「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 18

著者 高田敞

 

 

     

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

{「美は真なり,真は美なり」。その信念が驚愕のインフレーション宇宙論を生んだ}

 

問題1

{「美は真なり,真は美なり」。という佐藤博士の信念があります。「自然界は単純な法則で支配されているはずです」}

考察

 {「美は真なり,真は美なり」}いいキャッチフレーズです。しかし、残念ながらこれが本当だということは証明されていない。

美と醜はどのように区別するのか。その科学的基準はあるのか。知能テストに、美醜の区別という検査項目がある。それは人間の感覚の基準である。ハイエナの美醜や、ナメクジの美醜とは違う。自然界の美醜に基準はない。

例えば私は蜘蛛が嫌いだ。見るだけでぞっとする。ムカデも、嫌いだ。見るだけで気持ち悪い。だが、クモも、ムカデも、クモやムカデと交尾する。けっして人間など相手しない。それが命というものだ。私が美しいと思うものが真であったら、蜘蛛やムカデは真ではなくなる。真が美であるというなら、蜘蛛やムカデを美しいと感じなくてはならない。しかし美しいとは感じない。

結論

美醜は個人的な見解にすぎない。事実は人間とは関係なく存在するものである。

美は真でなくてもいい、真が美でなくてもいい。少なくとも、事実と、美とは関係ない基準である。

 

問題2

{自然界は単純な法則で支配されているはずです」}

考察

これも証明されていない。個人的な見解にすぎない。多くの理論は、かなり複雑で、難解な数学で構成されている。決して、単純ではない。

佐藤氏にとって、一般相対性理論は単純かもしれないが、普通の人にとってはそれは難解で複雑極まりない理論である。ということは、一般相対性理論は真ではないということになる。

一般相対性理論が単純か複雑か考えてみよう。

相対性理論では、太陽は、地球時間より1年で1分遅れるという。したがって、太陽の現在の時刻は、地球より、46億分遅れているということになる。約8752年過去であるということだ。太陽の時刻は紀元前6737年だ。今、われわれは、紀元前6737年の太陽を見ている。地球は紀元前6737年の太陽の引力に引かれて公転している。これをどのように考えればいいのか。とても複雑な現象だ。単純なのは、現在の太陽の周りを現在の地球が公転しているということの方だ。

結論

確かにそのとおりだ。一般相対性理論に関しては、確かに、複雑なことは真ではないということになるから、太陽の時刻は地球と同じであるという単純な法則の方が、真であるといえる。

相対性理論はそうでも、自然界の法則が単純であるということは証明されていないことは言える。

 

問題3

{真空の相転移}

考察

真空の相転移を説明するのに、水の相転移が例に出されている。水蒸気が水になるのに、エネルギーを放出する。水が氷になるときにエネルギーを放出する。反対に、氷が水になるときには、他からエネルギーを取りこむ。水が水蒸気になるときも、他からエネルギーを取り込む。

このとき、総エネルギー量は変わらない。エネルギー不変則である。

では真空の相転移はどのようになっているだろうか。

{初期宇宙の真空も、高いエネルギー状態の真空から,低いエネルギー状態の真空に相転移したらしいのです。}

真空にもいろいろあるということのようだ。もちろんそれは実証されていない。仮説である。真空のエネルギー状態の違いは何によって起こるのかということは述べられていない。1mの真空が、どれだけのエネルギーを持っているのかも確定していない。真空はどのような形でエネルギーを蓄えているのかも示していない。謎のインフラトンとかダークエネルギーとかいう名称はあるけれど、名前以外には謎しかない。この理論であるのは、真空がエネルギーを持っている。そして高い状態と低い状態がある、ということだけだ。要するに真空のエネルギーに関しての理論は何もない。

実証もない。理論もない。ということはこれは仮説にもならない。まだ、思い付きの段階にしか過ぎないということになる。

 水と真空の相転移の比較

{水の場合,水蒸気のもつエネルギーが一番高く}と{{初期宇宙の真空も、高いエネルギー状態の真空から}とある。

 水蒸気は、他から何らかの形で熱エネルギーをもらって水蒸気になっている。太陽熱とか、地熱とか、石油の火とか。必ず熱源がある。

では、初期宇宙の高いエネルギーを持つ真空はどのようにして高いエネルギーを持ったのか。そのエネルギー源がない。{素粒子物理学によると,空間からすべての物質を取り去っても,何らかのエネルギーが残ると考えられています。}というのが、真空のエネルギー源だということらしい。それを考えてみる。

初期宇宙は、原子より小さな偽真空から始って、それが指数関数的に膨張していったとある。それがインフレーションだということだった。

すると、初期宇宙の原子より小さな偽真空に、インフレーションを起こすエネルギーがあったということになる。

原子より小さな偽真空にインフレーションを起こすエネルギーがあったということは素粒子物理学では述べていない。素粒子物理学では、小さな真空は、小さなエネルギーしか持たないから、小さな粒子を作り、それが対消滅したり、また現れたりするということだ。小さな真空から宇宙を指数関数的に膨張させるほどの巨大なエネルギーは生まない。素粒子物理学の理論とはまるで違う理論である。

このインフラトンというエネルギーは宇宙を指数関数的に膨張させている。その膨張にインフラトンのエネルギーは使われたはずだ。何せ、指数関数的に膨張するのだから。今の物理学では説明できないほどの高速膨張なのだから、今現実にあるエネルギーではとても賄いきれないエネルギーが必要だったはずだ。

空間は質量がないから膨張にはエネルギーがいらないということかもしれない。それでは最初からインフラトンなしで、空間は膨張するということだ。空間を指数関数的に膨張させたのはインフラトンだと述べているのだから、インフラトンは空間膨張に使われてしまったはずだ。それとも、大量に余ったのだろうか。そんなはずはない。インフラトンは空間膨張の立役者だから、余剰があるとそれは空間膨張をさらに加速させたはずだ。

したがて、インフラトンはなくなったか、あっても、少ししか残っていなかったはずだ。

するとインフレーションが終わったときに相転移するのは他のエネルギーであることになる。ところがそうではないようだ。

 

ウ 

{真空の相転移が起きて、インフレーションが終了すると,潜熱が放出されます。この潜熱の放出によって,電子などの物質や光がつくられ,宇宙は熱い火の玉状態になりました。これが、ビッグバン宇宙です。}

考察

{真空の相転移}はどのように起こるのだろう。水蒸気の場合は、水蒸気の持っているエネルギーが周りの空気などの物質に移動することによって、水になる。何故、エネルギーの移動が起こるかというと、周りの物質の温度が低いことによって起こる。エントロピーの減少だ。

では真空の相転移はどのように起こるのだろう。どのような仕組みで真空のエネルギーはどこに移動するのだろう。

インフラトンという、謎のエネルギーは謎だからその仕組みは想像すらできない。

{潜熱が放出されます}

潜熱はどこにあったのだろう。インフラトンなのだろう。

インフラトンは、空間膨張に使われた。その残りなのだろう。そのエネルギーが全宇宙の物質と、光を作ったということになる。ものすごいエネルギーが残っていたものだ。小さな真国そのように莫大なエネルギーが存在していたというのは、余りにも変なのじゃないだろうか。

結論

 インフラトンという謎のエネルギーがあって、それが宇宙膨張や、宇宙の全物質や全エネルギーを作り出したという。いわゆる、謎が謎を生むというパターンである。