「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 35

著者 高田敞


     


(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

{濃密なガスの中で,宇宙最初の星が生まれた}(P98)

宇宙誕生後{500万年後以降の宇宙}

{「ダークマター」という物質がたくさん集まった場所ができました。}

{このダークマターのもとに,水素やヘリウムのガスが集まってきました。}

{水素やヘリウムはしだいに凝縮していき,濃密なガスのかたまりになります。}

{宇宙誕生から3億年後,凝縮が進んだガスのかたまりは,密度が極めて高くなりました。}

{周りにあるガスをさらに取り込んで急速に質量を増やし始めます}

ファーストスターが誕生

問題1

{「ダークマター」という物質がたくさん集まった場所ができました。}

考察

 ダークマターはいつからあったのか。おそらく、宇宙誕生後10−27秒で粒子ができたときに同じようにして生まれたと考えられる。

 そのときの宇宙に比べ、500万年後ダークマターが集まったころの宇宙は非常に大きくなっていたはずだ。先に書いたように、光速をはるかに超える膨張でなければ物質はブラックホールになってしまうのだから。ハッブル定数では、距離が離れるほど、離れる速度は速くなるということだから、膨張につれて、物質間の離れる速度は大きくなっていったはずだ。だから、ダークマターの粒子間の距離も10−27秒のときに比べて、格段に大きくなっていたはずだ。

 500万年後極端に大きくなったダークマター間がなぜ収縮に転じたのか。その仕組みを説明しなければならない。それはない。

 宇宙誕生後10−27秒でできたダークマターは隙間もなかったはずだ。それが空間膨張の斥力で広がった。ところが、500万年後離れてきていたはずのダークマターが、空間斥力に打ち勝って突然収縮を始める。なにが変化したのだろう。

 ダークマターの重力は、距離が離れたので、たがいに及ぼす影響は大きく減っているはずだ。普通の物質なら重力は距離の2乗に比例して減るのだから。だから、これだけでは斥力に打ち勝てないはずだ。それまで膨張していたのだから。

 では斥力が減ったのだろうか。空間の斥力は膨張しても減らないとこの本には述べている。空間が増えると、増えた空間の分だけ斥力が増える。したがって、距離に比例して膨張速度が増えるというのがハッブルの法則だ。

 ダークマター粒子間に働く重力は距離の2乗に比例して減っていく。一方、斥力は距離に比例して大きくなる。本来なら膨張が加速されるはずだ。ところが反対に収縮を始めたという。どのような計算なのだろう。

結論

もし、ガスの濃いところと薄いところがあれば、濃いところは収縮する、というオリオン星雲のようなことを考えて述べているなら大きな間違いである。オリオン星雲は、太陽系の惑星の軌道や銀河系とアンドロメダ銀河が接近しているのと同じように空間膨張の影響を受けていないから、凝縮して星になれる。宇宙初期にびっしり詰まっていた粒子が、空間膨張で離れたなら、上に述べたように、二度と収縮することはできないはずだ。

問題2

{このダークマターのもとに,水素やヘリウムのガスが集まってきました。}

考察

(1)宇宙初期との比較

これも上と同じである。宇宙初期から宇宙膨張により拡散してきた水素やヘリウムは、たがいに及ぼす重力は減り、斥力は増えているはずだ。もちろんダークマターとの関係も同じだ。間の距離は増えているから重力は減り、間の空間は増えているから斥力は増えているはずだ。

 ダークマターが集まったからといっても、宇宙初期ほどには、濃密にはなれないはずだ。集まった重力は弱いはずだ。

 したがって{このダークマターのもとに,水素やヘリウムのガスが集まってきました。}という現象は起こり得ないことになる。かえって拡散が加速されるはずだ。

(2)ダークマターの性質。電磁波を出さないということから考える

ダークマターは衝突しても熱を出さない。電磁波を出さないという性質を持っているということだ。重力はあるのだから位置エネルギーはできてしまうだろう。衝突のエネルギーを電磁波として外には放出しないということだから元の位置まで跳ね返ってしまうはずだ。これではダークマターは収縮できないことになる。

