「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 40

著者 高田敞

 

     

 

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

{宇宙の中には,膨大な量の見えない物質「ダークマター」が存在していた}(P132

問題1

{銀河団をおおう未知の重力源}

@ 1970年頃、ベラ・ルビン博士らは、銀河の回転から。{銀河には星の質量の5〜10倍もの見えない物質がある}という発見をする。

A この発見の40年前、フリッツ・ツビッキー博士は。かみのけ座銀河団の銀河の運動から{実際に見える銀河の質量をすべて足し合わせたものより,はるかに大量の見えない物質が存在することがわかった。}これらはミッシングマスと名付けられた。

これが見えない物質ダークマターの始まりである。

{マイケル・ターナー博士は,「宇宙にある物質のほとんどは,星以外のところにあるのです。残りは見えません。}と述べている。

考察1

@、の観測は、見える星を比較の対象にしている。1970年頃の観測機器の性能では、銀河の中や外にある星間物質、とくに、中性水素を観測するのは難しかったのではないだろうか。実際に、{銀河には星の質量の5〜10倍もの見えない物質がある}ということから、星以外の銀河の星間ガスは{見えない物質}になっている。

 現在では観測機器の発達で、銀河はすっぽり星間ガスに覆われ、星の見えるはるか外まで電離水素や中性水素に覆われているのが観測されている。われわれの銀河系の外にも水素分子や原子は発見され、それは、アンドロメダ銀河の水素ガスとつながっているということだ。

 アンドロメダまでは230万光年ある。銀河系は10万光年である。アンドロメダまでの半分を銀河系の領域としても、半径115万光年である。すると、銀河系の星が占める体積の1520倍の体積に、水素を中心とした分子が存在するということになる。

 これが見えない物質である可能性は十分ある。1970年当時、この水素は観測されていないことが、{星の質量の5〜10倍}という表現から分かる。この見えない物質は、水素分子や原子である可能性がある。少なくとも、この水素を観測できなかった1970年頃の、ベラ・ルビン博士の観測を基本にして、ダークマターは通常の物質ではないとするのは間違いである。

 P135に{ダークマターの「ハロー」が銀河を囲む}という図がある。このダークマターの図と同じ所に、電離水素が観測されている。普通の物質ではないダークマター候補の物質は何一つ観測されていない。観測されている水素がダークマターの一番候補になるはずなのに、それを完全否定して、何一つ観測できていない普通でないものをダークマター候補にしている。ダークマターが水素では困ることでもあるのだろうか。あるのである。水素では、ビッグバン理論に不都合が生じるから、水素であってはならないのだ。ビッグバン論の証明の為に水素は消えてもらおうということなのだ。

Aの観測は、銀河団の銀河と見えない物質の比較である。

 1930年代の観測である。まだ、アンドロメダ銀河が銀河団内にあるか外にあるかの議論の決着がついて間がないころである。

 この頃の観測技術では、とても銀河団の電離水素や中性水素は観測できなかった。だから観測できる星の光による銀河とその他の物を比較していることになる。

 P133の{銀河団をおおう未知の重力源}という図がある。{銀河団をおおい,銀河たちをつなぎとめているダークマター}という説明がある。これは理論から推測された図である。

 では実際の観測ではどうだろう。現在の観測機器は、銀河団をおおっている高温の電離水素が観測されている。その分布はこの図とそっくりである。

 現在の観測機器でも、中性水素は観測するのが非常に難しいということである。宇宙の温度がほぼ2,7Kであるから2,7Kの中性水素の光を検出するのが困難だということだ。このことから、高温の電離水素の占める領域にも、低温の為に見えない中性水素が存在することが推測される。

