、科学ではなく、まるでSFアニメの世界と同じになっている。