では衝突しないとしたらどうなるだろうか。そのまますり抜けて、重力によって元と同じ距離だけ進んで止まる。ダークマター粒子間の距離は元と変わらない。これの繰り返しになるはずだ。やはり、収縮できない。

結論

何故膨張から収縮に転じたかの力関係の変化が書いていない。ただ濃いところが集合したというのでは、それまでのもっとひしめき合ったいたときでさえ膨張していた宇宙と整合性がない。

また、エネルギー不変則からすると、収縮するときは、位置エネルギーが減じるのだから、そのエネルギーを何らかの形で外に放出しなければならない。その放出の仕組みが書いていない。これは重要なことだから、ダークマターが集合するというなら、必ず解明しなくてはならない。

問題3

{水素やヘリウムはしだいに凝縮していき,濃密なガスのかたまりになります。}

考察

 ダークマターによって水素やヘリウムが集まり、凝縮したということのようだ。

 その仕組みを考える。

現在の星の誕生はこれとは違う。

 最初、他の星の万有引力や、爆発や、銀河の回転などの力で、星間ガスが偏る。すると星間ガスは自身の引力で収縮する。しかし、収縮すると、ガスの粒子の衝突が多くなる。衝突すると跳ね返る。この跳ね返る力は位置エネルギーである。位置エネルギーは万有引力からつくられるから、そのままでは、ガスの粒子はもとの位置まで跳ね返ってしまう。永久に収縮できない。ところが、衝突すると、位置エネルギーの一部は、熱に変わる。熱は電磁波として放出される。そのために、もとの位置まで跳ね返ることができなくなる。

物質の持っていた位置エネルギーが、電磁波によって外部に放出されることで、位置エネルギーが減る。これが繰り返されることで、ガスは収縮していく。

恒星ができるころになると、衝突のエネルギーや、引力や、遠心力や磁力などで、エネルギーは極端に集まるために、ジェットとして、位置エネルギーが宇宙に放出される。これで、位置エネルギーが大きく減じ、星ができる。

これらの過程の中に、ダークマターは関与していない。現在観測されている、星の誕生には、通常物質しか関係していない。

では、ファーストスターはどうだろう。

まずダークマターによって水素やヘリウムが集まるという。ダークマターは、通常の物質の5倍くらいあるというから、水素やヘリウムは集まるとしよう。その後はどうなるだろうか。

水素やヘリウムは濃密なガスの塊になるという。このときダークマターはどうなっているだろうか。ダークマターも、通常の物質を引きよせたのだから濃密なガスの塊に反対に引き寄せられるはずだ。ところが上に書いたように、ダークマターは、位置エネルギーを外に放出する仕組みを持っていないから収縮できない。

実際、通常の物質の5倍もありながら、ダークマターでできた星が存在しないことや、太陽内部や、地球内部にはダークマターが存在しないことから、通常物質と、ダークマターの混合星も存在しないことがいえる。もしあったとしても、ダークマターは収縮しないことがわかる。

すると、ダークマターによって集まった通常の物質が収縮していくとき。ダークマターのガスの中で、通常の物質だけが収縮していくことになる。そのとき、周りに取り残された、通常の5倍もあるダークマターの重力で、通常の物質は引き戻されてしまうことになるのではないだろうか。少なくとも収縮にブレーキがかかることにはなるだろう。

結論

現在の星のできる仕組みと、ファーストスターができる仕組みが異なる原因は何だろう。初期宇宙と、現在では宇宙の仕組みが違うということなのだろうか。

そもそも、エネルギー不変則からすると、ダークマターは位置エネルギーを放出するすべを持たないのだから{「ダークマター」という物質がたくさん集まった場所}はできないはずであるのだが。