「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 23
著者 高田敞
(以下{ }内は上記本よりの引用)
{真空の世界では,粒子がたえず生まれては消えている}(P66)
問題1
{宇宙の大きさが10のマイナス33乗センチメートルより小さいときには宇宙の存在自体が揺らいでおり,宇宙自体が生成,消滅をくりかえしていたのではないかと考えられているのです。}
考察
{真空の世界では,粒子がたえず生まれては消えている}というのは、量子の世界のことである。量子論は、小さな真空の揺らぎと、小さなエネルギーの粒子の話である。量子論の粒子はエネルギーが小さい。しかし、小さくても宇宙は宇宙のはずだ。巨大なエネルギーがなければ宇宙ではない。E=mc2だから、m=E/c2となり、星を作るのは巨大なエネルギーがいることになる。宇宙は星や、星間雲や、銀河間ガスなど、さまざまな物質に満ちている。これが宇宙なのだから、莫大なエネルギーを持っている。
量子論から生まれるという素粒子は決して宇宙にはならない。素粒子は一瞬より短い間に宇宙より大きく膨張するエネルギーはない。膨大な銀河を作るエネルギーはない。中身のエネルギー量がまるで違うはずだ。
したがって、形が小さいからといって、量子論を適用できるはずがない。
これはなんとなく詐欺臭い。宇宙がそのまま真空から現れるとなると、膨大なエネルギーがどこから湧いてきたのか説明できなくなる。そこで、まず、小さくして形だけから量子論を適用する。まだエネルギーのことは知らんふりしておく。そうすると、粒子と小さな宇宙が同じことのようになる。それでうまく宇宙の卵ができたら、次に、謎のエネルギー源インフラトンなるもの、あるいは、相転移なるものをつくって、急激に膨張したとする。もう宇宙はできたのだから、量子論は関係ない。あとは大きくするだけだ、ということだ。このインフラトンはどこからエネルギーを持ってきたのかどこから生まれたのか不明である。真空の相手にだって、エネルギーはどこからやってきたのか、説明はない。小さく生まれたって、宇宙は宇宙なのだからということなのだろう。うまいやり方だ。
問題は、小さな宇宙にそんなエネルギーがよくあったことということだ。そんな巨大なエネルギーがあると揺らぐことはできないのではないだろうか。石ころだって、揺らげない。その1兆倍の1兆倍の1兆倍の一兆倍の一兆倍でも利かないくらい巨大なエネルギーの塊が一瞬より短い時間に生まれるのだからたんに揺らぎからは生まれない。元々あったとしても、10のマイナス33乗センチメートルより小さい宇宙から生まれるというのはかなり無理がある。
問題2
{粒子と反粒子が同時に生まれる「対生成」}
考察
粒子は「対生成」し、「対消滅」するという。同じ仕組みなら、小さな宇宙も「対生成」し、「対消滅」するということになる。宇宙が「対消滅」したら、どれくらいのエネルギーを出すのだろう。今ある宇宙のエネルギーは巨大である。それが二つ衝突して消えるのだから、残して行く光はものすごいものだろう。火の玉宇宙の倍である。
結論
そんなことは不問であるのだろう。小さな宇宙さえ生まれればいいのだから、いいとこ取りだけして、ややこしいことは考えなくてもいい、ということだ。そのときはまだエネルギーは小さくて粒子と同じくらいだったということなのだろうか。それでも、インフレーションを起こすエネルギーは持っていたはずだし、それは形を変えて、火の玉宇宙を起こし、やがて宇宙の全物質を作るエネルギーのもとなのだから、やはりかなり巨大なエネルギーを持っていたはずだ。
まあ、インフレーション論者はそのことについて何も述べていない。謎のエネルギーとか、水の相転移だとか、適当なこと言っているだけだから反論のしようもない。