「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 11
著者 高田敞
(以下{ }内は上記本よりの引用)
{インフレーション後,宇宙は火の玉状態になった}P38
問題1
{インフレーションを引き起こした「インフラントン」は,ほどなく崩壊してしまいます。インフレーションの終了です。}
考察
都合よくインフラトンは崩壊してしまうのだ。それは何が原因で、どのような過程で崩壊するのだろう。もちろん解明してはいないですよね。何せ謎しかないインフラトンなのですから。だからインフレーションビッグバン論者の思いのままの行動をしてくれるということのようだ。
火の玉宇宙はインフラントンが崩壊することで始まったということだ。すると、火の玉宇宙から始まったビッグバン宇宙にはインフラントンはなかったということになる。
宇宙空間膨張はインフラントンのエネルギーで生じていたということであった。すると、インフラントンがなくなった後は、宇宙空間膨張のエネルギーはなくなったことになる。
空間膨張のエネルギーがなくなったのだから、空間膨張は止まることになる。
問題2
{車が急には止まれないのと同じで,宇宙の膨張も完全には止まりません。宇宙はその後,膨張の速度が減速したと考えられています。そして宇宙はその後,現在に至るまで,ゆるやかな膨張を続けています。}
考察
ここで、インフラトンがなくなった後の宇宙空間膨張の仕組みが述べられている。これは正しい理論だろうか。
車が急に止まれないのは車が慣性質量を持っているからである。では、空間は慣性質量を持っているのだろうか。真空に慣性質量があるということは今まで観測されていない。そのような実験もない。
{車が急に止まれない}ことと、真空の膨張が止まらないということとは原理的になんの関係もない。これは明らかな間違いである。質量のない真空が、それまでの膨張を続ける仕組みは、まるで違う仕組みでなくてはならないはずだ。インフラントンがなくても、空間膨張をする仕組みである。
もし、宇宙の物質が慣性の法則で、膨張を続けるということを指しているなら、それはそれで矛盾が生じる。確かに、慣性の法則で膨張を続けそうだ。しかし、空間は慣性質量がないから、膨張を停止している。すると、物質だけが膨張をする。物質は宇宙の外に飛び出してしまう。
また、慣性質量による物質の運動は等速直線運動である。したがって、距離によって、離れる速度は大きくはならない。膨張ではないからそうなる。現在観測されているというハッブルの法則と相いれない。
新たな、デフレーントンという粒子でも作り出すといいんじゃないかな。ドラエモンのポケットでも借りて。
まあ、適当なのだから、とても科学とは思えない。
問題3
{まずはじめにインフラトンのエネルギー(真空のエネルギー)で満たされたごく小さいミクロな宇宙がありました。}
{インフラトンのエネルギー(真空のエネルギー)は膨大なのですから、その崩壊によって発生する素粒子と熱エネルギーは膨大な量です。}
考察
インフラトンのエネルギー=真空のエネルギーになっている。いつの間に、インフラトンの正体がわかったのか。不思議である。
真空は、最小のエネルギーしかなかったのではなかったのか。すると、インフラトンも最小のエネルギーしかないことになる。
インフラトンは斥力であるという定義であった。真空のエネルギーは斥力であるということになる。いつ真空のエネルギーは斥力に限定されてしまったのか。
{インフラトンのエネルギー(真空のエネルギー)は膨大なのですから、}とあるが、いつ、どこから膨大なエネルギーを手に入れたのか。説明がない。
最初から、大きなエネルギーを持って生まれては、小さな真空から生まれるのは変ではないかとクレームがつく。そこで最初は、{(真空のエネルギー)で満たされたごく小さいミクロな宇宙がありました。}と、小さく生ませる。次に{インフラトンのエネルギー(真空のエネルギー)は膨大なのですから、}とあるように、知らぬ間に成長させる。いつの間にか、無の真空から、大きなエネルギーを持った宇宙に変身している。ではどこからそのエネルギーが生まれたかというと、エネルギーの出所はない。真空という、エネルギーのないところから生まれているようだが、その仕組みは不思議以外にない。小さく生んで大きく育てるということなのかもしれない。
インフラトンという不可思議なものを持ち出して、煙に巻いているだけだ。直接、全宇宙の物質が真空から生まれると手品になってしまうから、間に、インフラトンなる不可思議なものを入れることで、追及できなくさせているだけだ。変なところを追及するにもインフラトンとは何かがわかっていないから追及のしようがないということなのだろう。
地球が真空からワン、ツウ、スリーと号令をかけると生まれるというと、そんなバカなことがあるわけがないということになるが、インフラトンなら、なにかわからない幽霊みたいなものだから、そういうのならそうかもしれないということになる。なかなかうまい方法だ。
問題4
{中性子は,陽子と電子そしてニュートリノに崩壊することが知られています。中性子という粒子が,まったく別種の複数の粒子に“変身”するわけです。インフラトンも同様に,崩壊に伴って様々な素粒子を生み出します。}
考察
中性子は陽子と電子でできている。だから、ばらばらになって陽子と中性子に分かれた。ニュートリノは、そのときの質量の損失から生まれたものだ。新たに物質を生みだしたとか“変身”したとかいうのではなく、単にばらばらになっただけだ。
ではインフラトンはというと、{物質と光と熱が生みだされ}というように、物質や光や熱を生みだしている。中性子と同じ原理なら、インフラトンは、物質から構成されていたということである。それが、細かくばらばらになっただけなら、そうなる。然し、そうではないようだ。インフラトンは斥力といっているのだから、空間を膨張させる謎のエネルギーだということだ。物質で構成されてはいないはずだ。物質には、空間を膨張させる力はないからわかる。インフラトンは空間を急速膨張させて、まだ有り余るエネルギーが残っていて、それが{物質と光と熱が生みだ}したというのだ。
この比喩は、インフラトンの崩壊で、物質が生じるしくみを述べていない。まるで関係ない比喩である。先の、車は急には止まれないという比喩と同じだ。見かけは同じようだが原理はまるで違う比喩を持ち出して、科学的説明をしなければならないところをうまくしないで済ませている。見かけ倒しとでもいうところだ。インフラトンによって、{物質と光と熱が生みだ}される仕組みを科学的に示さなければならない。実証は無理だと思うけれど、せめて理論くらい書かなくては。まあ、無理だと思うけど。謎以外には何もないんだから。
結論
インフラトンはどのような仕組みで生じ、どのような仕組みで崩壊し、どのような仕組みで物質を作るのか説明しなくてはならないのに、それらは何一つ述べられていない。
科学ではない。
問題5
{まずはじめにインフラトンのエネルギーで満たされたごく小さいミクロな宇宙がありました。}
{初期宇宙では大量のモノポールがつくられたと予測されています。}
考察
モノポールが生まれた{初期宇宙}とはいつか。不明である。
{まずはじめにインフラトン}で満たされた小さな宇宙があったという。その後、インフレーションが起こり、次に物質と光と熱が生みだされた火の玉宇宙が誕生し、ビッグバンになったというのがこの本の筋書きである。
このどこかでモノポールも生まれていたということである。
モノポールはインフレーションで吹き飛ばされたのだから、火の玉宇宙の時ではない。すると、インフラントで満たされていたときに生まれたとしか考えられない。
すると、インフラトンが崩壊して、物質ができたという理論と矛盾する。
結論
科学的に究明された理論は何一つない。真空からは、必要なものは何でも出てくるということが書いてあるだけだ。ドラエモンのポケットと同じようなものが真空ということだ。これでも科学なのだろうか。