「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 17
著者 高田敞
(以下{ }内は上記本よりの引用)
{インフレーション宇宙論Q&A}P50
Q1{宇宙膨張の効果は,銀河団をこえるようなスケールの空間を考えたときに現れてきます。}
考察
ハッブルが、観測したのは、銀河の、赤方偏移であった。銀河団の赤方偏移ではない。ハッブルの観測した銀河はわれわれのいる銀河系と同じ銀河団に属する銀河である。この銀河の赤方偏移が、宇宙膨張の証拠であるというのだから、銀河団の内部でも膨張しているということだ。Q1とは食い違う。
観測と、理論が食い違っている。
なぜこのようなことが起こったか。それは、ハッブルの時代は、観測機器が今より格段に脆弱であったために、遠い銀河団の観測が詳しくできなかったためである。最近の銀河団の観測によると、銀河団は、すっぽりと、ガスに満たされていることが観測され、重力で強く結び付いていることがわかったから、銀河団の中では膨張できないということになったのだ。
それでも、宇宙は膨張しているということは変わらないから、銀河団を超えるスケールということになったのである。
すると、ハッブルの観測した銀河の赤方偏移は何を示しているのかということが問題になる。一つは、銀河系が所属している銀河団と異なる銀河団の銀河であるということだ。するとそれらは銀河系から後退していることになる。しかし、そうなると、問題が起こる。銀河団は、まとまって動いているはずだから、一つの銀河団に含まれる銀河は同じ速度で動かなくてはならないはずだ。遠いほど速くなるということにはならない。ハッブルの観測した銀河はそれぞれ別の銀河団に所属する銀河であるということになる。そうだろうか。地球から個別に見える銀河は、銀河系と同じ銀河団に所属していると考えてもいい。すると、銀河団内は膨張していないのだから銀河が、距離に比例して離れていくことはないといえる。すると、膨張はしていないが、赤方偏移はしているということになる。矛盾である。
ビッグバン論の始まりであり、今でもそれしかない証拠である、銀河の後退速度が、矛盾を抱えているのは困ったことだ。
高田式定常宇宙論では、これは、銀河間物質に銀河の光が衝突してエネルギーを失っていることから起こっているとする。もちろん銀河間は膨張していない。
これなら、銀河系と同じ銀河団に所属している銀河でも、距離に比例して赤方偏移する。距離により衝突する銀河間物質が多くなるからである。
銀河どうしは動かせないが、その数百倍も質量や、万有引力が大きい銀河団同士をやすやすと離れさせるというのは、元々変な話だ。
Q2
1{空間も時間も存在しない「無」から,原子よりずっと小さな宇宙が生まれた。}
考察
{空間も時間も存在しない「無」}とは一体どんなものなのか。説明がいる。既存の物理学では説明できない謎の状態だ。
{空間がない}のだから、{原子よりずっと小さな宇宙}でも、存在場所がないのではないだろうか。どんなに小さな点でも、空間がなければ点の場所がないのだから存在できないはずだ。
宇宙が生まれたとき初めて空間が生まれたというのだろう。ではその{原子よりずっと小さな宇宙}はどこに生まれたのか、その外側はどうなっていたのか。{空間も時間も存在しない「無」}が広がっていたとでもいうのでしょうね。それはいったい何なのですか、という問題は残る。
{時間も存在しない}ということなのだから、すべてが、動かない状態であったはずだ。0秒では、光も0mしか動けない、インフレーションがどんなに高速でも、時間はかかる。それが10−23秒という短い時間でも時間は時間だ。光速の百億倍のものでも0秒間には0mしか動けない。時間がなければ、すべては停止しているはずだ。きっかけになるものも、動くことができないはずだ。時間がなければ永遠に何も始まらない。
時間が突然生まれたというのでしょうか。時間が生まれるにはきっかけの動きが必要である。時間がなければそれすら動けないはずだ。そのあたりの説明が必要である。
2 {物質も光も存在しない小さな宇宙は誕生と同時にインフレーションを起こした}
光速の何兆倍では利かない膨張であるそうだ。この膨大なエネルギーはどこから湧いてきたのか。その説明がいる。{原子よりずっと小さな宇宙}だから、量子論でできるというのだが、量子論ではできた量子は非常に小さなエネルギーしか持っていない。{原子よりずっと小さな宇宙}は小さいから生まれてもいいという言い訳がある。しかし、その小さな宇宙がインフレーションを起こすエネルギーをいつどこから手に入れたのか詳しく説明する必要がある。エネルギー不変速に反する。それも、ほぼ0に近いエネルギーの真空から、ほぼ無限大のエネルギーを持ったインフレーションになる。既存の物理学を完全否定している現象だから、きっちりした説明がいる。できないから、説明していないのだと思うが、たぶんそうでしょう。
Q4
{インフラトンを加速器でつくりだすことは可能ですか?}
考察