 中性水素や電離水素がダークマターの候補の1番目に名乗りを上げてもおかしくない。ほかの候補は何一つ観測されていないのだから。

 2,7Kの宇宙背景放射が宇宙の中性水素の出す光としたら、このことでもビッグバン論は非常に困ったことになる。ビッグバン名残の光でなくなってしまうからだ。しかし、宇宙には、どこも水素を中心とした非常に希薄なガスが存在するのは、遠い銀河や銀河団の光のスペクトルに暗線が入っていることから実証されている。広大な宇宙空間だ。いくら希薄でもその量は膨大になるはずだ。

問題2

{川崎雅裕教授は,水素原子ガスがダークマターである可能性はないといいます。「水素原子ガスはある特定の波長の電磁波をつねに出しています。宇宙空間の水素はこの電磁波から簡単に観測でき,私たちの銀河系で分布図がわかっているくらいなのです。その観測結果からすると,水素原子ガスはそんなに多くは存在しないと思われます」}

考察

@ さきに書いたように、銀河団はすっぽり水素ガスに包まれているという観測がある。銀河もすっぽりと水素ガスに包まれているという観測がある。

A 宇宙には水素ガスが一番多い

B 恒星ができるとき、星間ガスが集まる、ガスが収縮して星が集団で生まれる。星が生まれると、その紫外線で周辺のガスは吹きとばされる。星になるガスより、吹き飛ばされるガスの方がはるかに多い。すなわち銀河には星になり損ねたガスの方が多いということになる。これは古い楕円銀河などでは、ガスが少ないが、渦巻き銀河などはまだまだガスの方が多いといえる。実際、衝突している銀河は、急激に星を作っている。これは銀河の衝突で、星間ガスが不安定になり収縮したためである。ガスが乱されると、一気に星ができるほど多くのガスが銀河には存在しているということである。

C 太陽系の空間を考える。

  太陽系の空間は、太陽からの太陽風が吹いている。これは電離水素である。太陽風は、惑星のあるところよりはるか遠くまで吹いている。もちろん中性水素もある。

  太陽系の空間はそのほかに少量の通常の物質からなる塵がある。ところが、ダークマターの候補である謎の粒子はたったの一つも観測されていない。

 太陽系の空間には水素が一番多くあるといえる。

D {私たちの銀河系で分布図がわかっているくらいなのです。}

ほんとにそうなのだろうか。アンドロメダまでつながっているガスは、かなり多量であると思われるが、そんなに少ないのだろうか。

E 銀河団は水素分子や原子に覆われているのが観測されている。銀河系も銀河団に所属しているので、銀河団のガスに大きく覆われていると考えられる。

結論

川崎雅裕教授は宇宙の観測事実をどのように考えているのだろうか。銀河団は大量の水素ガスに満たされているのが観測されている。その銀河団が連なって、大構造を作っている。大構造にも、水素ガスがあることは想像できる。銀河団が連なるのと同じように大構造に沿って水素ガスが連なっているはずだ。銀河や銀河団ができる前は水素ガスであったはずだから。星のできる過程を見ると、星になるガスよりなれない方が多いことと、希薄なガスが占める空間が大きいことなどを考えると、水素ガスはかなりのウエートを占めると思われる。

少なくとも、ベラ・ルビン博士やフリッツ・ツビッキー博士が考えた、ミッシングマス(のちのダークマター)はガスの占める割合が高いはずである。彼らには星しか観測できなかったのだから。

太陽系空間には水素ガスが一番多い。謎の粒子は一つも観測されていないことを考えると、水素がダークマターの一番候補になるはずだ。太陽系で観測されないものが、物質の5倍もあるはずがない。

まとめ

インフレーション・ビッグバン論得意の、近くて観測の正確にできるところには一切ないが、遠くて観測が不正確なところには大量に現れるという現象である。

ダークマターが、謎の物質であるという最大の理由は、インフレーション・ビッグバン論者の必要性だ。彼らには、ダークマターが水素であっては困るのだ。水素では、ビッグバン後、星も銀河もできないことになってしまう。どうしても魔法使いのダークマターがいるのである。