「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 32

著者 高田敞

 

 

     

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

{ペアで生まれたはずの素粒子の“片割れ”が,姿を消した}(P92)

 

問題1

{宇宙誕生から10−10秒後の時点で、10億個の反粒子に対して粒子が1個だけ多かった}{宇宙が膨張してだんだん温度が下がってくると,生成はおきにくくなり,消滅ばかりが起きるようになります。}

考察

粒子の10億個に1個の割合で残った粒子がこの宇宙のすべての物質を作ったというのだから、宇宙誕生のときには,粒子は、今の宇宙の粒子の10億倍なくてはならない。反粒子も、今ある通常の粒子の10億倍なくてはならない。合わせて20億倍の粒子がなくてはならない。それを、10−10秒の間に作らなくてはならない。

 こんな短い間に、真真空は、今の宇宙の物質を構成している粒子の20億倍の粒子を生成したというのがインフレーション宇宙論だ。

20億倍といっても、ビー玉20億個ではない、地球が20億個ではない。全宇宙の物質の20億倍である。宇宙が20億個できる量だ。

今ある宇宙の物質がどれくらいあるか分からないから、それがどれだけの量かわからないが、その物質を作るエネルギーを、できたての宇宙の小さな空間が持っていたというのだ。

そのエネルギーをどこから調達したのか説明する必要がある。インフラトンという説明だが、インフラトンはどこからエネルギーを調達したのか。真空のエネルギーということだが、真空にそのような巨大なエネルギーがあるということを証明しなくてはならない。真空は、最小のエネルギーしか持たないということだった。せいぜい揺らぎぐらいだ。大波ではない。

結論

机上の空論である。計算上はそうかもしれないが、机の上だけのことだ。実際の宇宙ではそんな簡単にこの宇宙全体の物質を構成している粒子の20億倍もの粒子ができるわけがない。地球1個分の粒子だって、100億分の1秒とかで作るのは不可能だ。1個の粒子を作る反応時間だけでもそれを上回るのじゃないだろうか。

言うは易し行うは難し。素粒子ができた、と書く時のエネルギーと、地球が実際にできるときのエネルギーは、10354倍くらい違うだろう。それが全宇宙の物質だけではなく、その20億倍もの粒子を生成するというのだ。いかにインフラトンが素晴らしくても、水の相転移が、気体になったり個体になったりする素晴らしい現象であっても、ちょと、かなり、徹底的に無理なんじゃないだろうか。 

(注;10354倍なんてどこから出てきたのだ、ということでしょう。もちろん冗談です。この本の、10××を真似してみただけです。この本に出てくるいろいろな10××だって、大して根拠はないでしょ。絶対正しいといえますか。言えないでしょ。もちろん実証もされてないし。インフレーションだって、100mになったとか、この宇宙より大きくなったとか、まるで適当なんだから。100mと100kmはまるで違う。それが、100mと宇宙より長いか決まらなくても大して問題ではないようなことを言っているのだから。昔のことだから正確なことはわからないということのようだ。だから、10354だってその誤差の範疇にはいるとうことだ)

問題2

{10億個の反粒子に対して粒子が1個だけ多かった。}

考察

このことから、初期宇宙では、今の物質の10億倍の粒子と10億倍の反粒子が生成されていることがわかる。それと、生き残りの今の宇宙にあるすべての粒子である。このほかに、今ある粒子の5倍強のダークマターと陽子の150倍ほど質量のあるヒッグス粒子も宇宙全体にびっしり生成されている。

 これらが、小さな宇宙にぎっしり詰まっているということになる。太陽だって3kmほどの球に詰めたらブラックホールになるという。宇宙に今ある全物質の20億6倍+ダークマター+ヒッグス粒子が小さな初期宇宙につまっていると完全にブラックホールになるはずだ。

今ある宇宙で考えてみよう。20億6倍の粒子があるとする。すると、銀河系が20億5個できることになる。大小マゼラン銀河が20億5個できることになる。アンドロメダ銀河が20億5個できることになる。アンドロメダ銀河と銀河系は230万光年ある。銀河系は10万光年だ。23個分での距離だ。半分ずつ受け持ったら11,5個分だ。体積で考えると、3乗だから、銀河系が1520個でアンドロメダ銀河と銀河系がくっついてしまう。20億個の銀河だと1か所に1315789個の銀河が重なり合わなくてはならない。このあたりの宇宙は銀河で埋め尽くされる。

太陽系もそうだ。太陽が20億5個できる。地球も火星も土星も20億5個できることになる。太陽系は、星で埋まってしまう。

このように、現在の、広大な宇宙でも大変なことになる。

ところが、93ページの図では、粒子や反粒子が飛び回っている。ブラックホールの中で粒子が飛び回っているようなものだ。中性子星の中だってこんなに飛び回れないはずなのに。

結論

宇宙の大きさと、物質の全量を考えていないのだろう。ここでは、粒子と反粒子の説明をするだけだから、宇宙の大きさや、全粒子量などややこしいことは考えないことにしているのだろう。やはりインフレーションの説明したい現象に必要なことだけを取り上げて、困ることは無視するという方法だ。

 

問題3

{粒子と反粒子は消滅しあって、反粒子はなくなり、粒子が1個だけ残った}

考察

このとき10億1個の粒子と、10億の反粒子が反応して、粒子10億個と、反粒子10億個が消滅したという説だ。

すると、この宇宙の20億倍の粒子が消滅したことになる。E=mcから考える。mはこの宇宙の物質の20億倍である。すると、このとき出されたエネルギーはE=(この宇宙の質量×20億)×cになる。

この膨大なエネルギーはどこにいってしまったのか。説明がない。

結論

ここでも、自分たちの理論に不必要なものは、無視をしている。その対消滅で出たエネルギーがあるとしたら、太陽系にもあるはずだ。太陽の数兆倍では利かないエネルギーだろう。しかし太陽系ではそのようなエネルギーは観測されていない。すなわちそのようなエネルギーは存在しないということだ。太陽系は普通の恒星だから、他の恒星にもないということができる。銀河系にもそのようなエネルギーは観測されていない。銀河系は普通の棒渦巻き銀河だから、他のふつうの銀河にも、対消滅のエネルギーはないといえる。そして、それは、宇宙にはそのようなエネルギーは存在しないということができる。遠い銀河もそのようなエネルギーによ手運動が変化しているということは観測されていないから、過去の銀河にも、対消滅のエネルギーは存在しないといえる。以上のことから、対消滅で出たはずのエネルギーは存在しなかったということがいえる。すなわち20億倍の粒子の対消滅は存在しなかったことがいえる。

{宇宙誕生から10−10秒後の時点で、10億個の反粒子に対して粒子が1個だけ多かった。}ということもなかったということになる。