「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 19

著者 高田敞

     

 

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

{宇宙に始まりはあったのだろうか}P60

 

問題1

{20世紀以降,物理学者たちは,複雑な式をあやつって,宇宙が誕生する瞬間はどのような様子であったのか,考えを巡らせてきたのです。}

考察

佐藤博士の信念{自然界は単純な法則に支配されているはずです。}ということなのに、宇宙誕生には、{複雑な式をあやつって}いるという。

結論

複雑であろうが単純であろうが、事実ならそれでいいとは思う。ただもう少し統一してほしいものだ。何が間違っているかというと、事実を追及するのに複雑も単純も関係ないことなのに、それにこだわっているから変なことになるのだ。{自然界は単純な法則に支配されているはずです。}は科学的に証明されたのかというと、証明されてはいない。仮説というか思い込みにしか過ぎない法則である。

まさか、複雑な式を操っている物理学者は偉いのだぞ。だから、言っていることは真実なのだぞ、と言いたいのじゃないとは思うけど。

 

問題2

{ごくごく小さな宇宙の“卵”がたくさん生まれています。そしてそのような“卵”の中から}{すさまじい勢いで膨張}したのが私たちの宇宙だそうです。

 イラストがあり、波のようなものの上に、しずくのような宇宙の卵がいくつか書いてある。一つは膨張している。

考察

われわれの宇宙の始まりはインフレーション論ではそうかもしれない。しかし、図の波のようなものはいつからあったのだろう。いつ生まれたのだろう。又、宇宙の“卵”の外側は何なのだろう。偽真空ということなのだろう。では偽真空の宇宙はいつ生まれたのだろうか。

卵と鶏の話がある。卵を産むには鶏がいる。宇宙を生んだのが偽真空なら、それが鶏になる。では偽真空は、いつどこで生まれたのかという問題が生じる。生まれたときが特定されたら、ではその前は何だったのかという問題が生じる。

もちろん、偽真空はどこまで広がっているのかという問題も生じる。

結論

果てのない過去と、果てのない広がりの問題が解決できないのはビッグバン論でも定常宇宙論でも同じだ。

 

問題3

{宇宙が誕生する際には、宇宙の存在自体が定まらない“ゆらいだ”状態であったといいます。}

考察

 宇宙誕生以前は、時間も空間もなかったと書いてある個所もあったが、時間も空間もないのに、どうして、宇宙の卵ができるのか。揺らぐためには、時間経過がいる。揺らぐためには、場所がいる。

 一般相対性理論と、量子論を元に考えだされたものです。ということだが、量子論では、時間も空間もある。一般相対性理論も、重力や加速がある。時間も空間もある。インフレーション論には時間も空間もないところから始まったという。大きな違いがある。

結論

あちらを立てればこちらが立たずですナ。

 

問題4

{宇宙の卵}間の間隔

考察

インフレーション論では、この宇宙は少なくとも半径414億光年あるという。それどころか{宇宙の大きさはどんな形容詞を使っても表現できないほど広大なのかもしれません。}とさえ言っている。

 すると、宇宙の卵と卵の間はこれ以上離れていなければならない。そうしないと、膨張した宇宙同士が衝突してしまう。他の宇宙が衝突しているという観測は今のところない。すると、“卵”どうしは、数兆光年くらいは離れて生まれなくてはならないということになる。それでも、宇宙は無限に広いから大丈夫か。しかし、インフレーション論では空間は卵ができてその中で初めてできるようなことだった。卵の外にいつの間にか空間ができている、困ったものだ。

 この宇宙は138億年前にできたとしても、他の宇宙がいつ生まれたかは分からない。5000億年前かもしれないし、13億年前かもしれないが、宇宙の“卵”が無数にできるなら、どのような可能性もあるのだから。

結論

時間も空間もない偽真空という何かから、無数に“卵”が生まれる。時間がないのだから、いつとは言えない。空間がないのだからどこでとは言えない。困ったものだ。

 

問題5

インフレーション宇宙の誕生と高田式定常宇宙論の誕生の比較

考察

インフレーション宇宙では、時間も空間もないけれど、なぜか果てしなく広がっていそうな偽真空から宇宙の“卵”がいたるところに量子的揺らぎから生まれて、できたり消えたりしている。

高田式宇宙では、時間も空間もある広大な真空に、量子的揺らぎから、小さな量子が生まれてくる。数千億年、あるいは数兆年以前からランダムに少しづつ。

 インフレーションの宇宙の“卵”は宇宙になる膨大なエネルギーを内包している。高田式定常宇宙論では、量子は母体の真空の持つエネルギーに見合った小さなエネルギーしか持っていない。

結論

どちらにしろ、偽真空あるいは真空という何もないところから、宇宙の“卵”あるいは、量子が生まれるのだから、エネルギー普遍則には反している。違いは生まれるエネルギーの大きさの違いである。その後の宇宙の平坦性の問題もある。インフレーション論では平坦になるのは観測できないほど引き延ばされたからだが、高田式定常宇宙論では、素粒子が空間の至る所にランダムに生まれるから平坦以外になり得ない、という違いがある。

 

問題6

{宇宙の“卵”}の急膨張。

考察

 鶏の卵は、成長するためには餌がいる。宇宙の卵は何を食べているのだろう。

インフラトンということかな。まあ、謎の食べ物ですな。光速の数兆倍の数兆倍の膨張なのだから、さぞかし栄養価の高い食べ物なのでしょう。

 ひよこの餌は、菜っ葉にしろ、トーモロコシにしろ、基本的に、すべて、太陽エネルギーが元になっている。太陽エネルギーは核融合からできている。核融合は大きな万有引力によって始まる。万有引力とは何かというと、これはいまだに不明だ。物質に備わった力だとしか今のところ言いようがない。しかし、出発点は今までの物理学の範疇である。

 では、宇宙の“卵”の餌は何か。偽真空のエネルギーであるインフラトンということだ。

この世界は、4つの力からできているというのが今までの物理学の答えだった。そこに、真空のエネルギー(インフラトン)が付け加わるのだ。何物をも凌駕する強力な力だ。4つの力には、銀河団を数千億個も1点から吹き飛ばす力はないし、特に空間を膨張させるという謎の力はない。インフラトンにはそれがある。それは10−20ほどの「無」(「無」に体積があればだが)が内包している力だということだ。「無」はほぼ無限のエネルギーを持っているといえそうだ。

結論

宇宙が量子的揺らぎから生まれるという。素晴らしく複雑な式を操ると、時間も空間もない何かから宇宙が揺らぎ出てくるのだろう。蜃気楼のようなものなのだろう。それが一瞬より短い時間で巨大な馬鹿力を発揮するというのだ。まあ、実証してみてください。楽しみにしています。といっても、昔のことだから実証はできないといっていますから、望む方が間違っているのでしょうね。