{加速器でインフレーションを研究することは難しいといえます。}とあるように、ちょっとやそっとでは、インフレーションも、インフラトンも正体を現さないでしょう。まあ、どのような実験や観測でも、研究することはできないでしょう。同じように、空間の膨張も、インフラトンから物質や光や熱ができる様子も、研究することはできないでしょう。なんてったってインフレーション理論は研究すらできないほど難しいのですから。だから何でもありでもいいということみたいだ。言いたい放題。どうせ、研究すらできないといえば、証明はいらないのだから。
Q5
{宇宙は多重発生を繰り返した}が、{子宇宙の存在を実証することはできないのです。}
考察
これも上と同じだ、実証はできないから実証はいらないということのようだ。風船おじさんの風船人形のようだ。楽しそう。
Q6
{宇宙の膨張は今後どんどん加速していくことになります。}
考察
加速は実証されていない。推測だけである。確定したように言うのは科学者としては間違っている。
{銀河の間の距離はどんどん引き離されます。}
考察
Q1では、{宇宙膨張の効果は,銀河団をこえるようなスケールの空間を考えたときに,あらわれてきます。}と述べている。銀河間は膨張しないといっているのに、ここでは銀河間が膨張するといっている。矛盾である。もし、加速膨張の為ということなら、すでに、その効果が表れているはずだから、Q1が間違いである。
理論は統一しなくては。
{現在の宇宙の加速膨張を引き起こしている「ダークエネルギー」の正体は未解明なので,}
考察
正体が未解明なのに、よくそれが宇宙を膨張させていると分かったこと。宇宙が膨張しているというけれど、単に銀河の赤方偏移が観測されただけだ。実際に、銀河の膨張速度が計測されたわけではない。もちろん空間が膨張しているのが実際に観測されたわけでもない。単に赤方偏移から類推しているだけだ。赤方変異の原因は、光が物質に衝突してエネルギーを失うことから起こっているのは前に書いた。これは、太陽の光が太陽の中心でガンマー線で生まれ表面に出てくるときには、太陽の構成物質(おもに水素)に衝突して可視光にまで赤方偏移していることで観測されている。又、銀河内の恒星が赤化しているのも、銀河の星間物質に光が衝突しているために起こっていることなどで、証明されている。しかし、空間膨張で光が引き延ばされているということは直接観測されていない。こちらは実証がないのである。
宇宙空間膨張の肝心かなめのエネルギーも謎以外の何物でもない。何千億個もの銀河団を光速で吹きとばしているエネルギーが観測されないというのはどういうことなのだろう。地球にも働いているはずのその巨大なエネルギーが、木の葉1枚動かせない。髪の毛1本だって動かせない。太陽系の吹けば飛ぶよなちっぽけな地球や月の公転軌道を、1mmも動かせない。どういうことなのだろう。簡単である、少なくともダークエネルギーは地球上や、太陽系にはないということだ。観測できないということはないということの証明になる。これが太平洋に落としたコンタクトレンズなら見つからないといっても分かる。しかし、ダークエネルギーは、宇宙に充満して、巨大な質量の銀河団を吹き飛ばすほどの力があるのだ。普通の物質の数十倍あるという。それもエネルギーの形でだ。E=mc2が正しいとすれば、太陽系には太陽の物質がすべてエネルギーになった場合の数十倍のダークエネルギーが充満しているはずだ。巨大な斥力のはずだ。それが何事も起こしていない。検出さえできない。これhあダークエネルギーが太陽系にはないということを示している。それが検出できないのはダークエネルギーはないということだ。
結論
インフレーション宇宙は、どれも、謎、解明されていない、観測できない、将来にわたっても見つけられない、である。見つかるのは、遠い宇宙のかすかな現象だけだ。それもこじつけばかりだ。わかっていることやわかることは何もない。
この世界の95%を占めるダークエネルギーとダークマターだって、何一つ見つからない。5%しか占めない普通の物質やエネルギーはどこでも何一つ器具を使わずに観測できるのに、95%も占めるものが、どんな機械を使っても見つからないという。宇宙を木っ端みじんするエネルギーが、木の葉1枚落とせない。地ぽけな地球でさえ微動さえできないそよ風でさえ木の葉を落とすことができるというのに。
現実の観測ではそんなものはないということだ。それをああだこうだと理由付けして、観測できないことにしている。言い逃れも甚だしい。
インフレーション宇宙はまだまだ、科学ではない。せいぜいSFアニメの科学でしかない。その証拠にインフレーションといい、火の玉といい、10−50といい、その他もろもろ、現在物理学が手も足も出ない劇場的大げさに満ちみちている。まるっきりアニメのストーリーだ。
それに反して高田式定常宇宙論は、おとなしいものだ。現代物理学で説明できるものばかりでできている。大げさなことは何も起こらない。それでも少なくともこの宇宙は説明できる。ただなんの面白みもないからSFアニメにはならないけれど。